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折り紙

 わりと、折り紙が好きだ。

 特別器用というわけでもないのだが、なんとなく指先を使った作業が好きで…気がつくと何かを折っている。

 100円ショップに行った時は、だいたい文具コーナーに寄って…かわいい模様の折り紙を探すのがちょっとした楽しみになっているし、街中で手渡されて持ち帰る羽目になったチラシはきっちりゴミ入れを折って有効活用しているし、実家の新聞紙を廃品回収に出す時は朝刊をひとつ拝借し…かぶとや紙鉄砲、帽子にささ舟等のおおぶりな作品を制作して喜んでいる。

 食べた飴の包み紙を対角線で二つに折ってきっちり三角形になった時はちょっとテンションがあがって…はりきって鶴を作って羽ばたかせる程度に、紙を折って何かに変化させる事にとりつかれているのだ。

 折り紙の習慣が…この身にしみこんでいるというか、なんと言うか。

 子供の頃、図書館で折り紙の本を借りて、チラシを真四角に切ってはいろいろと折っていた事を…思い出す。

 うまく折れずにもたもたしていると、几帳面な祖母がやってきて…不器用だのしみったれてるだのイライラするだのうるさい事をわざわざ言いに来たのだなあ。
 かっこよく折れた龍を飾って置こうものなら、学校から帰って来る頃にはしっかり全部捨てられていて…ついでに机の中のまだ折ってない折り紙まで処分される羽目になってさ。いつしか、簡単に完成する思い入れの発生しないやつばかり作るようになったんだよ……。

 おそらく、思うように作品を折れないというフラストレーションがたんまりと溜まっていたから、チャンスを見つけては何でもかんでも折るようになったのだ。そして、それがすっかり身に付いてしまって…もう今更手放せなくなってしまっているに違いない。
 おそらく私は…、シワシワのおばあちゃんになってもちまちまと何かを折り続けるのだろう。

 ことあるごとにいろいろ折っている私を見ていたからか、いつの間にか息子も折り紙を嗜むようになった。喜び勇んで新作に手を出しては完成させて…私のパソコン周りに飾って下さるのだ。

 娘は見て触って遊んで大喜びするタイプだったので、ずいぶんいろんなものを作らされたものだけれども…姉弟でこうも趣味嗜好性格気質が違うのかと驚く。

 わりと器用でコツコツと作業することを厭わない息子は、私がかつて諦めたような大ものにチャレンジし、途中で投げ出すことなく地道に真面目に取り組み、実に見事な作品を生み出している。
 作って達成感、遊んで大満足の色とりどりの完成品が、制作途中の折り紙たちが…部屋の端っこにある衣装ケースにみっちり詰まって…、いや入り切らずにもりもりと積み重ねられているのだ。

 くす玉、ボール、へび、サイコロ……、はっきり言って、私なんかよりもめちゃめちゃ才能がある、センスイイ、飾りたくなる、崇めたくなる!
 これはもう一種の芸術作品…職人によって仕上げられた逸品だ。すごいなあ、プロになれるんじゃないの。

 現に、ホワイトデーのお返しにほしいだの、誕生日プレゼントにほしいだの、是非とも作ってねだの、作り方を教えてねだの次は私に作ってねだのと…リクエストが後から後からね?!何なんだ、この人気職人の順番待ちみたいな現象は……。

「赤が足りない…」

 おぅふ、新学期早々大きなくす玉制作を承った師匠が、材料不足を嘆いていらっしゃるぞ。

「買いに行くかい?」

 作りたい気持ちは、ぜひとも応援してあげたいところだ。作るからには、中途半端に納得するよりも大満足で仕事を終えていただきたい。

「うん」
「じゃあ今すぐ行こう、さあ行こう!」

 ついでに晩御飯の買い物をしても良いな、荷物運びを手伝ってもらおう。ああそうだお菓子の買い置きもないんだった、ちょっとお高いティッシュボックスも欲しい!

 大きめサイズのエコバックを二つ用意した私は、散らかり放題のテーブルをそのままにして……息子と一緒に玄関に向かったのだった。

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