大槻流「うたうこと」〜中・上級編〜
< はじめに >
自分の声を使って音楽をする魅力。それは、変化していく自分の気持ちや豊かに成長していく内面の状態を他者に伝えられること。
結果や利益が全ての世の中に於いて、失敗も含め、成長していく過程を他者に見せられる世界はなかなかない。
呼吸法を極めオペラティックな声が出れば良いということだけでなく、声が詰まっていたり揺れていたりという感情を伝える邪魔になる癖を取り除き、自分の感情が瞬時に声に現れるような「自然な声」を手に入れなければならない。
クラシック音楽としての声楽、発声の意味は、自分が持って産まれた唯一無二の声という賜物を最上の美しさに磨き上げ、自分の出す声や音色に責任を持つこと。
料理人に例えるなら、お店の掃除や皿洗いから始まり、仕込みなど徐々に新しい仕事を任され、何年何年もかけて、ようやく一人前の料理人になる。
そんなに時間を掛けなくても、もしかしたら美味しい料理は作ることが出来るかもしれないし、誰もがすぐに自分のお店を持ちたいと思うだろうが、コツコツと地味で単調な作業を繰り返していく中で、そうした時間にこそ喜びや価値を見出し、自分自身の内面や料理人としての強い信念が磨かれ、ぶれない幹や芯のようなものが心の奥深くにいつのまにか根を張り、決して換えの効かないオンリーワンの料理人や職人、歌手になることが出来る。
一つのことをやり続け、磨き続ける者のそれこそが存在価値であり魅力だと思い、私は歌い続けています。
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