見出し画像

四葉のクローバー

   毎朝ウォーキングに出かけている、私と息子。

 朝一、公園ですれ違う人たちとずいぶん顔なじみになり、時折言葉を交わす。

「おはよう!今日も頑張ってるね!」

「ぼく!今日も朝早いのにえらいね!」

「おはようございます。」

 小学一年生の息子はぷくぷくとしていて、絶賛減量中だったりする。小さな子供が朝五時半から一生懸命ウォーキングをしているので、よく声をかけていただけるのだ。

「おお!ちょっとやせてきたな!すごいぞ!!」

「カッコよくなってきたねえ、モテるよー!」

「ありがとう。」

 息子はおじいちゃんおばあちゃんたちの、ちょっとしたアイドルだったりするのだなあ。


 今日も今日とて、てくてく歩いていると、顔なじみのおじいちゃんが前からやってきた。

「おはよう!」

「おはようございます。」

 初めのころは恥ずかしがって挨拶もできなかったのに、今は堂々と挨拶を返す、息子。

「ぼくがんばってるから、いいことおしえてあげる。こっちおいで!」

 なにやら横道にずれることになった。

 ついていくと、子供遊具のコーナーの一角。

 ゆらゆら揺れるシーソーの下が、雑草でぼうぼうなんだけど…。

「ぼく!! ここ見てごらん! ほら!! 四葉のクローバー!」

 シーソーの下を良く見てみると…わあ!! これ全部四葉のクローバーだ!!!

「うわぁあああ!! すごい!! はじめてみた!」

 息子大喜びである!! いや、私も!!! すごい!!群生してる!!

「すごいですね!! 教えてくれてありがとう!!」

「イヤイヤ、喜んでもらえてよかったよ。じゃあね!」

 大喜びで一本づつ摘ませてもらって、家に帰った。


 その日、息子は学校で自慢をしたようだ。

 学校から帰ったあと、お友達を連れてクローバーをいただきに行った。

「いいですか!!根こそぎ採ってはなりません!みんなのクローバーだからね!一人二本まで。」

「「「「はーい!」」」」

 みんなで、大切に摘ませていただいた。

 大喜びで、みんな家に帰っていった。


 次の日から、梅雨ということもあり、雨が続いて公園にいけなくなった。

 学校では、クローバーの話で持ちきりだった模様。

 晴れたらみんなでいこうねと話をしたらしい。


 ようやく晴れた日、6人の子供たちを引き連れて、公園に向かった。

 意気揚々と出かけたのだが。

「ああああ!!!ない!!!ぜんぜんない!!!」

 なんと、シーソーの下のクローバーが、ひとつもない!!!

 根こそぎ、ない。

 土が見えている。

 よく見ると、遊具コーナーがすっきりしている。

 雑草をすべて刈ったみたい、だった。

 子供たちの落胆振りといったら、もう。

 気の毒だけど、仕方がない。

 また生えて来るよと、慰めて帰宅した。


 あれから五年が経つけれど、いまだ四葉のクローバーの群生は、生えてこない。

 公園で四葉を見かけたことすらない。

 それどころか、クローバーの姿さえ見かけることがなくなってしまった。


 ……あの群生は幻だったのか。

 あんなに幸せがあふれていた公園なのに。


 今はシーソーすらなくなってしまった。

 さらに、公園の縮小まで決まってしまったという……。


 ……四葉のクローバーを根こそぎ刈り取ったから?

 イヤイヤ……恐ろしい話です。


 あの日積んだ四葉のクローバーのラミネートカードがあるのだけれど。

 絶対に、大切にしようと心に決めている。


 ……むしろ。


 なくしたらやばそうなので、きっちりデスクマットに挟んで保管している。


今は自分で見つけられなくても販売しているので、ちょっぴりうれしいという…。


↓【小説家になろう】で毎日短編小説作品(新作)を投稿しています↓ https://mypage.syosetu.com/874484/ ↓【note】で毎日自作品の紹介を投稿しています↓ https://note.com/takasaba/