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Blossom Caldarone, LCY...今週のおすすめ 5 Best Songs:2023-2

今週も新人の新譜から厳選して5組のアーティストを紹介します。音楽ブログ「abstract pop」の「5 Best Songs」の企画では、国内の音楽メディアでは紹介されないような、海外の新進気鋭なアーティストを毎週紹介していきます。過去に紹介したアーティストは下記にまとめてあります。

Spotifyのプレイリストも更新してます〜

Blossom Caldarone

かれこれずっとここ数年、推しでもあり、2019年のThe Great Escapeのライブで見かけて以来、心を奪われ続けているロンドンのSSW、Blossom Caldaroneが新作EP『Maybe In Love (Maybe Not)』をリリース。
個人的にはRex Orange Countyに次ぐロンドンの"ポップマエストロ"と思っていますが、今作ではその作曲センスにより磨きがかかっていました。優雅で流れるようなメロディーと、甘美でソウルフルな歌声の素晴らしいハーモニー。50〜60年代の古き良きレトロ・ポップを踏襲しつつ、現代のインディー・ポップやベッドルーム・ポップの質感も織り交ぜた美しい響き。弦楽器の優美なストリングスや管楽器を用いた鮮やかなアレンジなども魅力的ですね。今まで出した全ての作品が全部いい。それが本当にすごい。もっと聴かれてもおかしくないクオリティーですね。


LCY

ブリストル出身でロンドン拠点に活動するマルチアーティスト、LCYが新作EP『/Y\』をリリース。今作から初めて知ったのですが、UKのアンダーグラウンドの電子音楽シーンではすでに名の知れたアーティストなんですね。
今作は彼女自身の創世記的な概念を再定義したようで、幼少期によく使っていた90年代から2000年代のインターネットの世界を通して表現しているそう。
たしかにその言葉の通りで、その年代を感じられるような妙にノスタルジアなサウンドデザインが魅力的です。ハウスやテクノ、レイヴやUKガラージ、ダブステップなどを織り交ぜたIDM系のサウンドで、とても冷ややかで無機質なムードで織りなすディストピアな世界観がたまりません。後半になればなるほど、より濃密でアングラでダークなビートへと誘われるEPとなっています。


Nige

ロンドン拠点に活動するNiNE8コレクティヴのメンバーでもある、プロデューサー/ラッパーNiall Williamsによるソロプロジェクト、Nigeが新作EP『Nigel Needs a Win』をリリース。彼はDJ名義のSUKHAでも活動しています(この名義ではBiig Piigの2018年のシングル「Raze : Plan B」に参加)。ちなみにNiNE8の中での役割はクリエイティヴディレクターやメンバーの衣装、イベントの計画など担当しているそう。また彼の音楽やカルチャーの影響源は主にロンドンのサウンドシステム・カルチャーとルードボーイ・カルチャーらしい。
そんな彼の作り上げる音楽は、バンクやパブ・ロック、ガレージ・ロック、ファンク、ダブなどを下地に、現行のヒップホップやベッドルーム・ポップ的な質感も絡めた、ロンドンのアングラ感を体いっぱいに感じるサウンドをに仕上げています。ローファイに歪んだチープなギターサウンドが特徴的で、彼のハスキーで低音の効いた歌声もめちゃくちゃクール。疾走感のある楽曲から、メロウでしっとりした曲まで、4曲なのにめちゃくちゃ幅広いです。


1spxce

ネットを彷徨っていたら見つけた謎のアーティスト、1spxceが新作EP『SILENT HILL』をリリース。作品にはdigicoreやhyperpopシーンでも有名なblackwinterwellsなどが参加しています。
儚げでたゆたうような歌声と、朧げで淡い電子サウンドが行き交う、Sci-Fiな音楽を奏でています。そういった浮遊感のあるウワモノのサウンドに対して、ビートは低音の効いたサブベースなどを用いて、土台をしっかりとさせつつ、トラップやダンスミュージックなどを織り交ぜているのもいいですね。煌びやかでノスタルジア漂うエレクトロニックサウンドに、ノイズやグリッチ、ドリーム・ポップなども時折ブレンドさせた、PC Music周辺にも通じる音楽性に仕上げていますね。


Juni Habel

ノルウェー出身のシンガー・ソングライター、Juni Habelが新作アルバム『Carvings』をリリース。作品のギターや歌声は自宅でレコーディングされたようで、そのホームレコーディングの温もりを感じつつも、壮大でメランコリックな作品に仕上がっています。
憂いに満ちたアシッド・フォーク的な、シンプルなアコースティックのストロークに、伸びやかで穏やかな美声が絡み合った、孤独の心や感傷的なマインドも寄り添うような、親密な音楽を奏でています。ジャズテイストを絡めた、ジャム・セッション感のようなアレンジも作品の節々に感じられ、それがこの独特の温もりを醸し出しているのかもしれません。北欧ならではなのか、暗い時間の長い冬の時期にぴったりな作品です。

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