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Instagramの再発明 - 「Dispo」特有の体験設計とは

こんにちは、アサヤマ(@taasayan)です。

巷で「Instagramの再発明」と言われてるアプリDispoを使ってみて、おもしろい体験設計だなと思ったことのメモです。

Dispo(ディスポ)とは?

DispoはDavid Dobrikというアメリカのソーシャルメディアスターが作った新しい写真SNS。

disposable camera(使い捨てカメラ)を略してDispoという名前になっているようです。

既にアプリストアに公開されてる写真撮影機能のみのアプリとは違い、TestFlightでDispo βという招待制のbeta版が公開されている状態です。

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2021年2月14日頃に日本での新規登録が急増し、現在TestFlightの定員数に達しており新規での登録がストップしている状態です。(2021.2.17現在)

「Rolls」と呼ばれるアルバムのような機能があり、自分でRollsを作成して他人を招待したり、他人のRollsに参加したりすることができます。指定のRollsにシェアすることを指定した状態で撮影する仕様になっているのがDispoの特徴的なポイントです。

詳細な説明は石ころさんのこのnoteとかに書いてあるので見てみてください。

Instagramにおける「投稿ハードル」を解決する設計

Instagramは「簡単に画像加工と共有ができる」という価値を人々に提供し、人気を得ました。

しかしフィード投稿は自分のプロフィールに蓄積されていって残りますし、友だちからいいねやコメント数が可視化されるので、「良い反応をもらえそうな生活の美しい部分のみを切り取って投稿する場所」という側面が強くなっていきました。

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投稿への心理的ハードルが高まり、投稿されづらくなってしまった状況を打破するために導入されたのが24時間で消滅するストーリーズ機能です。

ストーリーズは後に残ることを気にしなくていいので、より日常的な瞬間を切り取った写真や動画が活発に投稿されるようになります。

しかしストーリーズでさえも「いい写真が撮れるまで撮る」とか「ちゃんと映えるように撮影後に加工する」といった感じで、投稿するまでに一定の手間があります。

それに対してDispoは「映えるように加工する」とか「良いものを選定する」といった工程を完全に取り除いています

撮影する際にインスタントカメラの覗き口くらいの小さな部分しかスマホ上で見えないですし、現像されて見れるようになるのが翌朝の9時なので、それまではいい写真が撮れたのかどうかさえもわからないのです。

撮影したものは確認できないまま、指定したRollに投稿されますし、Dispo以外で撮影した画像を投稿することもできないので、出来栄えを良くするために加工することも、出来栄えの良い写真を選定することもできないようになっています。
※一旦自分しか見れないMy Libraryで撮っておいて、現像された後にRollsに追加していくということは一応できます。

このような設計によってInstagramの「投稿されづらくなった」という課題を解消し、「飾らないリアルな生活を切り取って垂れ流すようにシェアする」という文化をDispoが作ろうとしてるような気がします。

FOMOではない、リテンションが継続する設計

ソーシャルメディアや動画アプリなど様々なサービスがユーザーのアテンションを奪い合う競争をしています。

ダウンロードして一度使ってもらうだけではなく、アプリに何度も何度も訪問してもらい、より多くの時間を使ってもらう工夫が必要です。

さまざまな工夫が施されてきましたが、ユーザーのリテンションレートを上げる上で非常に強力な方法がFOMO(見逃す恐怖)を刺激するという手法です。

例えばSnapchatやInstagramストーリーズが24時間で消えてしまうことや、Clubhouseでアーカイブが残らないという仕組みが「今アプリに見に行かないともう見れない」というユーザーのFOMOを刺激し、繰り返しアプリに訪問してくれるきっかけづくりとなります。

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対してDispoにおいては「アーカイブが残らない」、「一定時間で消えてしまう」といったFOMO的要素はなく、代わりに「明日の朝9時になったら現像された写真を見れる!」というクリスマスプレゼントを待つ気持ちにも似た「ワクワク感」があるのです。

毎朝現像された写真を見に行くことになれば、毎日Dispoで撮影して投稿する習慣の形成にもつながりそうです。

ポジティブな方向性でリテンションしてもらえる体験設計をしてる感じが個人的にすごく好きです。

エンゲージメントではなく「行動量」によるランキングシステム

多くのメディアでは、閲覧者が満足してしてくれる可能性が高いコンテンツの露出を増やすために、PVやエンゲージメントなどでコンテンツの質を判断しランキング化します。

例えばInstagramハッシュタグの人気投稿やアメブロのランキングなどがそういったランキングシステムに該当するでしょう。

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こういったランキングシステムは高品質なコンテンツの露出量を増やして閲覧者に満足してもらう上でとても優秀である一方で、既にフォロワーや読者数が多いクリエイターが勝ち続けやすくなり、プラットフォーム内での力関係が固定化しやすい仕組みでもあると言えるでしょう。新規参入クリエイターにとっては勝ち目がない無理ゲーになり、新規クリエイターが入ってこなくなり、長期的にはプラットフォームの衰退にもつながるのです。これを回避するために、各プラットフォームがさまざまなランキング設計の工夫をしています。

▼ Instagramがやってそうなランキングシステムの工夫についてはこちらに書きました。

ではDispoのランキングシステムはどのようになっているのでしょうか?

Rollsに参加しているメンバーの中でのランキング表示があるのですが、それがちょっと特殊です。

いいねやコメントといった「リアクション数」だけでなく、
・Rollsへの投稿数
・Rolls内でいいねした数
・Rolls内でコメントした数
のように「行動量」でユーザーランキングが表示
される枠があるのです。

多くの人が見ているRollで、投稿数やいいね、コメントした数が多ければアカウント自体を目立たせることができるので、「良い投稿をしていっぱい反応をもらおう」という動機だけでなく「いっぱいアクションをしよう」というインセンティブ付けになっています。

ただ、こういう仕組みだとスパム的にいいねやコメントをしていく人も必ず出るのでどのように対策して適切に行動量を評価していくのかは要注目です。

コミュニティ間や「パブリック←→プライベート」を行き来きしやすい設計

InstagramなどのSNSでコミュニティに応じて投稿内容を変えたい場合、複数アカウントを作る必要があります。

例えば「リアルな友だちとのコミュニケーション用」「会社やその他の知り合い用」「趣味用」といった具合です。

親しい友だちのみにストーリーズを配信する「親しい友だち機能」やThreadsという専用アプリもありますが、あくまで「親しい友だちとそれ以外」という区分です。

また最近のソーシャルメディアは、パブリックに公開するタイムラインから、少人数のコミュニティメンバーでクローズドな環境でコミュニケーションするというプライベートな方向に向かっているトレンドがあります。

例えばFacebookからmessengerやWhatsappにユーザーが流れていたり、SlackやDiscordの隆盛はわかりやすい例です。

DispoのRolls機能を見ると、撮影する写真によってシェアするコミュニティ(Roll)を簡単に切り替えることができます。

例)この写真は高校の同級生とのrollsにシェア、この写真はキャンプ好きのコミュニティにシェア

また、設定次第で参加メンバーしか見れないプライベートなRollにすることもできれば、公開でみんな見れるRollにすることもでき、プライベートとパブリックを自由自在にコントロールできます。

このようにコミュニティやパブリック←→プライベートを一つのアカウント内で区別して横断する機能はInstagramにはないものです。

Rollsはハッシュタグ的な役割を持っている

Dispoでは写真を撮影する際に複数のRollsを指定することができます。

これはInstagramのハッシュタグ機能にも似ており、例えばビジネス活用においては

・ブランド名のRollsを作って投稿したり、UGC投稿を集約する
・商品と関連性が高く、多くの人が見てるRollsにシェアすることで多くのRollsメンバーに商品を発見してもらう

といった活用ができそうです。

今作成されているRollsを見ていると、ハッシュタグと似ていて、以下のような切り口に分類できるかと思いました。(他にも色々切り口ありそう)

①イベント型
他のメンバーと一緒に体験したイベントの思い出としてのRollsです。
例えば「お花見会2021年」みたいな内輪の友だちとシェアするRollもあれば、「サマソニ」みたいな知らない人も含めてその場に居合わせた多くの人の様々な角度から撮影した写真を集約するといった使い方もありそうです。

②コミュニティ型
単発のイベントではなく、所属するコミュニティごとに作成されたRollsです。例えば「〇〇小学校300期生」とか「会社メンバー」「ヴィジュアル系バンドマン友の会」みたいな感じのイメージです。

③お題型
Rollのオーナーが特定のお題を出して、それに基づいた写真がシェアされるRollです。例えば「オタクっぽいもの晒せ」「部屋の中の一番高価なものを見せて」みたいなものです。

コンテンツディスカバリーの機能はこれから?

Dispoで気になったのはRollsレコメンド機能や検索機能がないことです。

Instagramでいう発見タブおすすめみたいな興味関心に合わせたレコメンド機能はないですし、Rollsの検索機能はちゃんと動作していないようです。

そのため、現状だと以下の方法でRollsを発見していくしかないような状態です。

・アカウント検索からアカウントを発見してその人のRollsを見にいく
・フォロワーのアカウントからRollsを見にいく
・シェアされたRollsのQRコードやURLからRollsを見にいく

もちろんまだまだ開発段階ですので、今後色々なアップデートがあるかと思いますので、どのように探索ができるプラットフォームになるのか、あるいはあくまでリアルなコミュニティの延長線上のSNSとして意図的に探索機能を制限していくのかなど今後の動向がとても楽しみです。

思ったことは以上です

現状まだ使い始めたばかりなのでわかっていない点も多いですが、個人としてDispoを楽しめる方法を色々模索してみようかと思ってます。

また何かわかったことやアップデートなどあればツイートすると思うので良ければTwitterを見てください!

そして、何か面白いユースケースや新しい気づきなどあればTwitterとかで教えてくれたら嬉しいどす。

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