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abstract pop | The Let Go, Motel 7, tinyumbrellas...5 Best Songs:2022-11

「abstract pop」では、国内の音楽メディアでは紹介されないような、海外の新進気鋭なアーティストを紹介していきます。過去に紹介したアーティストは下記にまとめてあります。

Spotify更新しています〜

The Let Go

ワシントン出身で現在はリヴァプール拠点に活動する2人組、The Let Go(由来はおそらくAvril  Lavigneの『Let Go』からかなと思ったり…)が、Alfie TemplemanやPixeyらを輩出する〈Chess Club Records〉から待望の初のミックステープ『Delete My Feelings』をリリース。収録曲「Last Year's Model Club」はOscar Schellerがプロデュースで参加しています。収録曲に「Beabadoobee」がある時点で、「あ、なるほど」という感じですが、彼女自身たちはThe 1975やBROCKHAMPTON(ビジュアルとかがまさにそう)、Dominic Fikeなどから影響を受けたとのこと。
MVやアー写から滲み出るセンスの良さで既に最高であることは間違い無いですよね。ミックステープからなのか、全ての楽曲のジャンルはかなりバラバラで、ポップ・パンク〜インディーロック、ヒップホップ、80's的なニューウェーヴ、R&B的な要素も絡めたベッドルーム・ポップな質感の音楽性に仕上げています。Frank Oceanの「Nikes」から着想を得たドリーミーで浮遊感のあるスローでざらついたトラックが印象的な1曲目から、メロウでスムースな楽曲、ドライブの効いたギターが特徴的な疾走感のある曲、トラップビートを散らした現代的なポップサウンドなど。6曲通して彼女たちの底知れぬ実力に触れることができます。
ちなみに「Beabadoobee」は、恋愛での不幸を描いており、それに嘆きつつ部屋に貼ってある"beabadoobee"のポスターを見つめて、「you know she would never treat me like you be doing i guarantee」と歌われています。若手アーティストからもbeabadoobeeはすでにそういった存在なんでしょうね。


Motel 7

LA拠点に活動するAnton KhabbazとDylan Jaggerによるポップ・デュオ、Motel 7が新作EP『Headphones』をリリース。余談ですが、Dylan JaggerはMötley CrüeのドラマーTommy Leeの息子さんなんだとか…。
音楽性としては、ヒップホップやR&B、エレクトロニック・ミュージック、インディーやエモからの影響を感じられるオルタナティヴ・ポップに仕上げています。オートチューンのかかった夢見心地な甘美な歌声のポップなメロディーは抜群に良くて、儚げで淡く散りゆくような青春の群像劇を描いたようなシネマティックな音像も本当に個人的にどストライク。Roy BlairやJimi Somewhere、Dominic Fikeのサウンドにも通じるようなアーティストですね。


tinyumbrellas

UKのリーズ拠点に活動するSSW、tinyumbrellasがデビューEP『Kaleidoscope Towns』をリリース。今作はスタジオジブリの世界観からインスピレーションを受けて制作したとのこと。
ウクレレやアコースティック・ギターの柔和なサウンドと、たゆたうようで淡くも優美なウィスパー・ボイスが絡み合う、ローファイだけどオーガニックなベッドルーム・ポップな仕上がりとなっています。そんな楽曲を通して自然界の生態系、その魅力や冒険心を描いているそうです。全体通して心から癒されるような作品です。
個人的にこういう緑が生い茂るようなナチュラルなテイストのアーティストがTikTokを通じてさらに増えたなと感じています。その源流を辿るとBandcamp時代のSoccer MommyやArlo Parks、Hope Tala、そしてTikTokで人気を博したLaufeyも挙げられるかなと思いますが、tinyumbrellasもその系譜を受け継いでいるように感じました。


Hinako Omori

日本の横浜出身、ロンドン拠点に活動するアーティスト/コンポーザー、Hinako Omoriがデビューアルバム『a journey…』をリリース。個人的にもUKのニューエイジやアンビエント、エレクトロニカのシーンは注目している部分でもあるのですが、Hinako Omoriもその重要な立ち位置にいるアーティストだと思っています。その注目度は、The Guardian誌の〈One to watch〉にも掲載されるほど。
夢幻の世界や、人間がこの世に全くいなくなった退廃的かつ大自然が広がる世界などが想起されるような作品に仕上がっています。朧げで夢見心地な美声に、幻想的でゆらめくようなアンビエントサウンドが絡み合うことで、この世とは全く別の次元の世界へと誘われるよう。荘厳かつ幽玄な音像は、正直言葉には表せないほど美しく、具体的な情景が脳裏に浮かぶような確立した世界観は彼女の底知れぬアーティスト力が窺えます。
ちなみにこのアルバムに関しては彼女自身がこのように語っています。

"このアルバムを聴くときは機械をいじりながらはおすすめしません。リラックスできる環境で聴く方がいいでしょう"

The Guardian


Deyah

UKのウェールズ出身のラッパー/プロデューサー、Deyahが新作EP『HeART-Break NoTEL(THE FREESTYLES)』をリリース。彼女は2020年の「Welsh Music Prize」を受賞した実力者でもあります。個人的にネクスト・Little Simzだと思うほど才能にあふれたアーティストだと思っています。
彼女自身、幼少期から壮絶な人生を過ごし、クスリの中毒症にもなり、それを克服し、現在に至るという。彼女は今までの人生をリリックに落とし込み、現実的でありつつも希望や光を持たせたものを描いています。
そんなリリックをR&Bやネオ・ソウル、ジャズを織り交ぜた、メロウで少しメランコリックなトラックに乗せて、Deyahの低く渋いフロウで矢継ぎ早なラップが披露されます。さらに驚くべきことは、艶やかでソウルフルな歌声も彼女自身であること。この二面性を活かした唯一無二な音楽性も彼女の魅力だと感じます。


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