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quinnie, Miss Grit...今週のおすすめ 5 Best Songs:2023-7

今週も新人の新譜から厳選して5組のアーティストを紹介します。音楽ブログ「abstract pop」の「5 Best Songs」の企画では、国内の音楽メディアでは紹介されないような、海外の新進気鋭なアーティストを毎週紹介していきます。過去に紹介したアーティストは下記にまとめてあります。

Spotifyのプレイリストも更新してます〜

quinnie

ニュージャージー出身のシンガー・ソングライター、quinnieがデビューアルバム『flounder』をリリース。彼女のシングル「touch tank」の歌詞が若者の間で共感を呼び、TikTokで話題。それがバイラルヒットへとつながり、若者を中心に人気を博しつつあるアーティストです。しかし彼女自身はそんなSNSに感謝しつつも、SNS上でどう見せるかなどを考えると調子が悪くなるため、適度な距離感で関わっているらしいです。インタビューでも以下のように語っています。

「SNSはあくまでも広げるためのツールであるということ以外、あまり考えていません。〜アプリは自分の作品をアウトプットするためにのみ使い、消費はできるだけしないように心がけています」
The Untitled Mag

彼女自身は幼少期から楽器に興味を持ち始めたとらしく、高校生くらいからSoundCloudやBandcampに音源を発表し始めたとのこと。音楽的な影響源は主にフォークで、お気に入りのバンドはThe Innocence Missionだそう。アンビエントも聴くのが大好きなようで、Brian EnoやGigi Masinからもインスピレーションを受けています。
そんな彼女の作り上げる音楽は、繊細でセンチメンタルなサウンドスケープで描く、煌びやかさと淡さが表裏一体となった叙情的なサウンドに仕上がっています。甘美で可憐な歌声から紡がれる歌詞は、ストレートな想いやもどかしさなど甘酸っぱさも含んだ青々としたもの。そしてストリングスアレンジやアンビエントの取り入れ方などの凝り方も素晴らしく、それがより彼女の音楽をシネマティックで奥行きのある音楽へと昇華させています。まだ寒い冬ですが、春が芽吹く頃の暖かなムードのときに改めて聴いたら最高だと感じる音楽かと思います。
ちなみにこれまでのシングルやアルバムのジャケットは全て彼女自身が描いたというのも驚き。ただのSNSで火が付いて人気になったアーティストではないということは、彼女の音楽を聴けばすぐに実感するはずです。


Miss Grit

韓国をルーツに持ちNY拠点に活動するMargaret Sohnによるプロジェクト、Miss Gritがデビューアルバム『Follow the Cyborg』をリリース。2021年のEP『Impostor』が話題となり、Apple Music 1のMatt Wilkinsonの番組でも何度か取り上げられていました。今作を制作するにあたって、SF系の映画『her 世界でひとつの彼女』や『エクス・マキナ』、『攻殻機動隊』などから影響を受けたようで、サイボーグといった人間ではない機械が自身の起源から「意識と自由へと向かう」軌跡をたどるもの描いているそう。たしかに今作のジャケットもそういうのをモチーフにしていますよね。
そんなSohnの作り上げる音楽は、ポスト・ロックからオルタナ、サイケ・ポップ、インディーロック、ニューウェーヴなどを織り交ぜたバンド色の強いもので、そこに浮遊感漂う電子サウンドが溶け込むことで、Sci-Fiなムード漂う音楽性に仕上げています。透明感のある優美なSohnの歌声も少し無機質な感じで、より摩訶不思議な世界へと誘うよう。個人的にはSt. VincentやLCD Soundsystem味があるようなアーティストだと感じました。


Jasper Tygner

ノースロンドン拠点に活動するマルチ奏者/プロデューサー、Jasper Tygnerが新作EP『Real Time』をリリース。彼はBBCのラジオやUKのエレクトロニックシーンでも注目を集めつつあるアーティストです。今作では以前紹介したonesの作品にも参加していたシンガーjust lilが客演に入っています。
ハウスやテクノ、2ステップ、UKガラージなどのビートに、夢心地の幻想的な電子サウンドがあわさることで、ダウナーだけど多幸感あふれるダンスミュージックに仕上げています。ヒンヤリとしたムードがありつつも、芯は熱を帯びていて、クラブとかでずっと聴いて踊っていたいようなサウンドで最高です。彼自身はJacques GreeneやRoss From Friendsからの影響が大きいそうで、彼らのようなキャッチーさがありつつもアングラ感もしっかりとあるトラックは通じるところがありますね。


klurax

NYを拠点に活動するベッドルーム・ポップ系のプロデューサー、kluraxが新作EP『klurax 3』をリリース。まだまだ無名に近いアンダーグラウンドなアーティストですが、奏でる音楽性がかなりエグいです。
インダストリアルやグリッチ、サイケ・ポップ、UKガラージやジャングル、レイヴといったクラブミュージックなど、ストレンジで尖った電子サウンドをベッドルーム・ポップ風にまとめ上げる、ファンタジックな音楽に仕上げています。たゆたう甘美な歌声も特徴的で、それがより彼女の独創的な世界観を作り上げるキーポイントになっているような気がします。EPの楽曲がラストの曲に近づけは近づくほど、高揚感マックスになっていくビートの組み方も素晴らしいです。kluraxは今後もっとよりやばいところにいきそうな感じがしますので要注目ですね。


Teddy Failure

スウェーデン出身のTeodor RunsiöとFrans Torellによるプロデューサーユニット、Teddy Failureが新作EP『I'm A Failure Part 2』をリリース。これまでOscar SchellerやELIOなどともコラボしてきたデュオです。
スウェーデンで活動しているアーティストですが、音楽自体はとてもUKっぽいと言いますか、90年代のブリットポップ的なキャッチーさと、マッドチェスター感漂うビートを織り交ぜたサウンドを奏でています。少し気怠げで鼻にかかるような歌声が歌い上げるメロディーがとてもポップで、ゆったりとしつつも鮮やかなムードも良いですね。BlurやPrimal Screamあたり好きな人はハマるかもしれません。

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