宮崎貴士

作・編曲家。バンド「図書館」「グレンスミス」「ワッツタワーズ」「Frozen japs…

宮崎貴士

作・編曲家。バンド「図書館」「グレンスミス」「ワッツタワーズ」「Frozen japs」 「オリビア」在籍中。 第19回文化庁メディア芸術祭エンターティメント部門大賞受賞(岸野雄一氏)「正しい数の数え方」作曲。 レコード・コレクターズ誌などに時々寄稿してます。

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【神の左手、無意識の右手/ポール・マッカートニーの作り方/2024. No.2】

【第一章:ビューティフル・ドリーマー】 「最初に会ったとき、彼らがいい曲が作れるようになるなんて想像もしていなかったよ」 ジョージ・マーティン/ザ・ビートルズのプロデューサー 実際、どうやってポール・マッカートニーは曲を作っているのか? 「音楽史上最大の成功をおさめた作曲家」(ギネスに登録されている)でもある彼が具体的にソングライティングについて語るインタビューや記事はとても少ない。歌詞の由来、どういう状況でそれを作ったのか(例えば、辛い状況に置かれていた時に書いたという

    • あの新曲について。

      ねえ、リリースされてからしばらく経て、どうでしょう? 何が?って、ノラ・ジョーンズの新作じゃなくって(素晴らしい) カーネーションの新作(最高です)でもなく、 英国で60年代に活躍した4人組のバンドの新曲ですよ。 「NOW AND THEN」 そう、ザ・ビートルズのPV自体もですが 自分などはこうした涙する世界のファンの方々の姿でもらい泣きするというね、「作ってくれて感謝」これに尽きるんですよ。 どうも、楽曲的に評価したくなるのもリリース直後のリアクションとしては致し方ない

      • 【神の左手、無意識の右手/ポール・マッカートニーの作り方/2024】

        *コロナ禍の2020年、ディスクユニオンのサイトで ポール・マッカートニー、彼の”音楽の作り方”もしくは”音楽の捉え方”について考察を続けていました。全50回、現時点でも検索すればすべての記事を読めるのですがリンクなどが不明瞭な状態になっているので少しづつ こちらでもテキストをupしようと思います。 内容も随時変更、追加予定です。 ごゆるりとお楽しみください。               「序章」                           宮崎貴士  「才能とは、

        • ディスクユニオンweb版での連載

          コロナの時期、1年間かけてディスクユニオンweb版にて 50回に渡り「ポール・マッカートニーの作り方」を書いていた。 https://diskunion.net/diw/ct/news/article/1/87737 ユニオンの事情でweb版が閲覧できない時期があったのですが 再開されているのでリンクいたします。 お時間ある時にでも。 さて、ザ・ビートルズがレコードデビューした年は1962年、つまり今年はポールがその音楽を世界に届けはじめてから60年経った年ですね、音楽業

        【神の左手、無意識の右手/ポール・マッカートニーの作り方/2024. No.2】

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        • 神の左手、無意識の右手」
          1本

        記事

          ポールの頭の中を想像してみるの巻5。

          そして、そこが「ゲットバック・セッション」が行き詰まった原因の一つにもなっています。セッションの前に作られたアルバム『ホワイトアルバム』、その作り方は各自が時々に作ってきた曲を脈絡なく集めた内容になっています。各自(例えばジョンのダム)から流れてくる水を使って、ザ・ビートルズの川に流す(バンドで演奏して)、それぞれの水脈から流れ出た水を使ってでも、とりあえず、最後「ホワイトアルバム」となる田圃で収穫までには至りました。初期などはそれぞれのダム水の水質も似たようなものでしたので

          ポールの頭の中を想像してみるの巻5。

          ポールの頭の中を想像してみるの巻4。

          さて、正月休みもそろそろ終了。元旦から書き始めた突発的なこの短期連載もそろそろ終わらせたいと思いつつ始めてみます。 前回の内容、『ゲットバック 』と『ドレミの歌』の比較いかがでしたか? 音楽の作り方を説明するややこしさ、楽理(音楽的知識や記号)を使って伝えられればそれは早いと、私も思っております。書店や楽器店に行けばザ・ビートルズの作曲法やコード理論についての本はかなり見つけられると思います。しかし、ビートルズ流を覚えるならば、初心はあくまでも「自分でやってみる」だと思うの

          ポールの頭の中を想像してみるの巻4。

          ポールの頭の中を想像してみるの巻3

           1962年に発売されたザ・ビートルズのデビューシングル『ラヴ・ミー・ドゥ』。大ヒットをしたわけではない(英国チャートで17位)曲でしたが「自分たちの曲でデビュー出来て良かった。それがバンドのこだわりだったからね」とのちにポールが語ったように、彼らにとっては〈自作自演の曲〉であることこそが重要な選択でした。こだわっている音楽を曲で表現したい、その意識が最初から貫かれていたということです。そのこだわりが『ラヴ・ミー・ドゥ』〜そして解散近い時期にポールが書いた『ゲットバック 』に

          ポールの頭の中を想像してみるの巻3

          ポールの頭の中を想像してみるの巻2

          さてさて、回り道にもほどがあった前回のテキスト。「マジメに書け!読む気がしないよ!」という声がうっすらと聞こえてくる2022年のお正月でございますが、みなさま、初夢はご覧になりましたか?なんてことは、どうでもいいですね、話を進めます。 ディズニーチャンネルで配信中のザ・ビートルズのドキュメンタリー映画『ゲットバック』。全3回、計8時間にもなるフレデリック・ワイズマン監督作みたいな映画ですが、一応、天才たちの面白おかしき生態がそのまま写っている映像内容だけでも十分に楽しめるの

          ポールの頭の中を想像してみるの巻2

          ポールの頭の中を想像してみるの巻。

          あけまして、おめでとうございます。今年もよろしくお願いします〜! 昨年の11月、ディズニーちゃんのチャンネルで配信が始まった映画『Get Back』(以下カタカナ表記)、すでにご覧になった方も多いと思います。いやはやなんとも(『イヤハヤ南友』という永井豪のマンガもありましたね、豪ちゃんついでに「ハレンチ」という死語を復活させたい、と思いながらも「死語」自体をまずは復活させねば!と堂々巡りの2022年でございます)、とどのつまり、『ザ・ビートルズ』って何よりも人間関係が面白す

          ポールの頭の中を想像してみるの巻。

          [あらきなおみ/1964]インタヴュー

          以前もこちらで紹介した、あらきなおみさんのアルバム『あらきなおみ /「1964」』。レーベルより依頼があってあらきさんにインタビューさせて頂きました。2021年10/6リリースのアルバム、是非にと思います。 卓越したソングライティング、アルバム作りへの構想、意識的なディレクションの背景など、直接本人から聞くことが出来て貴重な体験でした。 あらきさんとの私的な思い出も色々とあるのですが、曲作りなど多大な影響を受けてきたシンガーソングライターの一人として光栄なる機会、ありがと

          [あらきなおみ/1964]インタヴュー

          「まるで世界」ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)について〜アルバム浪漫主義の結実作品。

          KERA氏のニューアルバム「まるで世界」、CD と LP は同時発売、CD は見開き紙ジャケット仕様、アナログ盤は 2 枚組見開きジャケット仕様のカラー・ヴァイナル重量盤でボーナストラックとして CD 未収録の 5 曲(全 19 曲)収録されている。 複数の楽曲をそれぞれのパッケージにまとめた音楽アルバム。      曲単位で楽曲が受容される時代であっても『アルバム』として音楽を表現する価値はあると確信しているが、その理由について「ただのこだわり、ただの過去の習

          「まるで世界」ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)について〜アルバム浪漫主義の結実作品。

          『1964/あらきなおみ』について。

          『1964/あらきなおみ』 あらきなおみ、26年ぶりのソロ・アルバムがリリースされる。 自分にとっての音楽家『あらきなおみ』は優れたベーシスト(タイム感は国内有数だと理解しています)でもあるのと同時に、いや、それ以上に素晴らしいシンガー・ソングライターであると思っている。 ニューアルバム『1964/あらきなおみ』に収録された全6曲。 厳選されたであろうそれぞれの楽曲には、確かなる技術を持った演奏家と編曲家によって深度の深い音楽的な達成があり、多彩な音楽の豊かさを味わうこと

          『1964/あらきなおみ』について。

          『ポール・マッカートニー』について。

          https://diskunion.net/diw/ct/search?m=12&q=%E5%AE%AE%E5%B4%8E%E8%B2%B4%E5%A3%AB&g=1&a=0&f=0&s=0&z=0&u=0&r=50 ディスクユニオンのサイト上で、昨年から1年かけて連載してきた記事。 全50回、上記のリンクでお読みいただけます。 「20世紀最高の作曲家」と呼称されるポール・マッカートニー。彼の特異な才能について、そして、その才能が世界的に認知されている状況について、改めて

          『ポール・マッカートニー』について。

          「ポール・マッカートニーの作り方」

          「ポール・マッカートニーはどうやって音楽を作っているのか?」 20年の春から今年、21年の初夏まで全50回、連載していた ポール・マッカートニーの音楽分析。 下記でお読みいただけます。 今後も何か付け足すような内容があらばこちらで書き足します。 お時間あるときに楽しんでいただけたら~。 「楽譜の読み書きも出来ない音楽家の音楽の作り方。それを音楽用語や知識で理解するには無理があるのではないか?ならば、それはどういう作り方をしているのか?ポール・マッカートニーはどうや

          「ポール・マッカートニーの作り方」

          延々と驚かされる音楽。それはホラー音楽ではない。作曲家「澁谷浩次」氏について。

          宮城県を活動拠点とするバンド『yumbo』。 自分が所属するバンド『図書館』の初めてのライブ、その共演者として数年前(おそらく10年ほど前か)バンド『yumbo』と初めて出会った。阿佐ヶ谷の確か地下にあったライブハウスだと記憶している。その楽屋で初めて会ったyumboのメンバーの(あくまでも自分の私的な)印象は「ひとかたまりの影」という雰囲気であった。それは暗いという意味ではなく、そこにある何か強烈な意志、自分たちが作っている音楽への確信、知性などの集合体としての塊がそこに

          延々と驚かされる音楽。それはホラー音楽ではない。作曲家「澁谷浩次」氏について。