見出し画像

abstract pop | 5 Best Songs...2022⑧

今週は今年初めてのリリースラッシュで、シングルからアルバム含め、これでもかというくらい楽曲が出ていましたね。
特に今年のUKのインディー・シーンで最重要とも言われる、carolineのデビューアルバムが途轍もなく素晴らしかったです。1900年代のアメリカのトラディショナルなアパラチア音楽から影響を公言している彼らの音楽は、牧歌的でありつつ、ある種、退廃的なムードも醸し出す、いまのどのシーンにも属さない、唯一無二な音楽性でしたね。

これで前に紹介したdeathcrash含め、今のUKのインディー・シーンの二大巨頭が現れたといっても過言ではありません。メンバーが変わる前にいつかこの2組のライブを観てみたいな。

冒頭が長くなってしまいましたが、それでは今週の「abstract pop」の方に行きます。ここでは国内の音楽メディアでは紹介されないような、海外の新進気鋭なアーティストを紹介していきます。過去に紹介したアーティストは下記にまとめてあります。

Spotify更新しています〜

Slaters

NY拠点に活動するプロデューサーAlex Craigと作曲家のAl Carlsonによるデュオ、Slatersがデビューアルバム『Everything All At Once Again』をFader Labelからリリース。彼らはRoy Blairの『GRAFFITI』のプロデュースをしたり、ClaudやJelani Aryehの楽曲なども手がけていたり、この界隈ではかなり知れた2人組です。
アルバム自体は、今年のベストアルバムに入れること間違いない出来でした。全体的なビートのプロダクションがしっかりとしていて、ハウスやテクノ、ダブステップ、レイブなどの多彩でダンサブルなビートに、ヒップホップ的なサンプリングアレンジや、IDM/アンビエント的なアブストラクトなサウンドを編み込んだ、ウィットに富んだ作品となっています。
まさにNicolas Jaarや彼のサイドプロジェクトAgainst All Logic名義のビートに、Mount Kimbie的なサウンドが乗っかったような、深夜に踊り明かしたくなるアルバムですね。
サウンド・プロダクションは完璧に今のシーンの音なのに、どこか忘れかけた90年代のノスタルジアなダンスフロの匂いが仄かに香る音作りが凄すぎる。冗談抜きでアルバム全編いいです。まだ無名な彼らですが、何かのきっかけで引っ張りだこになること間違い無いですよね。マジでやばい。


Ava McCoy

NY拠点に活動するSSW、Ava McCoyがデビュー作『Moss On The Ceiling』をリリース。G LunéやMei Semones周辺のアーティストです。
オーガニックなフォークサウンドを基調に、彼女のソフトで優雅な美声が紡ぐ叙情詩が絡み合う作品となっています。アコースティックのアルペジオとと共にドリーミーで牧歌的な音像が鳴り響き、郷愁を誘うモノクロームなムードがたまりません。Adrianne Lenkerのシンプルや、Lomeldaにも通じるローファイな質感のサウンドプロダクションもとても心地良いです。


Araya

NY・ブルックリン拠点に活動するタイと中国にルーツを持つアーティスト、Arayaが昨年に引き続き新作アルバム『Ethos』をリリース。
ダークでメランコリックなR&Bサウンドに、ハウス、UKガラージ、EDMといったダンスミュージックのあらゆるビートを重ね合わせた、美しく鮮やかなポップスに仕上げています。そして彼の優美で艶やかな歌声がまた独特で、Eden、JojiやOmar Apollo好きな人におすすめしたいです。近年のベッドルーム・ポップからhyperpopにも通じるような音作りも素晴らしいです。


Lees

サウス・ウェスト・ロンドン出身のSSW、Leesがデビュー作『Night Wars』をリリース。
PortisheadやFrank Oceanに影響を受けたというのも納得の音楽性で、彼女の奏でるサウンドは、トリップ・ホップからエレクトロニカ、ジャズ、ゴスペル、R&Bなど多くの要素を取り込んだ、神々しく多幸感あふれる音楽に仕上げています。透明感のありつつも芯のある美声がまたアクセントとなり、祝祭的なムードを押し上げているようです。


Dreamer Isioma

シカゴ拠点に活動するアーティスト、Dreamer Isioma(ex: Serena Isioma)がデビューアルバム『Goodnight Dreamer』をリリース。個人的な2020年のベストEPにもあげた『Sensitive』や『The Leo Sun Sets』の作品を重ねて、満を持してのアルバムです。
全体的にあらゆるジャンルをブレンディングしたベッドルーム・ポップサウンドに仕上げていますが、インディー・ポップを基調としたものや、メロウで陶酔的なインディー・R&Bソング、ヒップホップやファンク、アフロビートを取り入れた楽曲などさまざま。しかしタイトル通りの夢見心地で独特な浮遊感のあるムードは全曲通して漂っているような気がします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?