タカプーナ

20代半ばから30年余り、ローカル紙・誌に取材記事を執筆。この8年ほど書く現場から遠ざ…

タカプーナ

20代半ばから30年余り、ローカル紙・誌に取材記事を執筆。この8年ほど書く現場から遠ざかっていましたが、2023年夏から創作を目標に再開。「3行日記」が良い筋トレになっています。

マガジン

  • 午前3時のマスクメロン【3行日記】

    古民家で猫のいる暮らしを3行日記に綴っています。役には立ちませんが、ゆっくりしていってください。

  • ショートショート集

    創作短編集。3行日記を拡張したような習作ですが、何がしか心に残るものをめざします。

  • コラム・エッセイ集

    薪づくり、薪ストーブ、古民家DIYリノベなど今の僕の生活の大半を占める家事と、その中で感じたこと、考えたことなど。

最近の記事

  • 固定された記事

封印 (短編)

 「走らない」と印刷されたA4サイズの貼り紙を、田原は慎重に剥がし始めた。壁の漆喰が少しばかり浮いており、落下しかねない。四隅のテープはくり返し補強されて分厚くなっていた。  田原は貼り紙を剥がし終えると、くしゃくしゃと丸めて用意していたポリ袋に入れた。古い木造の建物にくしゃくしゃと乾いた音が響きわたった。  少し歪みのあるガラス窓から隣県との境をなす山並みが見える。窓のそばまで枝を伸ばした桜はまだ硬い蕾のままだ。田原は来春からここで始まる事業のことを思い、目を細めた。

    • リスタート【#3行日記】2024.7.27

      8月から再開する勤務の前に、滞っている家の片付けや修理をと腰を上げる。セルフリノベ成就の鍵はモチベーションの維持にあると痛感。最初の1年はただ夢中だった。今は「人が集える場に」が気持ちを駆り立てている。 #3行日記

      • 疎外感【#3行日記】2024.7.25

        かつて毎日通っていた六ツ角が知らない街に見えて、しばらくは迷子になっていた。道幅が大きく拡張され、昼間のように明るい交差点に変わっている。人の子の成長ぶりに戸惑うような夜の街の寄る辺なさ。 #3行日記

        • 年寄りの冷や水【#3行日記】2024.7.11

          朝、右腕の腱鞘炎で車の運転ができない友人を病院へ送る。草刈りや畑作業で腕を酷使する日が続いたようだ。4月に仕事をリタイアした彼は嬉々として野良仕事に勤しんでいる。まるで夏休みに入った子どものように。 #3行日記

        • 固定された記事

        封印 (短編)

        マガジン

        • 午前3時のマスクメロン【3行日記】
          103本
        • ショートショート集
          8本
        • コラム・エッセイ集
          1本

        記事

          意見発表【#3行日記】2024.7.10

          友人が、最も伝えたい部分で吹き出しながら話すのは、照れ隠しなのだ。僕にも覚えがある。気持ちは分かるが、そのたびに予想を超える風圧と飛沫が…! 女性陣は微笑みながらじりじり後退している。 #3行日記

          意見発表【#3行日記】2024.7.10

          不毛の議論【#3行日記】2024.7.4

          人の話を聞きながら頭では別のことを考えていた。地域のちょっとした協議の席。議題を聞いて疑問符のまま参加したせいもある。形式にばかりこだわって思いが見えない。それは“つながり”ではなく“しがらみ”なのでは。 #3行日記

          不毛の議論【#3行日記】2024.7.4

          膝カックン【#3行日記】2024.6.29

          キッチンに立っていると猫が擦り寄ってきて頭突きを食らわす。膝カックンの不意打ちに苦笑しつつ溜まった洗い物を片付け、シンクも蛇口もピカピカに磨き上げる。梅雨空を一掃するごとく、土曜の朝。 #3行日記

          膝カックン【#3行日記】2024.6.29

          終電【#3行日記】2024.6.27

          「歩きだと20分くらいかかります。ここから市電に乗ったほうがいい」。久しぶりの街の夜。友人の言葉に従ってJR駅に着くと、ホームに上がると同時に最終電車が滑り込んできた。この幸運を2日経った今ごろ思い出している。 #3行日記

          終電【#3行日記】2024.6.27

          未練【#3行日記】2024.6.23

          朝から友人主催のマーケットに出品する品物を物色中。少しは身軽になるだろう。そもそもなくても困らないものばかり。手放そうとする物に価値はあるのか。自問自答しつつ埃を払う。惜しくなって気持ちはまだ揺れている。 #3行日記

          未練【#3行日記】2024.6.23

          心眼【#3行日記】2024.6.21

          自分の中に優先順位がなければ物事を正しく平等に見ることができる、という話を聞いた。欲にまみれた僕の眼は、それだけ曇っているのだ。自我を超えた人の眼にはどんな光景が映っているのだろう。見てみたい。 #3行日記

          心眼【#3行日記】2024.6.21

          憧憬【#3行日記】2024.6.13

          所用があり、かつて家族と暮らした海辺の町へ車を走らせた。海沿いの狭い道から新たに直線道路が開通していた。遠浅の浜で若い家族がタープを張って遊んでいるのを松林越しに眺めながら、30年前の僕らだと思った。 #3行日記

          憧憬【#3行日記】2024.6.13

          良き時代【#3行日記】2024.5.25

          バブルの頃、ポスターか何かのロケハンでカメラマン、デザイナー、ディレクターの男ばかりの車中、「口説き方」の話になり、「やはりボディ(コピー)でしょ」と呟いて、しまったと思ったが、案外ウケたことを脈絡もなく思い出している。 #3行日記

          良き時代【#3行日記】2024.5.25

          老いる【#3行日記】2024.5.16

          温暖化というが僕の身体では寒冷化が進行中。今朝はマフラーを巻き厚手の靴下を履いてまさに冬の出立ち。スーパーで素足にサンダル履きの老人が冷凍食品を漁っているのを見て縮みあがった。老いもさまざまある。 #3行日記

          老いる【#3行日記】2024.5.16

          奥深し自家焙煎【#3行日記】2024.5.14

          コーヒー豆の自家焙煎を始めて2カ月経過。満足度は7割程度か。コーヒー通の仲間内での公開をめざすからには、豆を挽いたときにパァっと広がる芳香がもっとほしいのだ。改善点はまだまだ多い。

          奥深し自家焙煎【#3行日記】2024.5.14

          古民家あるある【#3行日記】2024.5.7

          外は誠に気持ちのいい陽気だが、こんな日は室内にいると逆に暖が欲しくなるのが古民家の常。外気温より数度は確実に低い。毎年、夏場の快適さに安住し、冬に慌てることになるので、この時期にこそ断熱工事をと決意する。 #3行日記

          古民家あるある【#3行日記】2024.5.7

          眼鏡新調【#3行日記】2024.5.4

          何十年かぶりにフレームを新調して分かったこと。僕は眼球の間隔が狭いらしい。形状にもよるが、店頭のほとんどの商品は大きすぎて寄り目状態。キッズ用だとこめかみが窮屈だ。ネット上を彷徨ってやっと近いサイズを入手した。 #3行日記

          眼鏡新調【#3行日記】2024.5.4