のんたまるとミカちゃん

　のんたまるはそらいろのくまさん
　のんたまるはおおきめのくまさん
　のんたまるはふわふわのくまさん

　のんたまるはミカちゃんがうまれて一週間たった日におうちにやってきた

　のんたまるはミカちゃんとおんなじ体重のくまさん
　のんたまるはミカちゃんよりおっきなくまさん

　いつもいっしょにねんねした
　いつもいっしょにゆめをみた

　はじめておててでつかんだのはのんたまるの足
　はじめてキックしたのはのんたまるのおなか
　はじめてねがえりしたのはのんたまるの前
　はじめてたっちしたのはのんたまるの真横
　はじめてキスしたのはのんたまるのほっぺ

　のんたまるはミカちゃんのたいせつなおともだち

　のんたまるはミカちゃんといつもいっしょ

　のんたまるにおはようを言って
　のんたまるにいってきますを言って
　のんたまるにただいまを言って
　のんたまるにおやすみを言って

　いつもぎゅっとだきしめた
　いつも心がおちついた

　うれしいときはえがおでおはなしした
　かなしいときはなきながらおはなしした
　おこったときはほっぺをふくらませておはなしした
　くやしいときはへのじぐちになっておはなしした
　はずかしいときはまっかになっておはなしした

　のんたまるはやさしい目でミカちゃんを見つめていた
　のんたまるはなにも言わずにミカちゃんを見つめていた
　のんたまるはベッドの上でミカちゃんを見つめていた
　のんたまるはポンポンされながらミカちゃんを見つめていた
　のんたまるはぎゅっとされながらミカちゃんを見つめていた

　のんたまるはミカちゃんのおはなしを聞いてくれた
　のんたまるはミカちゃんのいちばんのおともだち
　のんたまるはミカちゃんのいちばんたいせつなたからもの
　のんたまるはミカちゃんのいちばんだいすきなぬいぐるみのくまさん

　いつのまにか、のんたまるはちいさくなった
　いつのまにか、のんたまるはぺちゃんこになった
　いつのまにか、のんたまるはぼろぼろになった

　ある日のんたまるはお母さんにさらわれた

　じゃぶじゃぶ洗われた、のんたまる
　ぐるぐるまわった、のんたまる
　ぎゅうぎゅうしぼられた、のんたまる

　のんたまるはがまんした
　のんたまるはこらえた
　のんたまるはがんばった

　のんたまるはまけた

　のんたまるはせんたくきのなかで、バラバラになった
　のんたまるだったかけらが、せんたくきの中でくるくるまわった

　ミカちゃんは、いなくなったのんたまるを探した
　ミカちゃんは、いなくなったのんたまるのかけらを拾った
　ミカちゃんは、いなくなったのんたまるをおもって泣いた

　のんたまるのいないミカちゃんのおへや
　のんたまるがいないミカちゃんのまいにち

　ミカちゃんはのんたまるのかけらでクッションを作った
　ミカちゃんはのんたまるのかけらでおまもりを作った
　ミカちゃんはのんたまるのかけらを持ち歩くようになった

　のんたまるはくまさんじゃなくなったけど、いつでもミカちゃんと一緒

　ミカちゃんのお出かけについていった
　ミカちゃんの引っ越しについていった
　ミカちゃんのお嫁入りについていった
　ミカちゃんの子どもについていった
　ミカちゃんの孫についていった
　ミカちゃんの入院についていった

　のんたまるはミカちゃんの大切なおまもり
　のんたまるはミカちゃんの大切なおともだち
　のんたまるはミカちゃんの大切なナイト

　のんたまるはミカちゃんのそばにずっといた
　のんたまるはミカちゃんをみまもり続けた

　ミカちゃんがおはなしできなくなっても、のんたまるはずっと一緒にいた
　ミカちゃんがずっと眠り続けていても、のんたまるは一緒にいた

　のんたまるはしゃべれないけど、ミカちゃんにいっぱいおはなしした
　のんたまるはしゃべれないけど、ミカちゃんをいっぱいはげました
　のんたまるはしゃべれないけど、みかちゃんといっぱいしあわせなじかんをすごした

　ミカちゃんが旅立つ時、のんたまるもいっしょに旅立った

　のんたまるはミカちゃんといっしょにそらにのぼった
　のんたまるはミカちゃんといっしょにそらにとけた

　のんたまるはそらいろのくまさん
　のんたまるはそらにまじったくまさん

　のんたまるはたまにあおいそらにかおをだす
　まっしろふわふわ、のんたまるのかけら

　ミカちゃんがいっしょうけんめいあつめた、のんたまるのかけら
　あおぞらいっぱいにひろがった、のんたまるのかけら
　しあわせがたくさんしみこんだ、のんたまるのかけら

　のんたまるのかけらがそらにとけてゆく

　のんたまるのかけらがそらにとけて、あおいあおいそらがひろがった

　あおいあおいそらのむこうで、のんたまるとミカちゃんのわらいごえがした