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abstract pop | V.C.R, 1300, daine...5 Best Songs:2022-17

今週は2022年のリリースラッシュで途轍もない量の音楽がリリースされましたね…。聴きたい音楽ありすぎて、来週まで聴き込むことができるのかというくらいの量でしたね。
さらにいい作品も多くて、Tomberlinのとんでもない化け方をした2枚目のアルバムであったり、個人的にはカムバックをしたと思っているBloc Partyの新作、Toro y Moiの渾身の新作などなど…。本当にもっとリリース日は別れて欲しいと常日頃思っていますが、しょうがないですね…。

そのためこの企画でも紹介したい音楽ばかりでしたので、今週は2回に分けて紹介しようかと思います。この「abstract pop」では、国内の音楽メディアでは紹介されないような、海外の新進気鋭なアーティストを紹介していきます。過去に紹介したアーティストは下記にまとめてあります。

Spotify更新しています〜

V.C.R

メンフィス出身で現在はLAで活動するマルチ奏者/SSW、Veronica Camille Ratliffによるソロプロジェクト、V.C.Rがデビュー作『The Chronicles of a Caterpillar: The Egg』をリリース。今作は客演でSudan ArchivesとPink Siifuが参加しています。バイオリニストやゴスペルシンガー、さらには文筆家など幅広い分野で活躍する彼女は、自身の音楽を〈cinematic soul〉と掲げ音楽を制作しているとのこと。
彼女の音楽は、その標榜に掲げる音楽のように、地球の大自然の力強さが体の芯まで伝わるような、ある意味"映画"のような壮大さを感じます。そのオーガニックさを形作る音楽は、R&Bやネオソウル、ゴスペル、ポスト・クラシカル、アンビエント、さまざまな民族音楽などそれぞれの要素を繊細に編み上げ、優雅で幻想的なものへと仕上げています。さらに彼女のシルキーでソウルフルな歌声も極上で、弦楽器や管楽器などの響きもアクセントとなっていますね。間違いなく今年の新人の中の傑作だと思います。それこそSolangeの『When I Get Home』からのLiv.eやkeiyaAなどのニュースタイルのR&Bの流れや、Moses SumneyといったゴスペルのスタイルもV.C.Rは取り入り、それを今作で体現してしまっているという。いやーこの作品あっという間にカルト的に広がりそうですね。それくらいやばいです。


1300

オーストラリア拠点に活動する韓国人のヒップホップ・コレクティヴ、1300がデビューミックステープ『Foreign Language』をリリース。メンバーは、ラッパーのRako、Goyo、DALI HARTと、プロデューサー/シンガーNerdie、そしてプロデューサーPokari.Sweatの6人が所属。
今作ではほとんどが韓国語のラップで構成された作品ですが、ところどころに日本語や英語も交えた、まさにタイトル通りのアルバムに仕上げています。その矢継ぎ早なフロウから、スムースで気怠げなものまで、それぞれのラップのスタイルにも痺れます。さらにトラックもドープなものばかりで、90年代のスモーキーなブーンバップ的なものや、カラフルなダンスミュージック色の強い曲、現代的なトラップビートを取り入れたものなど、その多様さにも驚かされます。個人的にはKanye West(Ye)の初期や、Tyler, The CreatorからBROCKHAMPTONまでを彷彿とさせるアーティストだと感じました。


Ludic

カナダのバンクバー拠点に活動する3人組のバンド、LudicがデビューEP『Grown?』をリリース。
彼らの音楽性は、ソウルやジャズ、ファンクを基調としつつも、ポップスや、ドリームポップやサイケなども織り交ぜたシームレスかつ滑らかなサウンドを魅力としています。
70年代のモータウン的なムードやグルーヴを漂わせつつ、60年代的なレトロなポップスセンスも重ね合わせてしまう彼らの才能はピカイチですね。さらにそういったサウンドに、しっかりと現代のインディー・テイストもブレンドさせ、彼ら独特の音楽性に昇華させているのも素晴らしいの一言に尽きます。そして何より女性ボーカルのソウルフルで煌びやかな美声や、スムースで甘美な男性ボーカルという男女混声の組み合わせもたまらないです…。Rex Orange CountyからHiatus Kayote、Tame Impalaといった幅広い層に突き刺さると思います。


Fade 'Em All

テキサスのヒューストン拠点に活動するバンド、Fade 'Em Allが新作アルバム『Huston Riots』をリリース。おそらく前作のセルフタイトルのジャケットを見かけたことがある人は結構いるかもしれません。かなり特徴的で僕自身も、そのデザインにつられて聴いて知りました。

ロックやパンク、ハードコア、ブルース、ソウル、ヒップホップなどを取り入れた彼らの音楽スタイルは、アメリカのライブシーンでも一目置かれるバンドです。やはりその勢いのある演奏と、ボーカルのIsaiah Ruskの縦横無尽なスタイルが非常にかっこいいです。ある時はラップ調であったり、時にはBad Brainsのように激しく歌ったり、やはりその音楽性はJean Dawsonにも通じるようなものもあり、人種による音楽の縛りであったり、ジャンルの壁をぶち壊しに行っている気概を、彼らの音楽から感じます。
以前このnoteにも「Bloc Party〜Jean Dawsonへ 音楽常識を覆す革命者、そしてブラックコミュニティーでのインディーの息苦しさ〜」というコラムも書いているので、それも参考にしてみてください。


daine

フィリピンをルーツに持つオーストラリアのメルボルン出身のアーティスト、daineがデビューEP『Quantum Jumping』をリリース。いままで〈PC Music〉のDanny L Harleを「Angel Numbers」でプロデューサーに迎えたり、ericdoaをフィーチャリングに迎えた「boys wanna txt」では100 gecsのDylan Bradyがプロデュースしたりと、さまざまなコラボレーションを重ねてきての満を辞しての作品となります。
彼女はハードコアやメタル、Tigers JawやAmerican Footballなどのエモ、00年代のポップパンクなどに影響を受けているとのことで、彼女の音楽性はその要素にグリッチやヒップホップを取り入れたサウンドを特徴としています。そんな中での今作はいままでの作風より全体的にかなり落ち着いている印象で、ミッドウェスト・エモの要素が色濃く出た作品かと思いました。ダウナーで叙情的なギターのアルペジオに、彼女のメランコリックで甘美な歌声が絡み合う、煌びやかな楽曲がめちゃくちゃ心地良いです。


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