見出し画像

観測ロケットMOMO7号機の今後とロケット開発のワクワクジリジリについて書いてみた

インターステラテクノロジズの観測ロケットMOMO7号機の打ち上げは不発に終わった。原因は点火器の不具合。いわゆる宇宙クラスタの人達にもトラブルの概要はあまり伝わっていないかもしれない。

まず前提条件としてインターステラテクノロジズはスペースXと同様ピントル型インジェクタという形式のインジェクタを使っている。

http://www.istellartech.com/technology/engine

おそらく打ち上げロケットでこの形式のインジェクタを使っているのはスペースXと我々だけだと思う。宇宙に到達したことがある機体を開発しているという意味でも。TwitterとかみてるとソユーズとかV2のようにお尻から強力な点火器を突っ込む方式でなぜやらないのか?とか書かれたりもしてるんだけど、「それ、試して何度も失敗してます」。

V2とかはインジェクタの形状が全く違い、衝突型というやり方である。燃料と酸化剤は微小な穴から噴射され何度も衝突して霧状になり燃焼室の中心方向に向かっていく。そこにお尻から点火器を突っ込めば先端にちょうど点火できるのできれいに着火できるのだと思われる。

しかし、ピントル型はピントルの付け根から燃料、そして先端部の側部から酸化剤がそれぞれ噴射され円錐状に外に向かって衝突した霧状の推進剤に向けて着火する。そのため燃焼室の円柱の底部にあたるところから二つの燃焼器を突っ込んで円錐をつらぬく形で燃焼ガスを噴射して着火する。多分そうしないときれいに着火しないのだ。

今回は二つある点火器の片方の温度が基準温度以上に上がらなかったことによる緊急停止だ。停止しないとハードスタートしていたはずなのでそれは必要な安全措置。原因はこれから詳しく探り再現実験などをしていく。

スペースXは難なくクリアした点火器問題。なぜ彼らがクリアできたのか、といえばそれはNASAの月着陸船のエンジンの技術をそのまま継承しているところが大きい。それとハイパーゴリック推進剤という二つの液体を混ぜると容易に発火しエネルギー容量も多い点火剤を使っている点。我々は点火器の設置方法の試行錯誤から始まり、アメリカ国外に輸出ができないハイパーゴリックの代わりに、ハイブリッドロケットの知見をもとに開発したロウソクを竹輪状に塗布したパイプにガス酸素を送り込んで点火するハイブリッド点火器を発明した。

恐らくそれも世界初のことだろう。ピントル型インジェクタの採用と環境に優しくてコストの安いシステム開発をしたことで試行錯誤の回数がより多く求められている。当たり前のことだ。アポロの月着陸船のエンジンを開発した今はなきTRW社も、V2の開発をしたフォンブラウンのチームも、きっと我々とは比較にならないくらいの人的リソースと資金と時間を突っ込んだはずだ。その試行錯誤の成果として今がある。

今我々はピントル型インジェクタの性能向上に挑んでいる。インジェクタの基本構造は公開資料もあるが細かな加工に関しては完全にブラックボックス。今我々は次世代機ZEROに向けてJAXA角田宇宙センターの協力も受け日々研究の最中だ。そこもまたTRW社のチームがNASAとも協力して効率を上げていったところ。

ゼロからロケットを作るというのは大変なこと。ファルコンロケットの開発で、それなりに順調に行ったスペースXですら、次世代機Spaceshipは何度も失敗を繰り返してる。それほどに難しい。だからこそロマンがある。

ぜひ我々のチームにjoinしてください!このワクワクとジリジリを共有しましょう。

http://www.istellartech.com/recruit

写真は建設中の新工場です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?