ホワイトクリスマス
……本日は、クリスマスイブ。
年に一度の、わりとかなり有名なイベント日。
クリスマスといえば…、ケーキ、チキン、プレゼント、サンタコス、シャンパン、ラッピングなど、色んなアイテム、シーンが思い浮ぶ。
友達とのパーティー、職場でのイベント運営、家族との団らん、特別番組、その他、もろもろ。
楽しかったり、騒がしかったり、失敗したり、誤魔化したり、頑張ったり、その他、もろもろ。
数多くの出来事の中で、毎年必ず私が思い出すのは…初めてのホワイトクリスマスのワンシーンだ。
―――あ、雪降ってきた!!
キンと冷え込むクリスマスイブ。
少し狭い車の中から見た、ライトに照らされる道路。
ちらちらと横切る、白くて小さな、ほこりのような。
風に乗って舞う、ふわふわとした、妖精のような。
上に、下に、右に、左に。
不規則に、前方を行く、氷の結晶。
黒いアスファルトに映える、白い雪。
眩しいライトが照らす、白い雪。
―――うわあ、ホワイトクリスマスだ!
―――クリスマスに雪なんてはじめて見たね!!
私が住んでいる地域は、ほとんど雪が降らない。
雪が積もると景色が変わって…テンションが上がってしまうくらい、なじみがない。
ただでさえ印象深くなってしまう降雪に、特別なイベントが重なった日の事は、今でもしっかり覚えている。
―――きれいだねえ!!やっぱ雪はいいねえ、特別感がある!!
―――見て見て、雪が踊ってる!!
食いしん坊の彼氏と一緒にクリスマスケーキを探して、町内のスーパーをはしごしていた時だった。
どの道で見たとか、車の中でどんな音楽が流れていたとか、どんな服装をしていたとか、まったく覚えていないのに…あの日の会話と雪の躍動は今も鮮明に私の中に残っている。
あの日の私は、何度もクリスマスをその人と一緒に過ごすようになることを知らない。
雪が降るたびに、何度もホワイトクリスマスを思い出して話をすることを知らない。
クリスマスが近づくたびに、今年はあの時みたいに雪が降るかなとワクワクする事を知らない。
……私は、何度も何度もホワイトクリスマスを思い出してきたことを知っている。
近年稀に見る、大雪になった…クリスマスイブ。
こんなに雪が積もったクリスマスは、初めてだ。
雪が降る朝に、旦那と娘を送り出し。
止まない雪を全身に積もらせながら、玄関前の雪かきをして。
息子と一緒に、数えきれないくらい雪だるまを作って。
……今日の出来事を、これから何度も思い出すであろうと予感する。
また一つ、大切な思い出ができたことが、地味に……うれしい。
今日の出来事が、これからどれほど思い出されていくのか……私は知らない。
このところ随分忘れっぽくなったから……あっという間に記憶から昇華してしまうかもしれない。
……忘れる前に、写真に残しておこう。
「いつケーキ買いに行く?」
真っ赤なほっぺをした息子が、ニコニコしながらこちらを向く。
……いいシャッターチャンスだ、すかさず写真を一枚撮らせていただく。
「よし!!じゃあ今から行きましょう!!雪スゴイから歩きで買いに行くよ!!たぶんね、お父さんはチョコ買ってくるから生クリの買お!!あとお姉ちゃんがチキン買ってくるってさっきLINEがー!!!」
きっと雪道を歩いて両手にケーキを下げて帰ったことも、のちのち語られて行くにちがいない。
……しみじみと、幸せを噛みしめながら出かけた私であったが。
雪による遅延で、クリスマスケーキがほとんど売られていないという悲劇を……まだ、知らなかったのであった……。
↓【小説家になろう】で毎日短編小説作品(新作)を投稿しています↓ https://mypage.syosetu.com/874484/ ↓【note】で毎日自作品の紹介を投稿しています↓ https://note.com/takasaba/