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少年隊「仮面舞踏会」/ザ・ベストテン 1986年出演時の演出の謎

京平さん(僕は先生とは呼びません。弟子でもない奴に先生とは呼ばれたくないかもしれないので)が亡くなって、SNSのTL上は京平さんの話で溢れています。

そんな中で見つけた動画。
少年隊が1985年の年末に「仮面舞踏会」デビューして、1位を爆走中だった頃にザ・ベストテンに出演したときの映像です。
5週連続1位(おそらく初登場1位)ということは、リリースから1月半ほど経った頃でしょうか。
作詞はちあき哲也さん、作曲はもちろん筒美京平さんです。

もともと少年隊は、その存在が知られ既に人気が出ていたにも関わらず、レコードデビューがなかなか決まらずに、ファンもフラストレーションが溜まっていました。
そんな中で、最高の楽曲でデビューしたわけですから、爆発的な盛り上がりも当然ですが、アレンジを担当した船山基紀さんにお聞きしたところ、1位が絶対命題だったので、プレッシャーが凄まじかったと言っていました。
そんな中であのトリッキーなイントロを生み出すんだから(船山さんもどうやって作ったか覚えていないとのこと)、まさにプロの仕事です。

さて、問題の動画がコレです。

わずか3分。
それだけの時間の中にどれだけのトリックを仕込んだのか。
今のような技術がない時代、かつ、できる限り生で歌ってもらうというのが信条だった「ザ・ベストテン」ですから、口パクでやるとは考えづらい。
そして、少年隊のパフォーマンスのキレっぷり。
当時のテレビにおける演出の最高峰ではないかと思います。

前半が舞踏会のセットをバックに歌い、後半は<ウエスト・サイド・ストーリー>のような、ストリートでのダンスシーンから歌に戻っていきます。
普通に考えると、衣装替えとセットチェンジなんですが、この間わずか数秒。
靴まで履き替えていることから、数秒での早着替えは難しそうですし、画面が切り替わった時の位置関係からいって、移動も難しそう。
生放送ですから、これをどうやって作り上げたのかが謎なんです。
それを想像で解き明かしてみましょう。

僕の想像では、前半は主に録画。後半は生。歌と演奏は全部生です。
場面ごとに見ていきましょう。

まず、少年隊の板付きのバック(サイド)ショットからスタート。
ここは生です。
あえて司会者やほかの出演者が少年隊の向こうに映り込むことで、少年隊がその場で生のパフォーマンスをしている印象を植え付けることができます。

その直後に画面は録画に切り替わります。
舞踏会セットの上からのショットから、カメラが窓から見下ろすところまでが録画です。

この舞踏会シーンの途中、メンバーがマイクスタンドを蹴り上げると、スタンドはそのまま画面から消えます。
このトリッキーな演出は、おそらくスタンドにテグスか何かをつけておいて、上に引っ張りあげてるのではないかと思います。
そうなると、あの距離感では引っ張り上げたときに空中でマイクスタンド同士がぶつかってガッシャーン!と音が出る可能性があるはずなんですが(ナナメに引き上げればぶつかりませんが)それがないということは、あのシーンは録画で、放送時の音は生の音声に差し変わっているとも考えられます。

カメラがメンバーから外れ、窓際に寄っていき、窓から見下ろすとそこには既に少年隊がスタンバっていて、踊り出します。
これによって、メンバーが早着替え、瞬間移動したような印象になりますが、この窓から見下ろす部分は別撮りの録画でしょう。

窓枠の横に立っている人物が、正面からの俯瞰映像でもそこに映っていて、位置関係をハッキリさせていることで、余計に移動の謎が深まるわけです。
このあたりの伏線の張り方、かなり演出が細かいです。

さて、その裏で、メンバーの動きは。

オープニングの板付きのときは、実は後半ダンスシーンの衣装の上に、舞踏会シーンの上着(ガウン)を着ているのではないかと思われます。
足元は映ってませんから、それだけで舞踏会シーンを生でやっている印象になるはずです。
マイクスタンドで歌いながら、スタッフがガウンを脱がせ、歌いながら後半の立ち位置に移動。
そのまま歌い続けます。

つまり、生放送のスタジオに設置されたセットは後半のストリートのシーンのもので、少年隊はそこに前半の舞踏会の衣装を(ガウンだけ)着てスタートするわけです。

1コーラス目が終わると、画面は録画の舞踏会シーンから、ストリートのダンスシーンに切り替わり、生のパフォーマンスがスタート。
ここから終了までが生です。

ここでも、しつこく司会者と出演者席が映り込むショットが入ります。
これが衣装とセットが変わっていることの証明になるわけです。

ここはもうガチのパフォーマンスで、少年隊のポテンシャルの高さが伺えます。
ニッキが後ろに下がりながら、片手でマイクを持った状態でさりげなくバック転。
エンディングのヒガシの後方から走りこんできての宙返りからのビシッとポーズを決める正確さ。
もう、メチャメチャかっこいいです。
オッサンが惚れるわw

演奏も全部生でしょう。
レコードの音と違うのはもちろん、イントロのフレーズが簡略化されているところもテレビアレンジならでは。
おそらく、録画の映像にキューが入っていて、それに合わせて演奏をスタートさせれば最後までズレなくいけると思います。
少年隊は演奏の始まりに合わせて動き出せばいいですし。
画面のスイッチングはそれほど難しくないでしょう。
つまり、録画されたビデオがスタートの合図になっていて、そこに最初だけ生の映像を見せることで、あたかも全てをリアルタイムでやっているように見せているわけです。

以上、全部想像ですw
でも、なかなかいい線いってると思いません?

一つ言えるのは、わずか3分の歌唱シーンのためにかけている労力の凄さです。
スタッフも演者もこの3分にかける熱意がハンパない。
これが昔のテレビの凄さですよね。
脱帽です。

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