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元ゴルフレッスン経営者が教える。誰も教えてくれない本当のゴルフ上達法

早く上達したい。正しく技術を身に着けたい。
ゴルファーなら誰もがそう願い、その方法があれば教えてほしいと願うでしょう。

しかし、本当に早く上達する方法の真実は多く語られません。

それはゴルフをはじめとした運動学習には「意識」という曖昧な表現が入るためです。しかしこの意識の存在を知らずして上達できないのも真実です。

今回はその「意識」をストーリーの軸にして、本当のゴルフ上達法について書いてみたいと思います。

この記事の筆者

私は15歳から3年間オーストラリアのゴルフアカデミーでゴルフを学び、25歳でゴルフレッスンの会社を起業し、会員数1.2万に顧客とそこから輩出した50名以上のコーチにゴルフ指導法について研修をしてきました。2020年6月に経営を退任して今はゴルフと経営の実務経験を活かしてゴルフビジネスのアドバイザーやコーチングの研修をしています。

そんな私が今回は運動学習に関する様々な研究データの重要部分を読み解きながら、ゴルフ学習者、そしてゴルフ指導者が知っておくべき、本当に効果的な運動学習の方法についてまとめてみました。

ゴルファーはもちろん、様々な運動学習をされている方、その指導をされている方にも読んでいただければ嬉しいです。

意識と運動の関係

ゴルフでも他のスポーツでも、新たな動きを獲得するという行為は、脳内イメージ(内的モデル)と実際の行動との差異を感覚情報から検出し、イメージと実際の動きの差をなくしてゆくという手法が成立しています。

要するにこの脳内イメージと実際の動きの距離が遠ければ遠いほど、その運動技術を身に付ける難易度が上がりますし、そもそも誤った脳内イメージを持ってしまうと運動技術の獲得に失敗してしまいます。
例えば身体的特徴を無視したイメージを持つことはおすすめできません。
トレーニングを積んでいない女性が男性のように鋭く動くことは出来ませんし、シニア男性が20歳の女子プロのように柔軟に動くことも出来ません。骨格、筋力、柔軟性などの身体的特徴を踏まえて適切なイメージを持つようにしましょう。
物理的に不可能なイメージを持つことは上達の妨げになってしまいます。

誤解しないでいただきたいのは、私は読者のみなさんが高い目標設定をすることを否定しているわけではありません。
あくまでも「上達する」という目的なのであれば運動イメージとして正しいイメージをもちましょうということです。
そんな私もタイガー・ウッズのスイングを目標にするゴルファーの一人ですし(笑)

意識のポイント

脳内イメージを持つ際に、どこに意識を持つのが正しいのでしょうか?
ゴルフ指導ではアドバイスする際の意識(フォーカス)のポイントを大きく4つに分類します。

①身体
②クラブ
③ボール(弾道)
④ターゲット

同じ動きをアドバイスするときでも、「①肘と手首の角度をキープしたまま下ろしてください」という場合もあるし、「②クラブを立てたまま下ろして」という場合もあるし、「③ボールを上から潰すように」という場合もあるし、「④ターゲット方向にクラブを放り投げるように」という場合もあります。
いずれもダウンスイングでの"リストラグ"という動き身に付けるためのアドバイスですが、それぞれに運動イメージが異なります。

注意と運動学習の著者『Wulf&Su(2007)』の研究によると、ゴルフスイングのミート率において、学習者が手首や腕といった身体に意識を向けるよりも、クラブフェースやボールの弾道に注意を向ける方が成果が高まったと報告しています。
同様の結果は、サッカー、バレーボールのサービス、バスケットボールのフリースロー、ダーツスローでも報告されています。
運動学習においてこのように意識を外部に向けることをスポーツコーチングでは「External-Focus(外部意識)」と言います。またこの逆の「Internal Focus(内部意識)」では筋活動が低下するというネガティブ結果も報告されています。
しかし実際には多くのゴルフレッスン書には身体の動きに言及するものが多いのが現状です。
メディアが提供するエンタメとしての読者や視聴者が見て面白いものと、上達のためのアドバイスが違うということを受けてである学習者も理解しなくてはいけません。

興味を持った情報もパフォーマンスを上げるためにはクラブを主語にしたイメージに置き換えるなどの工夫をすると効果が上がる可能性が高まります。

タイガー・ウッズは練習では意図的に左右へ曲がるボールを繰り返し打つことで有名ですが、こうした"インテンショナルショット(意図的に弾道を粗操作するショット)"の練習は弾道をイメージすることでエクスターナルフォーカスが高まり、技術の習得に対して一定の効果があるためです。

意識の種類

イメージには「A:動きのイメージ」「B:感覚のイメージ」があります。
これは学習者からの視点ですが、指導者側からの視点では「A:動作教示」「B:感覚教示」になります。
ヒジを折りたたむ「ヒンジング」という動作をアドバイスする際でも、動作をイメージするには「A:ヒジを90度曲げるように」とアドバイスしますが、「B:ドアの蝶番のように」とアドバイスする場合もあります。

パッティングのパフォーマンス向上度を計ったテストでは、A群では「基本的な動作の規則や手首の動き」という具体的な動作のアドバイスをしたのに対して、B群では「ゆった りとした感覚、体が固くならないように、右手の感覚に集中」といったような感覚的なアドバイスをした結果、成果に差がないことがわかっています。
またストレス化(緊張やプレッシャーが掛かる場面)では感覚的教示の方が高い成果を上げることもわかっています。

なんとなく抽象的な表現や感覚的な表現だと説得力や納得感がない感じがしますが、上達するか否かにおいては、感覚的な表現でも全く問題ないですし、必ずしも数字や公式に当てはめたレッスンが効果的であるというデータもありません。
学習者も指導者も、知識としての正しさと、アドバイスとしての効果は全く別ものだということを覚えておきましょう。

意識のボリューム(量)

私がゴルフレッスンをやっていた際に、お客様から「レッスンプロは長くレッスンに通ってもらうためにアドバイスを小出しにするんですよね?」と言われたことがあります。もしかしたら読者の方の中にもそれが真実を思っている方もいるかもしれません(苦笑)。

たしかに同じ金額を払うならたくさん情報をもらった方が得と感じるかもしれませんが、得=上達ではないので、あくまでも上達することを目的とした場合は多くの情報を与えすぎること(情報過多)は上達の妨げになるだけではなく、脳の疲労や、ストレスを通じてパフォーマンス全体に悪影響を与えることがわかっています。

運動学習を成功させるためには効率の良い情報処理が必要ですから、特に学習初期には、多要素を少数の要素にまとめる「注意の焦点化」が必要であるというは運動指導者であれば誰もが知っている基本です。

ですからコーチは運動学習者を効率良く動作獲得に導くために、意識を向ける対象を多要素から少数要素に絞り焦点化しているわけで、決して出し惜しみではないのでご安心を(笑)

学習の頻度

運動学習も暗記などと同じで、一度覚えても次に出来ないということは頻繁に起こります。
学習においては「エビングハウスの忘却曲線」が有名ですが、やはり忘れたことろを見計らって何度も繰り返すというのは効果的です。

あまり根を詰めすぎず、時間や期間をおいて何度も繰り返す前提で練習に望むと上達が早くなりますよ。

まとめ

学習が注意すべきポイント

まずあなたがゴルフ上達を目指すゴルファーであれば、以下のポイントに気をつけてみてください。

1.)クラブや弾道をイメージした練習を多くする
2.)情報を過度に取り入れ過ぎない。取り入れる情報を制限する
3.)出来ても出来なくても繰り返しやってみる

すでに書いてきたことばかりなのですが、特に最近は情報が簡単に取れるので情報過多に悩む方が多い気がします。また真実を知りたいという欲求から科学的なレポートを重視しすぎて運動イメージを低下させているケースもよく見ます。

極論ですが、スイングの形に不正解はあっても正解はありません。どんなスイングであれ思うようにボールが操作できれば良いのです。
もっと言えば、現代のように沢山の情報がない時代でも上達したゴルファーは歴史上沢山いますから、情報の量があなたの上達度合いを決めているわけではないことを安心してください。

まずは自分がどんなスイングをしたいかの前に、どんな弾道を打ちたいのか?をイメージしてみてください。イメージしながら練習を繰り返せば必ず上達できます。

指導者が注意すべきポイント

1.)情報を集約してイメージに集中させる
2.)感覚的なアドバイスを適切に使う
3.)継続して繰り返すことを諦めない

冒頭にも書いたとおり指導者として悩ましいのはビジネスとのバランスです。

すでに常識となっている当たり前のことや、感覚的なアドアバイスをウリにするとコーチとしての評価を落とす可能性があるからです。
外部に情報発信する際はとくに学習者のためを思えば自分の評価を落としてしまうし、自分の評価をあげようと専門的な情報を次から次へと発信すれば学習者の上達を妨げてしまう。これは現代の情報ビジネスの非常に悩ましい問題です。
私もこれに対して答えがあるわけではありませんが、顧客との信頼関係を築いた上でこうした情報がコーチとしての本来の役目の助けになることを願っています。

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