「売上を、減らそう」中村朱美
テレビの「ガイアの夜明け」で、この著者の経営する「佰食屋(ひゃくしょくや)」の経営方針を観て、とても面白かったので、
本の方も読んでみたら、これまた面白かった!
京都に店舗をかまえるこの「佰食屋」は、文字通り、1日に100食限定のメニュー(3つのメニュー)を売り切ると、閉店するというランチ営業のみのお店。
従業員は、社員で9時〜17時半まででほぼ残業なし。
今まで飲食店の常識と化していた、「同じ賃料なら、長時間営業がいい」「売上前年比増を目指す」「多店舗展開を目指す」といった戦略の逆を行く。
そうすることで、従業員にとって、「早く100食売り切れば、早く帰れる」といった、
自分の自由時間が、なによりのインセンティブ
になるような店舗経営を目指す。
僕も、若い頃は、飲食店の接客のバイトばかりしていたからよくわかるけど、飲食店(特にチェーン店)の社員って、ほんとしんどそうだったのよ。
一度なんか、深夜のバックヤードの小さな更衣室で爆睡する、連日長時間勤務の社員を目撃したりして、
わー、こりゃ若いうちはいいけど、いつまでもはできない仕事だなーと思ったのを覚えてる。
とかくブラックになりがちな、飲食業のそのしんどさは、言われてみれば、業績拡大して、「企業が」より稼ぐことが目的なわけで、
じゃあ、売上が上がると、社員が報われるのか?というと、実際そうなっていないわけだよね。
佰食屋が目指すのは、従業員それぞれが、それぞれの都合で、それぞれの幸せの形を実現するための仕事。という視点。
シングルマザー、家で介護を抱えている、子供ともっと過ごしたい、といったそれぞれのプライオリティを実現するには、
会社都合で、長時間労働を強いられる働き方は、最初から無理がある。
昔の「会社のために」「骨を埋めるつもりで」の神話の源泉だった、終身雇用はとっくに幻想だし、
就職氷河期を過ごした、ロストジェネレーションには、そういう無理が祟って、鬱になったり、身体を壊したりする人もたくさんいる。
そんな時代に、「ああ、こういう働き方があっていいんだよねー」(というか、それが人間らしい生き方なんじゃないか)と思わされる本です。
もちろん、これは儲かる商売というわけではないし、自分の時間を削ってでも働きたい!新しいアイデアをどんどん出して、キャリアを積みたい!と思っている人にはハッキリいって向いてないと思う。
だけど、この先増えてくるはずの、高齢になっても働きたい、働かなきゃならない、という人たちには、こんな職先が増えたらいいはずだよね。
本の終わりの方には、更に売上を減らした「佰食屋1/2」という、1日50食限定のお店をフランチャイズしたいという話が出てくるのだけど、
これなんかは、例えば、定年した夫婦が、二人だけで、自分たちが食べていけるだけの食い扶持を、1日5〜6時間働いて稼ぐというスタイルが見えてきて、
これまた面白いと思ったなー!
ちょうど世間では、老後に2000万必要だとかいうある種のプロパガンダが溢れているけど、考え方の一つに、こういうのも入れといていいと思いましたー!
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