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『BOYS DON'T CRY』木下理樹の美しくあたたかい世界

20代、
癒されたいとき、
私はいつも、
ART-SCHOOLを聴いていた。


2002年、メジャーデビューシングル「DIVA」、
それが私のART-SCHOOLとの出会い。

アンダーグラウンドな世界観、
か細い声、腹の底からの叫び、息遣い、
それを支える骨太なベース、ラウドで心地よいドラム、
キラキラしたアルペジオ、歪んだギター、轟音、
そして、疾走感。

「俺にはこの音楽が必要だ」と感じた。

私の中にある、
言葉になっていない、黒々とした感情、もどかしさ、
ホントは腹の底からそれらを吐き出したい?
それを、
代わりにやってくれているような、
私は、
「この音楽と共に生きていたい」
と思った。
それは切実な思いで。



ファーストアルバム「Requiem for Innocence」、
「DIVA」のエネルギーを持った曲達で彩られた作品。
木下理樹の、美しき世界観が、
ギター大山純、ベース日向秀和、ドラム櫻井雄一により、
力強くカタチになっていく。
それは、這いつくばって絞り出すというくらいの、
生みの苦しみを経た音で、
人間なら誰にだってあるよね、という矛盾・葛藤、それらをそのまま音に昇華したような、
もう2度とつくれないであろう音像、
だからこその美しさ、儚さ、きらめき、を擁している。

後先のことなんか知ったこっちゃねぇ、
という悲壮感を心の中にとどめ、
しかしながら要所要所のシャウトにそれが否応なくにじみ出てしまっている、
そんなこの時期の木下理樹を、
音として閉じ込めたこの作品が、
私はとても貴重だと思う。
唯一無二の作品。
いや、
ART-SCHOOLの作品は、
いつのモノでも同じことが言える。



2003年11月、
セカンドアルバム「LOVE / HATE」、
前作の勢いは衰えず、
木下理樹の世界観が、ART-SCHOOLの世界観が、
より成熟していく。
良くも悪くも、安定感のある作品。
木下理樹のつくるメロディーは、
いつだって美しい、
そして、
声が、その世界観に見事にマッチしている。
いや、
最も重要な要素は、
歌詞だ。
使う言葉、使わない言葉、そこら辺のバランスから生まれる、
イメージの中の世界、
この世界に、私がどれだけ救われてきたことか…。

20代の私は、
日々、心は不安定で、
心の準備もままならないまま、その日を生き、
取り繕い、
次の日が来て、
心はすり減って、やせ我慢をして…。
そんな中、
自分の心を一時でも癒すには、
美しいモノに浸る、
それしかなかった。

木下理樹の歌詞が作り出す世界は、
何よりも美しかった…。

身を切るような冷たさ、底冷えする冬、
そこで浴びる太陽のあたたかさ、

木下理樹の世界は、
そんな太陽のようなあたたかさを備えていた。

何よりも、優しかった…。

そして、
その世界は、
木下理樹の声とメロディーにより、
立体化し、
時間軸に乗り、
いつも、
私の、か細い心に寄り添ってくれた。

20代の私が、
どれだけ救われたことか…。

特に、このアルバムの辺りなのだ。
いや、
初期のART-SCHOOL全般なのかな。
ライブアルバム「BOYS DON'T CRY」に収録されている曲は、
どれもそんなチカラを持っている。




ライブアルバム「BOYS DON'T CRY」、
アルバム「Requiem for innocence」「LOVE / HATE」の曲だけでなく、
インディーズ期の名曲達も演奏されている。
インディーズ期の曲がまた、
木下理樹の色が全開で、
私にとってはたまらない作品。

「NEGATIVE」
「斜陽」
「ガラスの墓標」
「ニーナのために」
「ロリータ キルズ ミー」

「ガラスの墓標」という曲、特に私は好きで、
曲のアレンジ的に、良い意味で「凄いセンスだなぁ…」と脱帽した記憶。
この時期の曲はどれも、
詩的なニュアンスが強く、
独特で。
何より、
木下理樹自身が、
この時期の曲を、大切にしているようで、私はそれが嬉しい。
ライブの最後を飾ったり、
ライブのアクセントになるのは、
この時期の曲のことが多い。

「プール」
「FADE TO BLACK」
この2曲も私は大好きだ。
初期のART-SCHOOLの完成形というか、象徴といえる曲だと思う。

また、
ライブアルバム「BOYS DON'T CRY」には、
ライブ映像のDVDが付いているのだが、
初期のART-SCHOOLの映像を、
公式で残したということに、
私は大大大大大感謝している。
若き日の木下理樹の歌う姿、ギターを弾く姿、
それは、
それ自体が、私にとっては美しいことで、
いろんな思いが詰まっていることで、
未来に希望なんて持てず、しかしガムシャラに前に進もうとしていた私自身をも、思い出させてくれる、
まさに、BOYS DON'T CRYの境地なのだ。




初期ART-SCHOOLに愛を込めて。
ありがとう。



その後のART-SCHOOLについても、
またいずれ。



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