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Nate Brazier, Afternoon Bike Ride...今週のおすすめ 5 Best Songs:2023-5

今週も新人の新譜から厳選して5組のアーティストを紹介します。音楽ブログ「abstract pop」の「5 Best Songs」の企画では、国内の音楽メディアでは紹介されないような、海外の新進気鋭なアーティストを毎週紹介していきます。過去に紹介したアーティストは下記にまとめてあります。

Spotifyのプレイリストも更新してます〜

Nate Brazier

サウスロンドン出身のSSW/プロデューサー、Nate BrazierがデビューEP『YSK』をリリース。客演に現在絶賛活躍中のLouis Cultureを招いています(最近彼はいろんなところで見かけるので本当に別の意味で要注目ですね)。彼は既にKojey RadicalやJ Rickなどの作品に関わってきたようで、ロンドンのアンダーグラウンドシーンでは才気あふれる”ヤバい”アーティストで名前が広まっているそうです。
それも納得というか、「デビューEPでここまで仕上げてしまうのか」というくらいハイクオリティーな出来となっています。全体的に深夜帯のダークでメランコリックな空気感が漂っていて、ロンドンのアングラさがぷんぷん匂ってきます。UKガラージやダブステップ、2ステップ、ジャングルなどのクラブカルチャーのビートを巧みに駆使したバウンシーなトラックに、R&Bやジャズ、ファンクなどを織り交ぜた音楽性には腰を抜かしました。ビートの組み方や音作りはウィットに富んでいて、非常に繊細で精巧です。彼のダウナー調の優美な歌声も楽曲にフィットしていて、より彼の世界観に引き込まれていきます。ラストを飾る「Evening Shift」なんて「天才かよ…」と声を漏らしてしまうくらい、ドープでやばいです。
影響を受けたアーティストにArcaやFKA twigs、Burial、Jai Paulなどを挙げてたりしますが、そのアーティストに負けを劣らない才能を秘めているかと。


Afternoon Bike Ride

カナダのモントリオールを拠点とするトリオ、Afternoon Bike Rideが新作アルバム『Glossover』をリリース。今作では客演にLowswimmerやRobert Robert、oyemeを招いています。2021年に自身のバンド名を冠した前作『Afternoon Bike Ride』は、Ryan Hemsworthやimagiro、Koganeをフィーチャリングするなど、インディー好きの間でも密かに話題となりましたね。
彼らは毎作出すたびにジャンルの広がりや音の緻密さなどが進化していくのですが、今作は特にバンドとしての化学反応がさらに爆発したと感じた一作でした。
フォークの生感あるサウンドをベースに、アンビエントやエレクトロニカ、電子音楽、ポスト・ロック、ローファイなどをブレンドさせて、幽玄だけど煌びやかな音楽性に仕上げています。たゆたうような透明感漂う美声やアコースティックの温かな旋律、繊細な電子音。それぞれが程よい距離感で絡み合い、それがAfternoon Bike Rideの独創的なムードを築き上げています。自然の温もりと電子音の冷ややかさが有機的に結びつき、それを人間らしい温もりに昇華させる。そこが彼らの最大の魅力ですね。徐々に春めいていきつつも肌寒い、今の季節にぴったりです。


crushed

LAを拠点に活動するBre MorellとShaun Durkanによるデュオ、crushedがデビューEP『extra life』をリリース。DurkanがシューゲイザーバンドのWeekendのメンバーでありプロデューサーとして活躍し、MorellはTemple of Angelsのリードシンガーとしても活動しているそう。
そんな2人が生み出すサウンドは、90年代のエッジのあるオルタナやキラキラした浮遊感のあるドリーム・ポップを下地に、マッド・チェスター的なビートを踏襲した多幸感あるもの。ノイズやレイドバックするギターに、ローファイなブレイクビーツが混じり合う、メランコリックだけど高揚感のある音楽性が彼らの真骨頂です。甘美だけどアンニュイな歌声もとてもクールで、その淡さや儚さも魅力的ですね。


Isaia Huron

テネシー州のナッシュビルを拠点に活動するR&Bシンガー・ソングライター、Isaia Huronが新作EP『LIBBIE 02』をリリース。今作は2020年に発表した『Libbie』を再構築した作品となっています。
前作のデモ的な質感のサウンドからより洗練され、音質もリッチとなった今作は、彼の極上の流麗な美声とスムースでムーディーなR&Bサウンドを堪能できる仕上がりとなっています。幻想的でロマンチックな音像は見事で、耽美的でシルキーな歌声が融和することで、脳みそがとろけてしまうほど。Frank Oceanの『Blode』の系譜を辿りつつも、しっかりと自身のサウンドに昇華しているところもいいですね。
今作のために撮り下ろしたショートフィルム仕立ての作品のライブセッションをあわせて見ると、彼の歌声の底知れない実力を垣間見ることもできるのでぜひ。


Archy Moor

ナイジェリアをルーツにもつダブリン出身のラッパー、Archy MoorがデビューEP『Bonnie Hill』をリリース。今作はプロデューサーにLoyle Carnerの楽曲のプロデュースやeasy lifeの楽曲もコンポーザーとしても参加した経歴を持つEarl Sagaを招いています。
ソウルやジャズ、ファンク的なサウンドを下地に、トラップやブーンバップビートを絡めたトラックが特徴的です。そこに低いトーンの軽やかなフロウが乗る、メロディアスかつドープなラップがとても魅力的です。Earl Sweatshirt的なねっとりしたフロウとTyler, The Creatorのポップなフロウの間を縫うような、独自のラップスタイルを既に確立していると個人的には感じます。まだあまり知られていないようですが、同郷のRejjie Snowのように今後より多くの人に周知されていくこと間違いなしのアーティストかと。

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