キタイ

突然ガスみたいななにかが、ふと目の前に現れた


現れたと云うより、ずっと前から此処に其れは居た

居たには居ただろうが、居た事を感知したのも数刻前だ

まるで空気と云うものに人間は常に接触している、

そんな常識を認知していなかった未熟者、といったような状況だ


其のガスは何なのか、自分を如何しようと云うのか

色はなく、匂いも感じられず、掴むこともできない

勿論手に取ろうとしたが、もろ手は空を切るだけ

紙の破けた金魚掬い


曖昧で朧げな輪郭、しかしその存在感は計り知れない

圧倒的な厚みと深さがあるように予感される

密室に充満した可燃ガスのような恐怖感さえ在る


抽象的な物言いだが、青天の霹靂ともいえるその感覚があった

此の今の現実を俯瞰して観察しても、変化が在ったのは己の表情ぐらいだと思う

つまり自分の脳内

脳内で駆け巡る思考の光が、未見の反応を見せた


思考の交通事故、いや脱線事故かはたまたメルトダウン

天地がひっくり返る様なパラダイムシフト

起きたのだ、今ここで起きたのだ

その結果、此のガスだ


なんとなくわかるのは

これが自分のこれから向かう方向なんじゃないか

これが自分だけにしか考えられない事なんじゃないか

その点なのだ、はっきり


指針が明確になり、世界が変わったように感じた

期待が膨らみぼやけた視界はキンと開けた



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