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ラーメンアーカイブ来集軒①

【ラーメンアーカイブとは】

~ 浅草の来集軒が本家ではない!?~


来集軒のルーツを追うようになったのはもう10年も前の話だ。思えば西浅草にある、あのよく知られた来集軒が好きだったことから、他にいくつか存在する(した)来集軒に興味をもつようになったことがスタートだった。来集軒とは何ぞや。何度も食べた浅草のお店にヒントがあるかもしれないと食べに来ては、逆にその謎は深まっていく。

西浅草の来集軒

この浅草店にすべてがつまっているわけではない、いや、それどころか、歴史の一部でしかないことに気付いてしまったことが来集軒やラーメンの歴史をもっと深く知りたいとどっぷりと浸かっていくようになったきっかけだったのだ。

~ラーメンアーカイブを行う意義とは~

ラーメンに必要な情報はあくまで、食べる前に予め自分の舌を盛り上げるための、もしくは、食べた後に感動を増幅するための「味やプロフィール」についての情報だという人が多いことだろう。それは確かに大切だ情報だ。ただ、本を読んだり、音楽を聴いたりすると、その作者の背景が知りたくなるようにラーメンの背景を知ることは楽しいことだ。そして有意義である。では、どのような意義が有るのだろうか。

クラシックでノスタルジックな老舗ラーメン店にフォーカスを当てること自体が新しかった時代が15年ほど前にあり、それは他の飲食店における老舗ブームなどとも相まってにわかに注目された。ただブームは一過性で、「懐かしいよね」とか「そういうのもいいよね」という新しいモノの価値がある種飽和したときに生まれた自浄作用のようなものでもあった。

ただ、そのブームや小さな話題作りを繰り返す中で、認められてきた価値があった。古臭いことが伝統的であることに置き換わったり、シンプルな味の構成がルーツと呼ばれ尊敬されてきたり、また、純粋な「昔のラーメンもこんなに美味しかったのか!」という感動を生んだりしていたことがそうだ。

浅草来集軒に飾られた有名人のサイン色紙

そして、最も大切なことは、その「昔のラーメン」というカテゴリーの中でも、お店や系統によって、大きな特徴や違いがあり、それらが魅力的であることが認知されるようになったことだ。それは地方のラーメン文化を着目することによく似ている。

その認知に至る契機は、例えば最先端の人気店の若い店主がルーツについて言及したり、食べ歩いた感動を発信することや、その味を再現した限定メニューを出したりすることだったかもしれないが、いずれにせよ、音楽好きと同様にファンが歴史を遡上することの楽しみを知ったことが非常に大きいと思う。また、それをSNSなどの手軽なメディアを通して発信できたことも下地を作った要因と言ってもいい。

そうして、背景やエピソードを聞き重ねるようになって、単色の歴史に色を差し、立体的にすることで、史実が単なる過去のものだけではなく現代へと繋がっているものだと実感できるようになる。歴史ロマンにも似た興奮が「味」という現在進行系の体験と交わって得られること。その点と点、過去と現代を結びつけて考えられるようになること。これが何より大切なのだ。改めて言うまでもないことかもしれないが、それが文化というものだろう。

つづく


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