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ポールの頭の中を想像してみるの巻2

さてさて、回り道にもほどがあった前回のテキスト。「マジメに書け!読む気がしないよ!」という声がうっすらと聞こえてくる2022年のお正月でございますが、みなさま、初夢はご覧になりましたか?なんてことは、どうでもいいですね、話を進めます。

ディズニーチャンネルで配信中のザ・ビートルズのドキュメンタリー映画『ゲットバック』。全3回、計8時間にもなるフレデリック・ワイズマン監督作みたいな映画ですが、一応、天才たちの面白おかしき生態がそのまま写っている映像内容だけでも十分に楽しめるのではないか、と。で、その面白さとは別に、自分が興味を持った瞬間、最終的にあの『ゲットバック』となっていく楽曲をポールがスタジオで即興で作っている映像について。

前テキストの「ゲットバックの作曲風景から見える5つのポイント」、まずは『ゲットバック』、ビートルズ時代のどの楽曲に一番似ていると思いますか?質問ですよ!帰省中の実家のコタツで考えてください。チッ、チッ、チッ、ポ〜ン!はい!その通り!(って、誰にも答えてもらってませんが、内なる読者の声として)答えは『ラヴ・ミー・ドゥ(Love MeDo)』、言わずと知られたビートルズのデビュー曲です。                    「え〜~っ!ウッソ〜!信じられな〜い!」という80年代の女子大生の声を聞きながら、どこが?をお答えいたします。              それは前回書いたポイント5「ポール製の道案内看板、メロディのための看板には「7th(セブンス)に行くべし!」と書いてある」話。この2曲ともにそのものなんです。ポールが“メロディの行き先”として脳内で考えていること、つまり曲作りにおける美意識そのものがこの2曲にも表されているのです。                               『ラヴ・ミー・ドゥ』も『ゲットバック 』も、ガッツリと7thの音が刻印されている曲なんです。記号論に陥らないように、それが目的とならないような音楽の話を書くためにこのテキストを書いているので、なんとも説明が難しいのですが、当然に2曲、楽曲の雰囲気は違います。それはビートルズの曲が全てヘッドアレンジ、スタジオに全員集まってああだこうだとアイデア出しながら曲を完成させていく(バンドで作ること)が前提だからです。62年の曲と69年の曲ではアレンジの発想力も演奏力も桁違いですからね。2曲は構造的に同じである、とする話は、曲をメロディと伴奏だけの状態、”曲を裸にしてみたとき”にどう理解するのか?ということです。         リスナーとして聞いて感じている〈違う曲という印象〉はアレンジと演奏力と、そして当然、歌詞とテンポの違いでもあるのです(それだけじゃありませんが)。それは”作曲以後の作業”によって各曲適正に作られることなのです。                               [似たメロディなのにアレンジを変えているので気づかれない曲]と[メロディは全く異なるがアレンジのアイデアを頂いている曲]。著作権的には前者はアウトですが、後者は(一応)ありです。楽曲のパクリ話はまたふか〜〜い話になるのですっ飛ばしますが、作曲やアレンジを長年やっていると楽曲の装い、外見的なファッション(アレンジや録音や演奏力)に興味があるのも当然ながら、裸の状態で曲を見てしまう(聞いてしまう)意識も同時に働くのです。で、その裸の状態で『ゲットバック 』と『ラヴ・ミー・ドゥ』を聞けば、メロディを7thに持って行こうとしているポールの美意識が分かるのです。メロディは無尽蔵に湧いてくるのは前提条件で、そのメロディを“どの道へ導くのか?”これが、ポール、そしてジョンにも共通する作曲時のメロディの作り方なんですね。

(以下、続きます)

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