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コミュニティにおける2つの価値


「コミュニティの価値ってなんだろう」

最近色んなところで「コミュニティ」というワードを聞くことが多くなりました。

しかしこの「コミュニティ」に対する認識は、人によって結構異なっているなと感じることが多いです。

例えば企業ではコミュニティを「マーケティングの手段」として捉えていることが多く、逆に地域やオンラインサロンではコミュニティを「心の拠り所」と捉えている傾向が多いです。

これまで色々な種類のコミュニティへ入ったり、設計したりしてきた立場である私の所感としては、コミュニティの本質的価値は価値観の統合を生み出す手段となりえることにあると思っており、それには大きく”機能的”な価値と”居場所的”な価値の2軸で捉える必要があると考えています。

今回は「コミュニティ」の価値を①機能的価値②居場所的価値に分けることで、それぞれの役割をより深く考え、再現性のある形にまとめていきたいと思います。

それではいってみましょう!

①機能的価値


機能的価値は大きく個人が求めている"物質的欲求"を満たす要素であり、「コンテンツ」と「プラットフォーム」の2つの要素があります。

要素① コンテンツ

コンテンツはコミュニティ内で提供するイベントやメディアなどを指し、物質的欲求を満たす以外にも"人を熱狂させるきっかけ"として機能します。

たとえばイベントでは「新しい出会い」、メディアでは「最新技術の情報」などなどが挙げられますが、コミュニティの形によって提供すべき重要なコンテンツは変化するでしょう。

ただ1つ言えることは、良いコミュニティにはそれぞれ満足度の高い価値を提供し続ける良質なコンテンツが備わっているという共通点があります。

そのためコミュニティを長く盛り上げ続けるためにはメンバーのニーズを正しく捉えた上で、期待値を大きく超えるコンテンツを企画し、発信し続ける必要があります。

要素② プラットフォーム

プラットフォームはコンテンツを「伝達する手段」と捉えていただければと思います。例えるなら「検索エンジン」のようなもの。

いくら良質なコンテンツが備わっていたとしても、それらのコンテンツの価値や機能がメンバーに正しく伝わなけば意味がありません。

シンプルかつわかりやすく、伝えたい情報をできるだけ認識の差異を与えずに正しく伝えられるプラットフォームを設計し、運用する必要があります。

②居場所的価値


居場所的価値は個人が持つ"精神的欲求"を満たす要素であり、「存在肯定」と「役割付与」の2つの要素があります。

前提として把握すべきは、この精神的欲求は心の奥底に眠っている本質欲求のため、非常に顕在化しずらいものとなります。

メンバーは自分自身で「自分が本当に求めているニーズ」を把握しきれていることは少ないため、アンケートなどを行うと物質的欲求に通ずる回答を行いがちになりますが、実は「存在」と「役割」を手に入れられれば、物質的欲求を必要としなくなる例も多いのです。

つまりこの居場所的価値を正しく提供するためには、ある意味メンバーの声を無視することも視野にいれて運営を心掛けていく必要があります。

それでは上記を前提に「存在肯定」と「役割付与」の2つの要素について深ぼっていきましょう。

要素① 存在肯定

存在肯定は「あなたはあなたのままでいい」ということをメンバーに認識してもらう居場所として機能することで達成されます。

特に「周りの目を気にしながら生きる」という風潮が強い日本社会ではこの潜在ニーズは非常に強いです。
ただ、それを本人自身が「潜在ニーズ」として認識している人はそう多くはありません。
そのためアンケートや1on1をしてもこのようなニーズは表面化しにくい範囲になります。

そのため、コミュニティを運営する側はその人らしさを承認する文化を意図的にかつ、自然的につくっていくことが非常に大切になります。
文化の浸透には正直時間がかかりますし、これにはある種の「しつこさ」が必要です。

メンバーの行動や感情を細かくチェックしながら、声掛けや対話を行いましょう。

また、大前提として運営側が「あなたはあなたのままでいい」という言葉を本心から伝えることが大切になります。
(建前だと「なんかうさんくさい」と心を閉ざします)

何度も何度も伝え続けることによって、そのメンバーが背負っている分厚い殻が少しずつ剥がれ始め、いつしか「自分はここにいていいんだ」と感じてくれるように変容していくのです。

要素② 役割付与

役割付与は「あなたの存在は他の誰かや社会の役にたっている」ということを各メンバーに実感してもらう居場所として機能することで達成されます。

※役割の定義については下記noteをご参照ください
https://note.com/takashi116/n/nc31934023363

役割は非常に格差が生まれやすい要素です。
例えばスポーツをなんでも器用にこなすA君と、何をやっても下手くそなB君では、スポーツにおいてこなせる役割に大きな差が出ます。

特に思春期の時期においては、「役割に対する器用さ」がスクールカーストを生み出している要素もあるため、役割に対する欲求が大きくなっていきます。

人は誰しも集団の役割を担いたいと願っている。

これを前提に置いた際、どうしても要素①存在の肯定だけでは要素として足りません。
コミュニティメンバーの1人1人の個性を意識した役割の箱を用意し、適切に供給していく必要があります。

役割の代表例は会社における職種です。

しかし、この役割には向き不向きが大きく発生するため、人によっては既存の職種ではうまく才能を発揮できない人も多いことでしょう。

気付いたころには「自分は社会から乖離した存在なんだ」と自分を追い込み、社会復帰が難しくなってしまう例もあります。

コミュニティでは上記と同じようならことがあってはなりません。

前提としてコミュニティメンバーの存在そのものを肯定したうえで、メンバーに適切な役割を付与し、「誰かの役に立てている」という実感を抱いてもらうことが非常に大切になります。

これらの基礎となるものは徹底した1on1、つまり運営側がメンバー1人1人をちゃんと深く理解することです。

メンバーを理解することが長期的に、「存在肯定」、適切な「役割付与」へと繋がり、結果的にコミュニティ全体の「居場所的価値」が最適化されることになります。


まとめ


最後にまとめです。
これまで「機能的価値」と「居場所的価値」を分けて考えていましたが、それぞれを関係図にすると下記の図のようになります。

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まず土台として必須となる要素は機能的価値です。
いくら居場所の設計を深く考えたとしても、提供するコンテンツがメンバーの期待に沿えないようであれば、メンバーにとってコミュニティに入る意味を見出せず、結果的に良さを知る前に離脱してしまいます。

ただ、本当の意味でコミュニティを成功させるためには機能的価値の先にある居場所的価値を機能させることが大切になります。

一定の強者を除き、ほとんどの人が自分という存在を肯定し、その存在が誰かや社会の役に立っていると実感したいという欲求を持っています。そのため居場所的価値を無視してコミュニティの成功は起こりえません。

ちなみにこれらは順番が大切で、

①プラットフォーム経由で何ができるかを知ってもらう
②コンテンツ経由でメンバーの期待に答え、信頼を得る
③存在を肯定し、居場所の実感を持ってもらう
④役割を付与し、所属する意義を持ってもらう

運営側は必ず上記の順序を意識しましょう。
特に③④に関しては非常にデリケートなので、メンバーとの対話を重ねながら慎重に判断することが大切です。

また、これらの2つの価値は対局の位置にあるため、両者の概念を統合させるのは非常に難しいですが、運営者は「機能的価値」と「居場所的価値」を正しく理解し、バランスを意識しながら設計していくことが大切になります。

【補足】
コミュニティそれぞれで重視しがちな傾向を「機能的価値」「居場所的価値」に分けて下記表にまとめてみました。

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基本的には大きく「doing派」と「being派」の2種類に別れますが、それぞれ得意分野がクッキリ分断します。

being派は居場所的価値(特に存在肯定)を得意としますが、機能的価値を意識することを苦手とする傾向がある一方で、doing派はコンテンツを設計するのが得意な一方、存在肯定を意識することを苦手(というより放置)とする傾向があります。

前者は人は集まりやすいが抽象的で前進が生まれない「現実逃避コミュニティ」となり、後者は繋がりが生まれない「無機質コミュニティ」となります。

ただ両者のデメリットが必ずしも悪いわけではなく、現実逃避だから居場所として機能するし、無機質だからこそ良いコンテンツとして機能するという側面もあります。

それぞれのコミュニティが「being派」か「doing派」どちら側なのか認識し、弱点を埋め合わせながら設計していくのが良いでしょう。

色々ご紹介させて頂きましたが、本記事はあくまで私の経験からの主観が大きく入っているので、あくまで参考程度に抑えながら、自分たちでしかできないオリジナルなコミュニティへ挑戦する人達が1人でも増えてくれたら嬉しいなと思います!















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