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くっころ神に任命された俺は、今日も高飛車女子を恥ずかし…めるわけないじゃん!!怖いじゃん!!みんな仲良くすれば、いいじゃん!!!【第二話】

「…助けていただき、感謝する…だがな、その見た目では!!!恐ろしさがだな!!!」
「もー、ごめんて!!ちゃんと直したじゃん、今は普通でしょ!!」

四回ほど見た目で気絶させてしまった俺は、ようやく自分の肉体を補修してだな。こうして話を聞くことができたというわけだ。

「まったくもって遺憾である!!そもそも、神であるというならば、なぜもっと毅然とした態度を貫かぬのか!!!貴殿は凄まじく常識を逸脱しておる!!いいか、神というのはだな…!!!」

…地味にめっちゃ怖いんですけど。

下僕化?冗談でしょ、こんな怖い人、いらないよ…。よし、黙っておこう、そしたらきっと大丈夫なはず、願わなければいけるはず…。

助けた姉ちゃんは、実にこう、真面目一色、堅物一直線、お笑いとは侮辱の化身であるみたいな考え方でさあ、なんていうか、うん、俺、やらかしちゃったかもしんない。

もっとさ、か弱くって、人のいう事うんうん言って聞いてくれる、ぬるい感じの、ちょっと頭の足りない…小バカにできるくらいの人でないとさ、気後れしちゃうっていうかさあ、一言も言いたいこと言えないっていうか……。

「ちょっと!!!この人神様なんですよ?もうちょっと敬ってくださいよ!!も~、失礼なのはあんたの方じゃないか!!助けてもらっといて何その態度!あんた初めての救済者なんだよ?!」
「この畜生(チクショウ)め!!!クソを垂れながら儂に説教するでない!!…ちょ!!飛んで来たではないかっ!!尾っぽを…振り回すのはやめんかっ!!ええい、あっち行け!!しっ!しっ!!!」

うん、牛はもうちょっといろいろと…遠慮してほしいんだけどね?
姉ちゃんはもうちょっといろいろと…怒りを収めて欲しいんだけどね?

牛に突撃する姉ちゃんは実に血気盛んだ。しまったなあ、血、補充するんじゃなかった。流しっぱなしの方が良かったのかも…。

「あ!!!まだいたぞ!!!」

「ようし!!囲め!!」

なんだ、急に騒がしくなってきたぞ。やけに弱っちそうな槍持った奴らがひいふうみ…こっちにぞろぞろやってくる。後ろの方には、さっき逃げ出した三人組がいる、誰かと話をしているようだ。

「っ!!!愚かなやり取りなどしているから!!!フルグラン卿の追手が来てしまったではないか!!早々に立ち去っていればこんなことには!!!」

なんだ、やけに説明口調だな、便利なやつだ。追手ねえ、どうだろう、話し合いできるかな?ちょっと様子を見たいところだけど。ざわついている皆さんの言葉を拾ってみるか。

「…見ろ、見事な牛だ!丸焼きにして、垂れる脂で乾杯できるぞ!!」
「無駄な肉が多そうだが、脂は期待できそうだな!!」
「たしかに廃棄部分が多いな、明日のごみ処理、きつそー!でも脂、飲みたーい!!」

「ちょ?!僕食べる気でいるよあいつら!!っていうか、焼いて肉食べないつもり?!も~!!!なんて失敬な!!!こんなに霜降りのいいお肉なのに!!!」

牛は食べられたいのか、食べられたくないのかどっちなんだ。

「フフフ…風のふるさとギルドSSランクのフルイタチさん…ですね?どうも、初めまして?フルグラン=グンと申します…ご存じ、でしたかね?・・・ご存じ、ですよねえ?」
「くっ…!!この…偽善者め!!よくもぬけぬけと…!!!

なんだこの片メガネのいけ好かないおっさんは。へっぽこどもを後ろに従え、ずずずいっと、一歩前にせり出してきたけど。あーあー、姉ちゃんが腰のつま楊枝みたいな剣を抜いちゃったぞ、まさかこれ一発触発状態ってやつ?

「その牛は…献上品ととらえて、よろしいのかな?…実に大振りで、無駄肉の多い牛だが…脂ぐらいなら、なめて差し上げても、よろしいですよ?」

「ムッキ―ぶも~!!!!!!何あのクソじじい!!神さま!!!あいつやっちゃおう、殺して埋めよ!!!ほら!!ここに穴も掘ってあるし!!!肥料もばっちり埋め込んである、ペンペン草くらいなら生えてくるから!!!」

鼻息荒いな。ちょっと離れた位置にいるのに、メッチャ生あったかい風がぶち当たるんだけど。闘牛にジョブチェンジでもしたらいいんじゃないの。

「あなた、おかしな能力を持っているそうですね?どうです、私の配下になりませんか。働き次第では、忠誠次第では、望みの物を与えますよ…?」

「え、なにくれんの。」

神たる俺に何を差し出してくれるというのか。正直興味津々だ。常日頃、牛の表面と藁、栄養豊富な肥料のもとしか見てない俺はだな、はっきり言って娯楽に飢えている!!!

「そうですねえ、名誉、地位、金、快楽…お望みとあれば、・・・食用の家畜もね?」

「家畜?」

「ッ!!聞くんじゃない!!!こいつは!!こいつはっ!!!!!!!」

どうした、やけに姉ちゃんが興奮しているぞ。腹でも減ってんのかな。それならそうと言ってくれれば、藁ぐらい噛ませてあげたのに。

「そこでクソを垂れているような野蛮なものではなく、知恵と教養を持つ…フェアリーを、何人か。ええ、散々お楽しみいただいた後に、生き胆を喰らう事ができますので、ね…?」

「こいつは!!!!わしの妹を喰らった…悪魔なんだ!!!!!!!」

おうふ。

思ったよりエグイの、キタ――(゜∀゜;)――!

「ま、断ったら、メギツネともども…海の、藻屑、ですけどね?」

なんだ、海近いのか、いいなあ、俺は生前一度も海に行くことなく死んじまったからさあ、実はけっこうかなり相当憧れがあってだな…。

「ふざけるなあああああああああああ!!!お前など!!!わしが!!!成敗してくれるわ!!!!!!!!!!」

「…ざんねんです、ならば、仕方ありませんね…おまえたち!!!やっておしまい!!!!!」

ちょ!!!
俺まだ返事してないけど?!

なんで勝手に話ススメんの、人の話…聞かんかい!
人に話…させんかい!!!

「ウルトラストーム!」
「大切断(ビックカッティングオフ)!!!」

おうふ。

恥ずかしい魔法、必殺技、キタ――(゜∀゜;)――!

ずば、ずバババ!!!
ざんっ、ずっしゅずっしゅ!!
ごごごー、ブゥわあああああ!!!

ひゅんひゅん、びっちゃびっちゃ!!
どちゃ、ぶちゃ、ぐちゃ…!!!

スパンスパンと切り刻まれる俺!!!
刻まれていく端から、竜巻に巻き込まれて四方八方に飛び散る俺!!!
いろんな汁まき散らしながらパーツごとに着地する俺!!!

「何このカオス。ちょーウケるんですけど。」
「ちょ!!!小指の先ひとかけらでしゃべるんじゃない!!真面目にやらんか!!!!!」

姉ちゃんの胸元に入り込んだパーツでぼそっと呟いたら、速攻怒鳴られたじゃないか。

・・・もうさ、姉ちゃんは怖いわ、人の話聞かない奴らばっかだわ、牛焼こうと必死になってるジジイいるわでさあ。

「皆の者、取り押さ、え、ろ・・・?」

「は、はー・・・?」

・・・めんどくさくなっちゃったじゃん。

ばた。

ばた。

ばたばた。

ばた、ばたばたばたばたばた・・・!!!

「・・・はい?」

いきなり倒れ込む偉そうなやつや三人組、その他もろもろを見て、呆然とする姉ちゃんが、一人。

「てへ!!ころしちゃった!!!」

抱える頭も手もない、右手の小指の先っちょの俺が、ここに、ひとかけら。

「やったー!!ようやく神様が本気出した―!!も~、この調子で頑張ってね!!!よーし、僕はりきって全部埋めちゃうぞ、ふふ、フフフ…!!!」

世界´の炎では微塵も燃えることのできなかった、泥んこまみれのつやつやした牛が、死体を次々に埋め、埋め、埋め、埋め…。

「・・・ちょ!!!小指の先ひとかけらで壊滅させるんじゃない!!真面目にやれと、あれほど、あれほど―!!アアア、良かった、よかったよーー!!!」

ねえ、何で泣きながら怒ってんの、これって鬼の目にも涙ってやつ?

神様になっても婦女子の考えることはよくわかんないなあ、もう…。

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