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たからうたストーリー「君は友達」

神戸学院大学現代社会学部の岡崎ゼミでは、地域のたからもの、その出会い、語り、想いを音楽にする〈たからうたプロジェクト〉に取り組んでいます。以下は、チームBlue Springの上西君による「君は友達」の楽曲制作プロセスについての記事です。

アオハルが躍動


私たちのチームBlue Springは、神河町のヨーデルの森を取材し、「君は友達」という楽曲を制作した。では、「君は友達」がどのようにしてできたのかを紹介しよう。

まずは事前調査、そして現地取材である。Blue Springのメンバー7名は、パンフレットやインターネットから得た情報を共有し、インタビューで何を聞くかを話し合った。これらの準備のうえで、2023年5月13日、神﨑農村公園 ヨーデルの森を訪れた。


風がきれい


そこは花に囲まれた自然豊かな公園だった。開放感が素晴らしかった。たくさんの動物たち。餌やりをしたり、直接触れ合ったりすることもできる。
「風がきれい」と思った。動物たちの匂いもするが、いやな感じがしない。なぜだろうか。きっと空気がきれいだからだ。神河町は名水で知られる。4月に訪れた越知川の水もきれいだった。

公園一帯を撮影しつつ散策した後、午後のドッグショーを見学した。目の前で動物が躍動する姿は圧巻だった。犬たちは、トレーナーの指示に従って、さまざまな演技をする。牧羊犬として、賢く羊を束ねる。ポールをくねくね避けながら全力疾走で駆け抜ける。ジャンプして、輪をくぐりぬける。

難しいのが投げられたフリスビーをキャッチするという演技だった。この日は風が強かった。それでフリスビーが思わぬ方向に流されて、キャッチに失敗することもあった。うまく息が合わないこともある。でも、犬とトレーナーが一生懸命に息を合わそうとしている姿が印象的だった。うまく成功するとトレーナーに撫でてもらって満足げな様子を見せた。それは一仕事を終えると友達どうしに戻るような感じがした。トレーナーと犬は主従関係にありながらも、どこか友達どうしでもあるんじゃないかという気がした。

ドッグショーの後、トレーナーの藤井舞さん(株式会社アニマルエスコートサービス)にインタビューをした。しっかりとした口調で的確に答えてくださり、ヨーデルの森に対する思いを語ってくださった。その後、突然の依頼になってしまったが、支配人の細岡さんにもインタビューすることができた。

実習から戻ると、私たちは、歌詞のアイデアを出すために、ヨーデルの森で感じたことをホワイトボードに書き出すことにした。「美しい自然とともに生きる動物たち」「愛し愛されともに生きる」「すべての笑顔」。いざ言葉にしようとすると、なんだか普通の表現になってしまう。

そこで、シンガーソングライターのアヤヲさん、岡崎先生と一緒に、現地で実際に感じたことをもう一度話し合った。「風がきれい」と思ったことを話すと、この言葉はおもしろいから歌詞に入れようということになった。ドッグショーでフリスビーのキャッチに成功した時だけでなく、失敗したときのことがリアルで印象に残っているという意見が出た。息を合わせようと頑張っていたね、息が合わないこともあるというのを歌詞に入れてみようということになった。

開放感最高やん

「開放感最高じゃん」という言葉のアイデアがあったけれども、そんな関東弁を私たちは使わないよね、関西弁なら「開放感最高やん」だね、という意見が出た。


全体としては、ドッグショーの疾走感や躍動感、元気な感じ。私たちのチーム名Blue Springが示す「青春感」を表現したいねという意見にまとまった。「高揚」や「躍動」という言葉のアイデアが出てきた。

こうした話し合いをふまえて、私たちの言葉のアイデアを活かしながら、アヤヲさんがひとつの歌詞にまとめることになった。

アヤヲさんはいう。「ドックショーが今回の取材のメインだったので、犬が友達というテーマで歌詞を作りました。『風がキレイ』や、『高揚』『躍動』『開放感最高やん』などのキーワードを取り入れました。言葉はシンプルなものばかりですが、一語一句に意味を込めて作っています」。こうして「君は友達」の歌詞が完成した。

自分たちの歌と演奏を録音

話し合いでは、曲調は、ゆず「AOZORA」や「ヒカレ」、RADWINPS「すずめの涙」みたいな感じ、エモい感じ、明るい雰囲気、青春や爽快感のあるサウンドが良いという意見で出た。私たちのイメージをミュージシャンの山田明義さんに伝えて作曲してもらった。山田さんは、「空や自然、犬など、明るく軽快な情景を曲に入れるために、シンプルなロックナンバーにし、みんなでも歌えるような曲にした」という。楽曲のデモを聞いた時、自分たちのアイデアや意見が反映されているだけでなく、予想以上の作品になっていて、本当に驚いた。爽快で自然を大切にしている神河町だから生まれた曲だと思った。

私たちは、アヤヲさん、山田さんの歌に加えて、自分たちの歌も録音することにした。山田さんが大学の教室にレコーディング機材をセットした。一人だと恥かしいので、二人か三人同時に録音した。初めてのレコーディングですごく緊張したけれども、やってみると楽しかった。最初はサビだけを歌おうと考えていたけれども、結局、最初から最後まで歌った。歌うことで、「君は友達」が自分たちのものになっていく気がして、嬉しい気持ちが溢れでた。全員の歌を山田さんがミックスし、「君は友達」が完成した。

私たちは実習で撮影した動画・写真を活用し、「君は友達」のミュージックビデオを作成した。

動画の最後に「君は友達」のインストバージョンが流れるが、演奏しているのは、大江真愛さん(フルート)と真鍋由希乃さん(ピアノ)である。大江さんと真鍋さんがそれぞれ「耳コピ」しアレンジした曲である。二人は言う。

「一音一音がグッとくるメロディーで、カバーしていて楽しかったです。少しアレンジしてオシャレな感じにしました。サビが1回目と2回目で、細かい音が違っていて、苦労しましたが、録音は一発で成功しました」

大江さんと真鍋さんは、これとは別にもう一曲オリジナル曲を同じ教室で録音している。この曲は動画冒頭部のBGMに使用している。

「凄い達成感」――これが〈たからうたプロジェクト〉に挑戦した感想である。(Blue Spring 上西晃大)

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