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episode 04. 高島おどり物語 ~盆踊りだよ、人生は~

前回のあらすじ

売れっ子作家、チャンキー松本氏を仲間に引き入れることに成功した大西。
いよいよ、漫画づくりがはじまる。

このお話に登場する人

チャンキー松本 漫画家、イラストレーター、切り似顔絵師、パフォーマーなどマルチな才能をもつ天才芸人。漫画『高島おどり物語』を手掛けた。
藤原 高島音頭保存会会長。
大西 保存会の会員。最年少の30代。高島の盆踊り大会のリブランディングに取り組む。

チャンキー松本が来た

次の年の春、チャンキー松本が滋賀県にやってきた。会長の藤原は得体の知れないちょんまげのおじさんに面食らっていた。そして、大丈夫か?という顔で大西の顔を覗き込む。

一通り、会長にインタビューをし、構成をその場で作っていく。
そして、スケッチ。ipadに無機質なペンを走らせると、伸びやかな線がひかれ、生き生きとしたイラストが描かれていく。
大西はそれを横目で眺めながら、川の流れのようだと感じていた。
そして、大きな流れが今やってきていることを自覚する。やがてそれは琵琶湖に流れ、何もなかったように包まれる。それでよいと思う。高島音頭の長い歴史の中で、何もなかったように元々の、あの大勢の人が笑顔で踊った輪の中に返ることを願っているのだ。

ひととおり、インタビューをとスケッチを終えた松本は、ふーっと一息つき、グラスの水滴を丁寧にふき取る。

「よっしゃ、藤原さんと大西君の物語にしよ」

そうして、一日の取材を終え、「適当に書いていくわ」と言って、松本は東京に帰っていった。

原稿

1ページ目(写メール)

『高島おどり物語』と題した漫画が届きだしたのは、松本が東京に帰って2日目のことだった。調子のいいときは、3ページ分くらい一気に送られてきた。休むことなく、毎日続いた。それは大西の楽しみになった。

いよいよクライマックスになってくると、鼻の奥がツンとなる。
思いが強すぎる。もう資金調達がうまくいかなかったらどうしよう、など思わない。絶対にうまくいく。絶対に伝わる。一生のお願いはきっと叶う。

そうして、「これが最後や」というメッセージと共に、最後の写メールが届いた。

大西は「泣いてる」とメッセージをすると、「わしもや」と返事がきた。
こうして二人のおじさんの文字通り汗と涙を隠し味にして描かれた『高島おどり物語 ~盆踊りだよ、人生は~編』が完結し、それと同時に始まった。

桜の花はとうに散った。新緑が清々しい。

高島おどり物語 ~盆おどりだよ、人生は編~


第一話 音頭取りは高島のスターや!

第二話 約束

第三話 軋轢

第四話 老年よ、大志を抱け!

あとがき

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