GoogleのFLoCについて個人的な所感
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GoogleのFLoCについて個人的な所感

読んでくれている皆様、こんにちは!EVERRISEの伊藤です。

アドテク業界の端っこの方とはいえ、関りがある一人のビジネスマンとして、本件について個人的な意見をあげておきます。
何のまとまりもない駄文ですが、お暇な時間にササっとお読みいただけると嬉しいです。

GoogleのFLoCとその問題

3rd Party Cookieが廃止される今、広告ターゲティング用の代替技術としてFLoCが注目されています。FLoCの概要については以下。

FLoCはFederated Learning of Cohorts(連合学習のコホート)の略であり、機械学習アルゴリズムを使用してウェブサイトを訪れたユーザーのデータを分析し、何千人ものユーザーから構成される「コホート」を作成するというもの。コホートはFLoCが有効になっているブラウザにおいて、その閲覧情報を基に作成されます。ブラウザはユーザーの閲覧情報を収集し、同様の閲覧習慣を持つユーザーとグループ化します。そして各ユーザーのブラウザはユーザーの所属するグループを示す「コホートID」をウェブサイトや広告主と共有し、この情報をベースにターゲティング広告が配信されます。

※このコホートは「商品やサービスについて興味関心のあるグループ」に分けられています

上記の概要は以下のURLより抜粋しましたが、まずは、こちらの記事を読んでいただきたい。

Googleが導入予定の「FLoC」は最悪なものだと電子フロンティア財団が指摘

※上記は翻訳記事なので、より正確に知りたい方は原文を読んでみてください

Google’s FLoC Is a Terrible Idea | Electronic Frontier Foundation

上記エントリーは、このFLoCの概要とともに、そこに孕む問題をとてもよく捉えてます。
「やや過剰な言い回しではないか?」という部分や「Googleだけの問題なのか?」という部分もありますが、概ねこの意見は正当なものかと思います。

ただし、全員がアドテクの前提知識があるわけではないので、Googleはやっぱり悪者であるという印象だけを植え付けるのも良くないと思いました。

そこで、私になりにいくつかの情報を整理させていただきました。
このnoteを読んだ後に、この声明をもうちょっと詳しく読めるようになってもらえると幸いです。

【前提知識】そもそもなぜ3rd Party Cookieがアドテクに必要なのか?

リマーケティングというターゲティング広告を実施するために必要な技術の根幹を担うのが3rd Party Cookieです。

リマーケティング広告とCookieでターゲティングしない広告では効果が3~10倍程度違うとも言われています。(ここでいう効果とはコンバージョン率で、認知に対する効果ではありません)

よってインターネット広告を打つ=リマーケティング広告はほぼ必ず実施するくらいの位置づけになっています。

それの根幹技術が失われるということで大騒ぎしているたわけですが、FLoCがこの問題を解消してくれる可能性が出てきました。

アドテクのプライバシー侵害問題の詳細

最初に補足しておくのは、アドテクが孕むプライバシー侵害の問題です。

1st Party データをおさえているアドテク事業者を除くと、実はアドテク事業者単体でプライバシーを侵害することはかなり難しいです。

アドテク事業者が、3rd Party Cookieを利用して収集できる情報は、IDが接触したページ情報および端末の一部情報のみとなります。
例えば「ID123がURL1とURL2をiPhoneX端末から参照した」といった情報になります。

アドテク企業間で勝手にデータが交換されているという指摘もありますが、この例の「ID123が広告を見るよ、広告表示ページの付加情報はこれこれだよ」といったデータのみが交換対象となります。

しかし、このID123という人が、例えば「東京に住んでる43歳の会社役員の伊藤孝」といった企業の持つ個人属性データと紐づくと、個人のプライバシーが侵害されることになります。

URL1やURL2が、宗教関連サイトや政治的な活動サイトだった…みたいなことだと、それがバレるのは個人としては大問題です。

また、URLの一部に含まれる検索キーワード等を組み合わせると、3rd Party Cookieから得られるデータだけでも個人を特定することが出来たりもします。

アド業界的には、インフォマティブデータと呼んで個人情報とは明確に区分して利用してきましたが、ここのデータ利用が問題になっているわけです。

よって本来の問題は、1st Party データと3rd Party Cookieで得られた情報を紐づける行為や、3rd Party Cookieで得られたログに個人を特定できるような情報が含まれることであり、3rd Party Cookie自体はプライバシー侵害を起こす技術というわけではないのです。

犯罪しようと思えば簡単に出来る環境にある、それの根幹技術が3rd Party Cookieであったということになります。

ちなみにGoogleは1st Party データをおさえているアドテク事業者だったりするので話がややこしい笑(より簡単にプライバシーを侵害しやすい)

本件については、ずいぶん昔の資料ですが、以下を読むことをお勧めします。

ライフログの定義と法的責任

コホートIDを自由に公開することは、直接ログを紐づけるよりも精度は落ちると思いますが、代わりにコホートIDを紐づけることが出来るので、プライバシー侵害を完全に抑えられるというわけでもないです。

行動によるターゲティング広告とリマーケティング広告の違い

2点目の補足は、リマーケティングというターゲティング広告の気持ち悪さについてです。

リマーケティングと呼ばれる技術は、RTB市場の発展と共に一気に認知されましたが、以前から似たような人の行動をターゲティングした技術はありました。

代表的なものとしてキーワード検索→紐づく広告を出すといったものです。

この二つの違いを理解せずにブラウザ内行動データをもとにしたターゲティング広告は気持ち悪いと理解するのは大雑把すぎます。

行動ターゲティングは、リマーケティングを含む広い概念ではありますが、リマーケティング広告と限定して表現する場合、コンバージョンしそうな人に対してサイトをまたいで広告を表示する仕組みとなります。
例えば「楽天でみた商品がYahooのサイトに移動したら広告としてその商品が表示された」といったものです。
詳しい仕組みを知らない人からすると、広告にストーカーされているように感じて気持ち悪いと思うのは良くわかります。

また、最近では「同一Wi-Fiから接続している家族の端末に、別の家族が検索した商品の広告が出る」など、より気持ち悪さが増しています。
※例えば妻が楽天で「ハワイ旅行」を検索してたら、そのハワイ旅行の広告が夫の端末に広告として出る…といった仕組みで、実際に効果は高いと思われます

それに比べて、楽天内で「カメラ」と検索した結果、検索結果の一覧に、Webカメラ広告やデジカメ広告が表示されても気持ち悪いとはならないはずです。

人の行動でターゲティングした広告が出ることが気持ち悪いのではなく、そのデータをもとに様々なサイトで広告が出されたり、直接関係のない人に広告を見せるなど、直観的ではない広告ターゲティングが気持ち悪がられているのです。

※ちなみにデータをもとに機械学習で最適化しているので、Googleとしてもどんなロジックで誰に広告が出されているのかを正確には分かっていないはずです

コホートによるターゲティング広告が実装されると多少の気持ち悪さの改善にはつながると思いますが、サイトをまたいで広告が出るというのは相変わらずなので、気持ち悪さは残りつづけるだろうと思われます。

アドテクが得意とするコンバージョン最適化と差別の問題

本来、広告が持つ役割は「認知」であるにも関わらず、ネット広告は売上獲得するものという間違った解釈が広まった理由があります。

アドテク(正確にはデジタル接触:SNS、メール、LINE、Web接客等)が得意とするのは「行動を起こさせる」「行動を計測できる」「行動の促し方を改善できる」といった部分ですが、これによりアドテクは「コンバージョン(狭い意味では売上獲得)をさせる」「コンバージョンした人を計測できる」「コンバージョン最適化が出来る」となってしまったわけです。

コンバージョンばかりに目が行き、これが売上獲得が出来なければネット広告を打つ意味がない(ROASやROIだけが物差しになる)となった背景です。

その結果、アドテク事業者は広告主が楽をしてコンバージョンを最適化できる(人に行動を促す)技術革新に邁進します。
そうなると、どんな広告もコンバージョンしやすい人へ広告が集中することになり、以下のような事象を引き起こします。

フェイスブックの広告プラットフォームは、根幹から「差別的」かもしれない

性別を問わない人員募集の広告でも、結果的には男性ユーザーに多く配信されるといったことが起きているのだ。(略)雇用や住宅といった分野での差別を禁じた連邦法に違反している可能性がある。

どこの面や枠に広告を出すのか?は企業の自由でも、誰にどんな広告を見せるのか?は、規制の対象になるという話です。

アドテクが邁進してきた技術革新は、規制されるべき差別につながっているとも言えます。

こちらも、コホートによるターゲティング広告が実装されると現状よりは差別的な誘導が改善されると思いますが、自動最適による人を選んで広告が出しわけることに変わりはありません。

FLoCという仕組みが何の社会貢献もないことに対する違和感

このnoteで一番に言いたいことでもあり、Googleが邪悪になっていると感じるところです。

Googleが今後も技術アップデートを継続していけばブラウザ側が利用者の興味関心を判断し、それを共有するという仕組みでプライバシーは守れるという可能性は高いと思います。(ここら辺はGoogleを信頼)

ただし、その機能の存在意義が広告利用の一方通行であり、かつ標準でブラウザに搭載されている機能であるということに違和感を覚えます。

本機能が自分に合った広告を出せるようになるアドオンとして提供されており、ブラウザ利用者が自分の意志で入れるのであれば、とても素晴らしい仕組みかと思いますが、現状だとGoogleの商用利用(他一部のアドテク事業者)のためだけに用意される機能で、ブラウザ利用者にとって何のメリットもありません。

本来、個人に紐づくデータの活用は、個人とその企業に利することに使われるべきです。
あきらかにそうじゃない今回の仕組みに、ずっと違和感を感じています。

ここについては、是非改善してほしいところです。

まとめ

現状、3rd Party Cookie代替案に関しては、FLoC以外にも様々な案が検討されているので、この案がこのまま採択されることが決まったわけではないと思います。

また、Googleからしたら大した規模の問題でもない(それでも数千億円以上の規模ですが笑)はずなので、どんな案になるにせよ、噴出している課題に対して真摯に対応する姿勢を望みます。


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え?俺のことスキ?冗談はさておき、ありがとうございます!
企業の「攻めのDX」を支援するシステム開発会社EVERRISEの取締役。 アドテクや、システムインテグレーター系の話を中心にnote書いてます。 良かったら読んでやってくださいませm(__)m