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【ボツ企画】『お稲荷ババア伝説』

『野球どアホウ未亡人』を企画する前、こんな映画のアイデアを考えていた。自分なりに「ホームドラマ」を作るとしたら、こんな感じかな、などと考えていた。以下、そのメモです。

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タイトル『お稲荷ババア伝説〜女たちよ、生き急げ!〜』

【登場人物】
坂田朱美(18)……高校3年生。陸上部女子キャプテン。
坂田森(50)……朱美の父。
坂田るみ(45)……朱美の母。
坂田文子(24)……朱美の姉。数年前実家を飛び出した。霊媒師。
坂田千帆(80)……朱美の祖母(森の母)。
流星号(犬)……坂田家が飼っていたペット。
郷次郎(18)……朱美の同級生。

【あらすじ】

「お稲荷さんのお告げを聞いた」

そう言い残し、認知症の朱美の祖母・千帆が姿を消した。朱美の姉・文子をのぞく坂田家の面々は千帆の行方を探すが消息不明だった。

ちょうどその頃、謎の連続殺人事件が発生。被害者はいずれも屈強な若者で、肺が抉り取られていた。被害者たちが死ぬ直前に遺した言葉は「ババアを見た……」

朱美は陸上部での練習中、衝撃的な光景を目の当たりにする。狐面を頭にかけた何者かが、男性体育教師の体を貪り食っているのだ。唖然とする朱美を振り返る狐面の怪人は、なんと千帆だった。逃げる千帆を追いかける朱美。朱美は千帆の姿を見失うが、そこには稲荷神社が建っていた。

連続殺人事件の犯人、通称「お稲荷ババア」の正体は千帆だった。坂田家は家族会議を開くが、家族の体裁を気にする朱美の父・森と介護に疲れた朱美の母・るみは、黙秘を貫こうとする。

千帆の暴走を止められるのは私しかいないと決心する朱美だが、果たしてどうすればよいのか……そこに、数年前実家を飛び出した文子が、「お稲荷ババア」の噂を聞きつけ帰省してくる。文子は関西方面で霊媒師として活躍し、メディアからは「浪速のエクソシスト」などと呼ばれており、お稲荷ババアを退治することでさらに名声を高めようという魂胆を持っていた。

「坂田マッハ姉妹(きょうだい)」の異名を持つ文子と朱美は共に俊足で町内で右に出る者はいないとされていた。
文子は、逃げ足の速い千帆を捕まえるにはスピードしかない、と、朱美の体にブルーインパルスの霊魂とランボルギーニ・カウンタックの霊魂、そしてオリンピックのマラソン種目で二大会連続金メダルを取った伝説の選手アベベ・ビキラの霊魂を同時に降霊させる、「降霊ドーピング」を提案する。しかし複数の霊魂を体内に取り込むには強靭な肉体が必要なことから、文子の指導のもと、朱美は地獄のトレーニングをすることになる。

しかし、あまりにもハードな特訓に嫌気がさした朱美は、恋人の郷次郎に懇願して駆け落ちしようと計画。だが次郎もまた千帆に襲われる……
千帆への復讐を誓う朱美は、最後の手段として、かつて坂田家で飼っていた犬・流星号の霊魂を体に取り込む……

かくして、JK vs BBA のマラソンの火蓋が切って落とされた!

家族の在り方を問うヒューマン霊能力コメディ。


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以上、メモでした。

とにかく「特訓モノ」をやろう、などと考えて、アレコレ考えているうちに捻り出したアイデアである。

それに加えて、これまで自分の映画で「家族」をマジメに扱ったことってなかったよな、一度やってみるか、と、特訓と家族の二本柱でまとめてみたのである。

昨年の10月頃に考えついた企画だが、その当時はまだ同居していた祖母が健在で、その祖母の認知症がいよいよ悪化してきた頃だったから、この祖母を怪物のように撮ってみたらどうかという、まあ罰当たりな企画である。

メモする前にアレコレ考え、「コレでイケる!」というアイデアが思いつくと一気にメモを書き上げるのだが、この企画についてはそれは「浪速のエクソシスト」と「降霊ドーピング」というワードだったと思う。

登場人物の名前はいつもいい加減に付けているのだが、今回は『帰ってきたウルトラマン』に登場する坂田兄妹とその出演者、史子と朱美は「マッハ文朱」から取っている。千帆は当然ながら『寺内貫太郎一家』の「悠木千帆」ばあちゃんからである。

この企画と『野球どアホウ未亡人』二つのうち後者を制作することになったわけだが、なぜこの企画がボツになったかといえば、それがあまりにも自分に近しい物語だったからだ。

自分にとって「映画」とは、自分の理解の範疇を超えて然るべきものだと考えているので、自分が感情移入しやすい題材は今まで避けて通ってきた。

認知症の祖母を怪物扱いすることで自分と作品との距離を設けようと思ったのだが、後に『野球どアホウ未亡人』の企画を思いつき、そっちの方が遥かに自分と関係無い物語だから、『お稲荷ババア伝説』はボツにしてしまったのだ。

それからしばらくして、『野球どアホウ未亡人』の準備を進めている最中、祖母が亡くなったので、この企画を映画にしなくて良かったと心底ホッとした。もし『お稲荷ババア伝説』を進めていたら、感情移入しすぎて冷静ではいられなかっただろうと思う。

どこかで発表する機会も無いので、ここに載せることで供養したいと思います。ご覧いただきありがとうございました(終)

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