見出し画像

EF85mm F1.4L IS USM・ライブ撮影,ポートレート編

前回の購入レビューの続編

前回は一般的な用途とかレンズの基本的な性格を見たが、今回は実際にポートレートなどの撮影でどう出るかを中心に試した。

動いている被写体を撮るライブ撮影と、止まっている被写体を撮るポートレート用途ではレンズに要求する能力も変わってくるのでライブとポートレートで話しを分けて書こうと思う。


ポートレート作例

例1

ISO 200,F1.4,1/320

例2

ISO 320,F1.4,1/320

ライブ撮影作例

画質

解像度に関しては特に文句のつける余地がない。前髪のディテールもきれいに出ているし、まつ毛も綺麗に描写されているし、解像度としては撮影していて全く問題がないし、どちらかというとシャープに出過ぎてしまったものをどうマイルドに描写するかの世界になってくる。

24MPの画素数低めな機種で撮影しているので、どっちでも解像度的には問題ないが、EF 70-200mm F2.8より少しシャープかなーという感じ。70-200mm F2.8などの望遠ズームレンズは基本的に望遠で寄るためのレンズなので、広角側よりは望遠側に画質のウェイトが置かれている製品も多く、広角側が弱い製品も多いのでそのレンズの得意じゃない部分を使って撮るのも画質的に美味しくないのでどうせなら単焦点レンズで画質良く撮りたいところだ。

ライブ撮影

今回はライブ撮影ではF1.8で撮影した。
シャッター速度が速いのもあり、同じくらいの画角で70-200mmで撮影したときの写真に比べてシャープに写っており、ISO感度が低いのでノイズも特に来にしなくていいレベルに撮れていると思う。被写界深度が浅いF1.8で撮影しても70-200mmよりも線が細いので、70-200mmと比べても解像度は高いなと感じた。

ポートレートでは撮影者の立ち位置や距離感や目線の高さをある程度コントロールすることができるのと、動いていないのと事前にある程度設定値を考える余裕があるので被写界深度を考慮してF値を決定することができるのと、シャッター速度への要求がそこまでシビアではないのでポートレートとして許容できる範囲のISO感度で使えるF値の幅は結構広いが、ライブ撮影では眼の前の被写体に対してずっと同じF値で撮り続けることが多いのでこのシーンではピントが合いづらいからもう少し絞ってとかそういうことは瞬発的にはあまりできないのが違いだと思う。

さて、このレンズをライブ撮影用途で使用したときに問題に感じたこととして、被写界深度が浅すぎるのとAF速度が70-200mmほど速くないことも相まって自分が思った100点満点の位置にピントを持ってくることができる頻度は85mmF1.4より被写界深度が深い70-200mm F2.8に比べて低いなと感じた。


AF

ライブ撮影

85mmという焦点距離の使い道を考えると、70-200mmではワイド側ばっかり使うようなシーン(リリイベの前方など)がこの画角の美味しいところだと思うが、近い撮影距離での撮影はAFの移動量が大きくて高速なAF駆動が必要になる。

このレンズを使ってみた感想としては、AFが爆速のEF 70-200mm F2.8L IS II USMと比べた場合AFの速度が遅く(とはいえ、RF 85mm F2のSTMや、SIGMAの85mm F1.4に比べるとかなり速いのでその点では純正のメリットを感じる)、70-200mm F2.8の速度の感覚で、これくらいならピントが合うだろうってシーンでも、近すぎるシーンとか、急に激しく動くシーンなどではAFが追従しきれないことが多々あるので70-200mmと同じ感覚で使うのは難しい。

これ以上にAFが速い85mmの単焦点レンズはRF 85mm F1.2L USMくらいしか考えられないが、EF 85mm F1.4Lが中古で14万~16万で買えるのに対して、RF 85mm F1.2Lは新品で40万円近い価格を考えると全然別のクラスの価格帯でRFマウント版の購入に踏み切れない人も結構な数いることを考えるとこのレンズのAF性能が85mm単焦点レンズの性能の現実的な価格の限界点なのかもしれない。

また、ライブ撮影で使ってみて発覚した欠点として、フォーカスリミッターがないことが挙げられる。85mmの画角ではライブ撮影ではどのみちフォーカスリミッターがあったとしてもFULL側で使う頻度が高いと思うのでフォーカスリミッターがあったところでそこまで役に立たない気もするが、フォーカスリミッターがないせいでピントが迷ってしまって無限遠とかに飛んでしまうと、70-200mmに比べてAF速度が遅いこととフォーカスリミッターがないせいでフォーカスの復帰時間は長いなと思った。

精度や歩留まりのことを考えるとF1.4開放でのライブ撮影は厳しいかもしれないので、F1.8やF2くらいでの撮影が現実的なところだろうか?(F1.4での精度、歩留まり、画質、被写界深度的な実用性に関しては今後要検証。それでも70-200mm F2.8と比べて1段明るいとシャッター速度を稼いだり色々出来るマージンが大きいので画質的なメリットはある)

【追記】

まさか85mmの距離で撮れる現場が続くとは思ってもいなかったが、2回目の機会を得た。
2回目の機会での感想としてもやはり、AF速度で70-200mm F2.8と比べて遅く、ピントを追いきれずに外してしまうことでAFが背景に持っていかれたりといったロスが大きいのを実感した。
撮影中の具体的な設定値としては、85mm F1.4使用時はF1.8 1/1000 ISO 1600-2000程度でレンズの明るさに余裕があることでシャッター速度を稼ぐことができるのに対して、70-200mm F2.8ではF2.8 1/800 ISO 3200-4000程度での撮影になった。高感度に強い最近のフルサイズ機ならISO 4000程度なら最早そこまでノイズを気にするほどではなく、おそらくほとんどの人が85mm F1.4で撮ったISO 2000の画像と70-200mm F2.8で撮ったISO 4000の画像を見分けることはできないと思うし、自分もたぶん分からないなと思った。画質的に見分けることができないなら、ズームレンズの利便性を取るのも合理的な判断だと思う。

自分自身はこの撮影では前半2曲を85mm F1.4で撮り、MCのタイミングで70-200mm F2.8に交換して後半2曲は70-200mmで撮影した。
率直な感想を言うなら、85mm F1.4はAFを外す確率が70-200mm F2.8よりも高く歩留まりに問題があるので、撮影時間に余裕があり多少失敗カットが多くてもそこまで気にしないシーンであればそれでもいいかもしれないが、確実に収めたいシーンで信頼して使うことができるのは70-200mm F2.8だなと思った。(まだ85mm F1.4を使い始めて期間が短いので慣れの問題もあるとは思うが、それでもやはりこのレンズはAF速度が70-200mmより遅くハードウェア的な限界は間違いなくあると思う)

ポートレート(特典会の写メレギュレーションで使用)

最近はワンショットAFだとピントを合わせてから、この瞬間で行こうと思ってシャッターボタンを押すまでのタイムラグの間に撮影者や被写体が呼吸して微妙に動くことによる微妙なピント位置のズレを防ぐためにポートレート撮影でもサーボAFを使用することが多い。最新のF1.4のレンズは開放でも非常にシャープな描写力を得ることが出来るが、ほぼ正面を向いているような状況でもまつ毛の解像度に多少の左右差が出るくらいなのでF1.4の被写界深度は非常に浅く、そこまで気にするとポートレートもサーボAFで撮ったほうが楽だということがわかった。
まつ毛などの解像度の左右差を考慮するとF1.6やF1.8などちょい絞りでの撮影も検討するべきだろうか?

このレンズを買うために売却してしまったEF 50mm F1.2L USMでは解像度にも難があったが、AF精度に難があって時々ピントが合っているつもりで撮ってみたらピントが外れていたということが時々あったので、AF精度の観点でもこのレンズに買い替えてよかったなと思った。

レンズ内手ぶれ補正

ポートレート

F1.4クラスのレンズになると特典会のときの照明弱めの状態でもISO感度200で1/320のシャッター速度を確保できてしまうので、光量不足でシャッター速度が低下して手ブレを気にするシーンはポートレートなどの撮影現場では遭遇することはそうそうなさそうだ。ほとんどのポートレート撮影現場現場ではF2.8でも十分にポートレート用途でレンズ内手ぶれ補正の効果があるなって感覚は特にない。

今回使用したシャッター速度では85mmの焦点距離的には手ブレ補正なしでも手ブレが出ることはほぼないと思うが、ポートレート以外の一般的な撮影で試してみた範囲でも、1/13のスローシャッターでも手ブレ補正で十分に手ブレを抑制することができたのでポートレート分野での手ブレ補正の有効性ははっきりしないが手ブレ補正の効果としては十分だと思う。

ライブ撮影

レンズが明るく、F1.8 ISO 1250-2000でSS 1/1000を切ることができたので焦点距離から考えても手ブレは考慮しなくてよいなと思った。

総評

純正の70-200mmF2.8と比べるとAF速度で劣ってしまい、それに起因して瞬発的なAF速度に劣ったりとAF速度的な欠点は挙げられる。そこまで速くないと言っても、社外品のレンズやSTMモーターの純正85mmと比べて十分に速いし、瞬発力がちょっと物足りないくらいで85mmとしては結構速い部類には入ると思う。レンズが大きく重たい85mmの大口径レンズではRF85mm F1.2Lだとしても純正の70-200mm(EF2,3やRF)ほど速いAF速度は出ないので85mmの単焦点レンズの限界なのかもしれないし、普通の用途ではここまで速い速度を要求することは想定されていないのかもしれないが…
Canonのカメラで使える85mmレンズとしてはAF速度はかなり速い方だが、それでも70-200mm F2.8のAF速度には劣り、最新の高感度画質が良いボディならISO 4000程度までの範囲なら70-200mm F2.8で撮ったほうがAFの歩留まり的に有利だったので、このレンズを動きの激しいライブ撮影にオススメだよと他人に強く薦めることはできないなと思った。70-200mm F2.8をまだ持っていないなら、まずは絶対に70-200mm F2.8を買うべきだ。ライブでも、特典会のポートレート撮影だとしても70-200mm F2.8を持っていれば困るシーンはそうそうないので、85mm F1.4は「オプション」の選択肢の1つであり必須装備ではないと思うので、カメラの高感度が強い今の時代にはそこまで優先順位が高いレンズかというと難しいところである。

写りに関しては素晴らしいので特に言うことはない

総合すると、値段が高すぎるRF 85mm F1.2L USMを除くと実質的にCanon機で使える一番性能の高い85mmで、20万以内で買えることを考えると現実的に買いやすい上限のレンズだなって思うし、RF 85mm F1.2L USMを除くと一番AFが速いCanon向けの85mmなので2024年6月現在のレンズの選択肢の中で考えると良い85mmレンズだと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?