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ぼたもち

小豆と砂糖を、ぐつぐつ…ぐつぐつ
柔らかくなったら、丁寧につぶしていく

もち米を炊いて、すりこぎ棒で…もっちゅ、もっちゅ
まとまってきたら、つくねて丸めていく

両手に塩水をつけて、あたたかい半殺しのもち米を…にぎ、にぎ
全部丸めたら、あんこでつつんでいく

もち米が見えないように、そっと…ぺた、ぺた
完成したものは、お重箱に詰めていく
ずらりと並ぶぼたもち…うん、全部すごく美味しそう

我が家では、春も夏も秋も冬も…季節を問わず、ぼたもちを作る

季節によって、呼び方が変わるとか、なんとか…
おはぎ、ぼたもち、夜船、北窓…風流なこと

うちでは、もち米をあんなどで包んだものはすべて…ぼたもちと呼んでいる
こしあんだろうが、粒あんだろうが、キナコがまぶしてあろうが、丸っこかろうが、小ぶりだろうが、大ぶりだろうが、全部ぼたもちという名称をつかっている

うちのぼたもちは、ちょっと柔らかめに炊いたもち米を使うのが特徴だ
柔らかめに炊くことで、素早く餅っぽさを出すことができるから
うちのぼたもちは、ちょっと塩が効いているのが特徴だ
潰したもち米を塩水でにぎって、素早く丸めるから

我が家には、先祖代々伝わる…ぼたもちのレシピがある
いつ頃から引き継がれているのかは定かではないが…確かに伝わっている、確かなものだ

昔は、もち米を蒸し器で蒸していたけれど…祖母の代で炊飯器を使うようになった
昔は、塩を入れてもち米を炊いていたけれど…母の代で塩水でもち米を丸めるようになった

先祖代々伝わるぼたもちは、時代時代で新しい発想を受け入れながら…変わらぬ美味しさのまま、受け継がれている

……今年も、お墓に持って行かなければね
ご先祖様たちに、ちゃんと皆さんの愛した味が伝わって…現代に残っていますよと、報告しなければ

ずいぶん風変りになっているから、驚かれるかも…知れないけれど

つぶあんにキナコにずんだ、桜餅風味、イモあん、フリーズドライイチゴフレークまぶし、カレー入りに、甘納豆ミックス、ピザ風味…
正直、ちょっと…私の代でやらかしてしまった感は否めない

……どうか、ご先祖様たちに、怒られませんように

私は、少しだけ祈るような気持ちで…お重箱のふたを閉めた

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