書評「Webコピーライティングの新常識 ザ・マイクロコピー」

そもそもマイクロコピーとは何か?

マイクロコピーと聞いて、コピーライティングの一種というぼんやりとした想像はできても、具体的にどのようなものかイメージがつかないかもしれない。
マイクロコピーがどのようなものか、本書ではこのように説明をしている。

マイクロコピーとは、ボタンの文字やフォームまわり、エラーメッセージ、写真のキャプションなど、正直言ってこれまでコピーライティングの教材や専門家が全く話さなかった、非常に細部の箇所のコピーのことです。

私自身、コンバージョンエリアのワードを変えただけでコンバージョン率が300%アップした話も聞いたことがあり、いわゆるマイクロコピーの重要さは認識していたものの、どうすれば効果的なマイクロコピーが作れるのかわからなかった。
本書では、マイクロコピーの様々な事例から、コピーの背景にある意図や注意点、作成方法までのノウハウを紹介しており、私のようなマイクロコピー初心者でも基本的な部分からマイクロコピーについての体系的な知識が得られるのではないかと考え、本書を手に取った。

コンバージョンボタンのマイクロコピー

本書では、メルマガ購入フォームやエラーメッセージ、プレースホルダーといった様々な場面でのマイクロコピーを紹介しているが、この書評では、最も汎用性が高いと考えられるコンバージョンボタンのマイクロコピーについて紹介したい。


ボタンラベルではベネフィットを伝える

ラベルではただ単に「登録する」や「お問い合わせをする」、「ダウンロード」といった手続き内容だけではなく、行動の先にあるベネフィットを伝える必要があります。

サイトのコンテンツ内でサービスや商材についてユーザーが納得するに足る説明をしても、ユーザーをコンバージョンに至らせるまでには不十分で、「無料」や「返品可能」と言ったユーザーが行動を起こす最後の一押しの役割をボタンラベルに与えることが重要。
逆に「登録する」や「お問い合わせをする」と言った手続き内容だけでは機会損失に繋がってしまう。


ボタン周りにクリックトリガーを添える

ボタン周りに書かれるある種のコピーのことをクリックトリガーと呼んでいます。
クリックトリガーは、ユーザーが決断を下す瞬間に、心理的な障壁を下げるためのマイクロコピーです。例えば、相手の「不安」、「懸念」、「疑問」を減らすためのメッセージがそれに当たります。

ボタンラベルでベネフィットを伝えるだけではなく、ボタン周りのワード(クリックトリガー)によって、ベネフィットに付随する不安や懸念を解消することでコンバージョンに重要な影響を与える。


クリックトリガーの例
・無料登録の際に「本当に無料なの?」「後で課金されるんじゃないの?」と行った不安を取り除くために、ボタンの下に「クレジットカード不要」とクリックトリガーを添えて不安を解消させる。
・SNSの連携を促すボタンの下に「自動投稿、あなたの友人へのスパムメール送信、自動フォローは致しません」と添えることで、ユーザーの個人情報の漏洩に対する不安を払拭。

クリックトリガーとしてよく使われるものの例
・顧客のリスクを取り除くもの
・利益または成果
・ベネフィット
・サポート、保証
・行動の後押しとなる情報
・星によるレビュー評価
・お客様の声
・セキュリティーアイコン
・数字、データの証明

これらの例を使って、A/Bテストをしながら最適なクリックトリガーを見つけ出す。


「詳しくはこちら」ボタンがスムーズなサイト回遊を妨げる

次ページへ送るためだけの汎用なリンクボタンも、サイト内を回遊する上では大切な役割を担っています。
例えば、よくあるマイクロコピーの間違いに「詳しくはこちら」ボタンが挙げられるでしょう。このようなコピーではアクセシビリティ上の問題を生じさせます。つまり、その前の文章をきちんと読んでいなければこのボタンのリンク先に何が待つのかわかりません。

「詳しくはこちら」というラベルは様々な場面で汎用的に使えるので、ついつい使ってしまいがちだが、本書ではその弊害について述べている。
サイトの運営者や制作者はユーザーがコンテンツを読んで、理解していると思いがちだが、実際のところはそうではないことが多く、そのようなユーザーにとって「詳しくはこちら」というワードは何も言ってないのと等しく、サイト回遊を阻害してしまう。


本書ではリンクボタンのラベル例を下記のように挙げている。

リンクボタンのボタンラベルの例
・このセミナーに参加する
・お客様の声を読む
・お歳暮商品を見る
・入力した情報を確認する
・トップページに戻る
・他のセール品を見る
・お気に入りに追加する


手続きにかかる目安時間をあらかじめ伝える

オンライン見積、口座開設、新規会員登録などの手続きは、どれだけの時間を要するのか、見当がつきにくいものです。面倒くさがりな人に、今すぐ行動してもらいたければ、手続きにかかる目安時間を、あらかじめ伝えると良いでしょう。

特に新規登録系のフォームは「時間がかかりそう」、「面倒くさそう」と行った心理的な障壁から入力ページに遷移さえしない可能性もある。
そうした機会損失を回避するために、あらかじめ手続きにかかる時間を伝えると10分かかると思っていたものが実は3分しかかからないことが分かったりするので、入力へのモチベーション低下を回避するのに有効である。

信憑性と説得力を高めるために数字を使う
コピーに料金や日数、期間などの数字を使うことで、信憑性と説得力を高める効果がある。
例えば、「月額●●●円」や「無料期間●ヶ月」、など具体的な数字を添えることで、ユーザーの不安を軽減させる効果がある。

数字の表記方法にはコツがある

今すぐ決定が必要な場面では、人は具体的なことに考えを巡らせ、「数字」に注意を向けます。一方、決断を急がない場面では、人は抽象的なことに考えを廻らせ「単位」に注意を向けます。
(例)
[購入中] 配達日数1〜3週間
→今起きているイベントなので数字に注意が向く
[購入後]配達予定日7〜21日間
→将来のイベントなので、単位に注意が向く

要するに購入中のような今起きていることに対しては上の例で言うと、「1〜3週間」の数字、つまり「1〜3」に注意が向いて、購入後の配達予定日のような将来のイベントの場合、「7〜21日間」の単位、つまり「日間」に注意がいく。

本書ではその心理的傾向を利用して、今のイベントでの数字を小さくするために、「7〜21日」ではなく、「1〜3週間」と表記している。
一方、将来のイベントの単位を小さくするために、「1〜3週間」ではなく、「7〜21日間」と表記している。

デザインだけでは機能は伝わらない

アイコンのデザインだけでは、ユーザーが何の機能を示すものなのか理解することが難しいことが多い。
なので、アイコン単体でアイコンのそばにマイクロコピーを添えることでユーザーの理解を促進できる。
(アイコン単体での理解が難しい例)
・虫眼鏡のアイコン→検索? or ズーム?
・Xのアイコン→閉じる? or 削除?
・☆のアイコン→お気に入り? or ブックマーク?星評価?

これもデザイン時にやりがちな例である。
デザインをしている時は、当然、ページ内のコンテンツを理解した上で文脈に沿ったアイコンを配置するが、すべてのユーザーがアイコンをコンテンツの文脈に沿って理解をするわけではない。
そういう時に思い描いているユーザー像はあくまで自分にとって都合のいいユーザーであって、それ以外の大多数のユーザーへの配慮を忘れないことが大事である。


まとめ

一通り読んで、なんとなく経験則からぼんやりとそんなものだろうなというものがあったが、数字の表記方法など、これまで全く意識してこなかったものもあった。

本書でボタンラベルとクリックトリガーの違いなど、これまでの暗黙知のような知識を体系的に学び直すことで、利用状況やターゲットに応じた戦略的なワードの選び方が可能になるのではないかと思う。

当然だが、マイクロコピーによってコンバージョン率などの成果を上げるのに、ハック的なやり方は存在しない。
重要なのはこのターゲットに対して最適なワードは何か?このコピーに対してターゲットがどう感じ、どう行動するかを把握し、検証によって成果を上げていくことである。


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