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デザイン思考について

この記事はOIC ITCreate Club Advent Calendar 2020 12/12の記事です。

はじめに

最近デザイン思考についての本(HELLO,DESIGN 日本人とデザイン)を読んだのでデザイン思考についてまとめてみようと思い記事を書きました。この本はとても良かったので一読することをおすすめします。

デザイン思考とは

皆さんは「デザイン思考」と聞いて何を想像するでしょうか?
「デザイン」も「思考」もどちらも馴染みある言葉で、私自身も「デザイン」はよく口にします。この「デザイン」はよく名詞として使われがちですが、「設計する」や「計画する」のような動詞としても使われ、「アイデアを考える」というニュアンスを持ちます。デザイン思考の「デザイン」は動詞として捉えることが重要で、これを踏まえると、デザイン思考は「アイデアを考える思考法」のことになります。

デザイン思考でできること

デザイン思考は(先ほどの「アイデアを考える思考法」を言い換えると)「課題解決のための思考法」です。ここではデザイン思考でできることを説明します。具体的な課題解決のためのプロセスは後述しますが、説明するにあたり冒頭で紹介した本で述べられていた、自動車保険のリデザインの話について触れていきます。

当時の自動車保険は、だいたい似通っているサービスを提供しており、オペレーターの親切さやターゲットの年齢などで差別化してる状態だったそうです。そんな自動車保険をどうリデザインすれば、まったく新しい価値を提供できるのかを考え、ユーザーが求めているものは、わずかな差額ではなく「リアルな安心」ではないかと導き出します。そこから多数のアイデアを出しデザインしたのが、押したらすぐに警備会社の担当者が駆けつけてくれる「お守りボタン」でした。「ボタンを押す」というワンアクションさえこなせば、事故処理のスペシャリストが駆けつけてくれ、自分のことをよく知る保険会社の担当者と話すことができる仕組みとなっています。この安心感は事故を起こしてしまったときのストレスを大きく緩和します。また、「触れないサービス」である自動車保険を「触れるかたち」にデザインしたことで、事故を起こす前の「お守り」のような存在になりました。
ここでデザインしたのは、ただのボタンではなく、人々の無意識化にある欲求を探り当てることによって自動車保険の新しいサービスのあり方をデザインしたのです。また、このリデザインに要した期間はたった3ヶ月だったそうです。

このことから、改善や差別化といった「地続き」のアイデアではなく、他の人がなかなか思いつかないような「飛び石」のアイデアを、社会の変化のスピードに負けずに産み出し、新しい未来を描くことがデザイン思考でできることです。

デザイン思考のプロセス

デザイン思考がどうのような思考法か少し理解が深まったところで、実際に課題を解決するためのプロセスについて説明します。
デザイン思考のプロセスには以下の4つのフェーズがあります。

・デザインリサーチ(観察/インタビュー)
・シンセシス/問いの設定
・ブレスト&コンセプトづくり
・プロトタイピング&ストーリーテリング

デザインリサーチ(観察/インタビュー)
デザインリサーチではインスピレーションやアイデアの種を大量に集めるフェーズです。ターゲットとなる人の「観察」と「インタビュー」を行い、彼らが抱えている本当の課題は何かを探っていきます。
目の前の相手の深層心理を探り当てるためのヒントは、無意識のちょっとした行動にこそ現れています。それを見逃さず、共感し、「その人よりもその人を理解すること」が観察の極意です。
また、無意識を意識的に観察することも大事になります。それはネガティブな無意識下の感情を見つけ、その解決策を考えることが、デザイン思考への第一歩になるからです。
さらに、このフェーズのインタビューではターゲットが嘘をつくこともあるため注意しなければなりません。そこで、エクストリームユーザーをターゲットにすることも1つの方法です。エクストリームユーザーとは極端なユーザーのことを言い、「プロやオタクのような人たち」と「ユーザー(ターゲット層)ではない人たち」に話を聞きます。彼らは肯定的であれ否定的であれ、明確な意見や要望を持っていることが多く、それにより高い調査結果が得られる場合があります。

シンセシス/問いの設定
シンセシス/問いの設定では「自分たちが解くべき問題は何か?」を決めていくフェーズです。デザインリサーチによって大量に集まった情報を整理、分解、解釈して意味付けし、どのようなプロジェクトにしてくのか決めていきます。具体的には質の高い「問い(ブリーフやテーマ、課題)」をつくり、それに基づいた戦略を立ち上げます。
この質の高い「問い」を考えることが重要になります。質が高い問いは、過度に抽象的でも具体的でもないちょうどよいサイズの問いのことを指します。例えば、「どうすれば掃除機を10万台売ることができるか?」という問いはサイズが小さすぎます。一方、「どうすればモノが多い家でもストレスなく掃除できるか?」「どうすれば掃除にかける時間を短くできるか?」といった問いは質の高いちょうどよいサイズの問いになります。
問いの質は、アウトプットの質に直結します。そのため良質な問いをつくれている企業は連続的にイノベーションを起こすのです。

ブレスト&コンセプトづくり
ブレスト&コンセプトづくりではアイデアの方向性を固め、一言で表すコンセプトにまとめていくフェーズです。どんなアイデアの可能性があるか案を出し合い、膨大な選択肢を用意します。その上でテクノロジー的に、またビジネス的に成り立つかどうかを見極めながらコンセプトを絞っていきます。
ブレストについてはアイデアを自由に発散するために行われますが、よいブレストをするためには、「自由のためのルール」が不可欠です。このルールは全部で7つあります。

1. トピックに忠実であれ(お題に沿っていないと無駄話が盛り上がるだけになってしまいます)
2. ぶっ飛んでよし(かっこつけたアイデアや常識的なアイデア、賢く見せたいだけのアイデアは必要ありません)
3. すぐに判断/否定するなかれ(バカげたように思えるアイデアが思わぬインスピレーションに繋がる可能性があります)
4. 会話は1人ずつ(前の人が言いたいことをすべて言い切ってから発言します)
5. 質より量を(なるべくスピーディーに、1つでも多くのアイデアを出すように心がけます)
6. 描け、視覚的であれ(みんなでイメージを共有します)
7. 他社のアイデアを広げよ(自分のアイデアに固執せず、メンバーのアイデアに乗っかったり盗んだりしてみます)

この7つのルールはブレストをする前にチーム全員で共有することが大切になります。少しでも否定的な人がいるだけで、ブレストの質は落ちてしまいます。また、ポストイットを使用して可視化することも大切になります。

プロトタイピング&ストーリーテリング
プロトタイピング&ストーリーテリングではプロトタイプ(試作品)を使用し、そのアイデアを手に取れるものにして確認するフェーズです。そのプロトタイプをユーザーに試してもらい、フィードバックと修正の反映を繰り返します。そして最終的な形が見えてきたら、どのようなストーリーで伝えていくかをまとめていきます。
このフェーズで作成するプロトタイプは、実際と同じ素材を使ったり、細部まで綺麗に整えたりはせず、こだわりは捨てます。大切なのは、プロトタイプを何度も何度もつくり、トライ&エラーを繰り返すことです。
よく誤解されるのは、プロトタイプは「完成品の見本」ではありません。あくまで、チームメンバーの価値観やイメージをすり合わせたり、アイデアを推し進めたりするためのものです。
最終的な形が見えてきたら、ストーリーで語ります。例えば、スポーツ選手の成績だけを見てその選手を好きになる人はいません。その選手の様々なストーリー込みでファンになっていきます。
ビジネスの世界でもスペックや売り文句ではなく、そのモノやサービス、体験にどんな背景があるのか、どんな思いが託されているのかといったストーリーを語ることでユーザーに愛されていきます。ストーリーには「覚えてもらう」「みんなをひとつにする」「シェアする」力があります。
この力を活用し、ストーリーで伝えることで、聞き手の心を動かすことができます。アイデアを世に出す第一歩として必要不可欠になります。

このプロセスをまとめると、リサーチして材料を集め、それに意味づけをして「問い」に変えます。そして戦略を練り、ブレストでアイデアを出し合い、プロトタイプを作りユーザーからフィードバックをもらいます。最後にストーリーで語りアイデアを世に出していきます。
こうして並べると、非常にシンプルな思考法だということが分かると思います。しかし、実際にやってみるとこの通りに進んでいくわけでないないことに気がつくでしょう。このプロセス自体、かなり単純化されたもので、実際はリサーチしたが、質の高い問いを設定できなくて、再度リサーチするようなフェーズの行き来が発生すると思います。それらを繰り返しながら、緩やかに、しかしスピーディーに前進していきます。
ただし、こんなものでいいかと妥協して適当な問いを採用したり、誰でも思いつくようなアイデアでよしとしたりしていては、デザイン思考は上達できません。デザイン思考家になることをあきらめず、粘りながらも楽しみ、真正面から取り組むことが上達への近道です。

おわりに

デザイン思考について学びましたが、実践しないと意味はないと思います。私はよくハッカソンに出場するので、まずはそこでこのデザイン思考を取り入れてみようと思います。
また、デザインリサーチのフェーズで少し触れていますが、ネガティブな無意識下の感情を見つけ、その解決策を考えることはとても大切になります。日頃から当たり前のことなどに目を向け、考えることでデザイン思考家に近づけるよう、精進していきます。

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