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McCall, Rat Tally...今週のおすすめ 5 best Songs:2022-33

今週もたくさんの新人の新譜から厳選して5組のアーティストを紹介します。音楽ブログ「abstract pop」の「5 best Songs」の企画では、国内の音楽メディアでは紹介されないような、海外の新進気鋭なアーティストを毎週紹介していきます。過去に紹介したアーティストは下記にまとめてあります。

ポッドキャストも始めているのでぜひのぞいてみてください〜

McCall

アトランタ出身で、現在はLA拠点に活動するシンガー・ソングライター、McCall Kimballによるプロジェクト、McCallがデビュー作『…to be a dream…』をリリース。
このアルバムはちょっと異質でした。ちょっとどころではないかも。1曲目の「Famous」から一瞬にして、彼女の作り上げる神々しく幽玄な世界へと導かれていきます。驚くほどキャッチーでポップなメロディーですが、精巧に細部まで緻密にこだわり抜かれたサウンドプロダクションが編み込まれています。煌びやかなシンセサウンドからインダストリアル的な鋭い音、ノイズ的なグリッチのような音、アンビエント…。さまざまな嗜好を凝らした音が散りばめられ、その美しくも荘厳な音世界は多幸感に満ち溢れたもの。そこにスターダストのように輝きつつも儚さをまとった美声が絡み合い、ドラマティックでドリーミーな作品に仕上げています。
実験性に富んだアルバムでありながらもしっかりとポップに落とし込んでいるのが本当にすごい。Caroline Polachekの煌びやかさもありつつ、Bon Iver的な幽玄さも兼ね備えた驚くべき才能の持ち主ですね。


Rat Tally

シカゴ拠点に活動するシンガー・ソングライターAddy Harrisによるソロプロジェクト、Rat Tallyがデビューアルバム『In My Car』をリリース。作品にはMadeline KenneyとJay Somが客演で参加しています。
タイトル通りに快晴の日に広大な大地でドライブしているときのお供に聴きたいような、爽やかでフォーキーな作品に仕上がっています。透明感のある甘美な彼女の歌声がとても魅力的で、そこに重なるようにファジーで歪んだギターが交錯するグランジやオルタナ感満載の曲から、仄かな風と木漏れ日が心地よい情景が浮かぶようなアコースティック・ギターをベースにした曲など12曲が収録されています。ストリングスやゆったりとしたアンビエントサウンドもエッセンスとして加わっており、それがまた楽曲たちを壮大にしています。楽曲も徐々にドラマティカルで叙情的な展開を見せていくのも最高で、そのエモ的なアプローチもかなりグッときてしまいます。Snail Mailの爽やかさもありつつ、Julien Bakerのような情熱的なボーカルも素敵です。


Jimetta Rose

LAを拠点に活動するプロデューサー/シンガー、Jimetta Roseがシンガーたちを募り、能力よりも癒しとしての歌に焦点を当て結成したコミュニティ合唱団「The Voices of Creation」とともに制作したデビュー作『How Good It Is』をリリース。Jimetta Rose自体、LAでも10年以上とかなり長くキャリアのあるアーティストで、今年リリースしたアルバム『The Gift - Around The Way Queen』のクラシカルなソウルをベースにしつつも、現代的なアレンジも加えた革新的な作品に仕上げた今年のベスト級のアルバムです。
そんなアルバムを出しながらも間髪入れずの今回の作品は、ゴスペルをベースとした幸福感あふれる力がみなぎるソウルフルなものとなっています。心の奥底から豊かになるような愛に包まれる歌声たちと、ジャズやソウル、民族的な要素も織り交ぜた芳醇なサウンドが本当に最高です。また作品にはSons & Daughters of Liteによる1978年の名曲「Let The Sunshine In」をカバーが1曲目に収録されているとのこと。
ちなみにこのライブ映像の幸福感に溢れた最高のパフォーマンスになっているのでぜひ最後まで見てみてください。


Doll Spirit Vessel

アメリカのフィラデルフィア拠点に活動するボーカルのKati Malisonを中心に結成した3人組のバンド、Doll Spirit Vesselがデビューアルバム『What Stays』をリリース。彼らはSadurnのツアーに同行していたりします。
のびのびとした牧歌的なサウンドでありつつも、ドリーミーな世界観も兼ね備えた独特なインディーサウンドを奏でています。また鮮やかだけどボヤボヤした歌声も特徴的で、その捉え所のないアブストラクトなムードも個人的にとても好みです。人からも忘れ去られてしまった廃墟のような場所だけど、整然とした美しいままを保っている摩訶不思議な街の中にいる妙な浮遊感がいいですね。でもだんだんとその世界観もぶち壊れていくような退廃的なムードが漂っているのもグッときます。


Aaberg

サウンロンドン拠点に活動する宅録アーティスト、Hunter Mockettによるプロジェクト、Aabergが新作アルバム『Lacewing』をリリース。2018年からほぼ1年1作というハイペースで作品を世に出し続けているアーティストです。
彼の作り出す音楽は、エスケイピズム・現実逃避的なもので、一瞬にして異国に連れ出してくれるような陶酔的なサウンドを奏でています。清涼感のあるギターのアルペジオだけど、メランコリックな空気感も含んでおり、少し脱力した音楽がとても心地よいです。またそこに囁く程度の歌声が重なり合っているのですが、その歌声はほぼアンビエント的な役割を果たしているのがまたいいんですよね…。
まさにジャケットの写真の通りの夜明け前であったり、夕暮れの黄昏時のような地平線を見ながら、海の上を漂流しているような音楽ですね。個人的にはThe Radio Dept.のような特別感のあるインディーミュージックのようにも思えました。


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