理工系の女子枠

理工系の学部で女子枠が話題になっている。でも現在女性が少ない分野で頑張っている理工系分野の女子学生さんや、理工系卒業の女性の意見があまり無いような気がする。てことで、応用物理学科出身の私が30年前の思い出を書いてみる。

子供時代

子供の頃から自然が大好きでした。天体観察や植物採集、夏休みは日がな一日セミやトンボを捕まえて遊んでいました。また科学番組も大好きで、クストー隊長の海洋探検番組にワクワクし、惑星探査機ボイジャーから送られてきた木製の写真に衝撃を受け、小学生の時に眠い目をこすりながら見たカール・セーガンのコスモスという科学番組に感動したものです。親が科学雑誌を毎月買ってくれました。子供の科学、天文ガイド、ニュートンなど。小学生の頃から大きくなったら自分は科学者になるのだ!と決めていました。

他の同級生の女の子たちと話が合うわけもなく、科学はいつも一人で楽しむものでした。電子工作に興味を持った時期もありました。学研の電子ブロックが欲しくて、クリスマスプレゼントにおねだりしたこともありますが、母「あれは男の子のおもちゃよ」と買ってもらえず、お人形で誤魔化されましたっけ。

女子一人ぼっちかも

高校生の時に物理を選択した女子は学年で3人のみでした。うち私も含めて二人は大学で物理系の学科に進学。物理系学科を受験するのはかなりの勇気が必要でした。学科で女子一人になる可能性があるからです。高校時代は少なくとも物理の勉強に関して支え合える女友達が3人いました。もし物理学科で一人ぼっちになったら?自分一人でやっていける?勉強で支え合える仲間がいないかもしれない、気楽に相談できる相手がいないかもしれない、それが最大の不安でした。

ボッチになった

もし物理学科で女子一人になっても、高校時代の友人が他大学の物理学科にいれば、いざとなれば相談できるだろう、きっとなんとかなるかもしれない。勇気を振り絞って応用物理学科を受験、みごと学年で女子一人ぼっちとなりました。物理学科とはいえ、学年には大抵3〜4人の女子学生がいて、一人は滅多にないとのことでした。運が悪かった…。先生方が「毎年女子学生が学年トップなんだよね」と言いながら、期待を込めた目で見てきて、いきなりのプレッシャーでした。

困ったこと

女子一人ぼっちになると、どんな困ったことが起きるか?学科の女性が先輩か後輩しかいないわけです。先輩でも後輩でもない、自分と対等関係の安心してタメ口でなんでも話せる相手が一人もいないということです。物理学科は男子学生ばかり、先生方も全員男性でした。物理学科は男性の文化が支配する世界。文化が違いました。カルチャーショックwお受けたものです。たまには他の女子学生と男性どもの愚痴もいいたくなる時があります。でも相手が学科内にいません。自分と同じ状況の女性がいない。共感してくれる人なんて一人もいない。一人で悶々としていました。些細な事の積み重ねが、やがて大きなストレスとなり、一時期大学に行っていない時もありました。

男子学生との関係

学生時代、自分のエネルギーの約90%は、ストレスに費やされました。親からは「男子学生とも普通に話せるようにならないと」「あいてが男性だからって、いちいち気にしたらダメ」「男を男とも思わないくらいでないと」などと言われました。そうできる人は良いでしょうけど、そうでない人だっている。
男子学生は「女子学生とも普通に話せるようにならないと」「あいてが女性だからって、いちいち気にしたらダメ」「女を女とも思わないくらいでないと」などと言われないのに。不公平じゃん!と思ったものです。

理想の理系女子学生

大学の先生方の頭の中には、理想の理系女子学生像があるようでした。「物理の女性が活発で積極的で講義の時も自分から手を挙げて発言するのに、今年の女子学生はそうじゃない」と、講義中に女子学生が私一人しかいない部屋で言われて、こいつぶっ殺してやろうかと思ったこともありますが…。当時はこの世にインターネットはおろか携帯電話も存在しない時代でしたから、一人で抱え込んで家に帰って布団に潜って泣きましたっけ。今なら謝罪するまでSNSに書きまくってやるところです(笑) 
理系の女性は活発で積極的で成績優秀で男まさり、男を男と思わない豪傑…というのが先生方のあたまのなかの理系女子学生像。そうでない性格の私は、いつも自分の性格に劣等感をもっていたものです。積極で活発で男を男とも思わない男勝りな女子学生にしか入学して欲しくないのなら、入学試験に適性検査も追加して、そういう女子学生だけ合格させてください。理系女子学生といっても、いろんな性格、いろんな価値観の人間がいるのですよ。

英語の授業

私は語学の勉強はわりと好きな方で、英語も自分でせっせと勉強していました。英語の先生はかなり厳しいタイプで、毎回学生を当てて答えさせるのですが、間違った答えを言うと味噌糞にけなす先生でした。男子学生は集まって分担して英語の予習をやっていましたが、私は輪に加われず、全部自分で自力で予習していましたが、当てられて間違えていると罵倒されるわけです。人生ってそんなものー努力よりも要領良い方が勝ちだよね、知ってるよ…と思ったな。今は英語を使って仕事して不労所得を得ているので、この時の勉強は役に立ってます。最終的には私の勝ちだ。

ゼミ旅行

ゼミで登山すると言う。温泉宿に泊まると言う。その日程がもろに私の生理日と重なる。私は生理が重い方だった。量が多くて昼間でも夜用の巨大なナプキンを使いpっていた。時々大量の経血がどっと出ることもあり、90分で漏れそうになることもあった。貧血で頭がフラフラし、味覚も変わる。そんな時に男子学生との数時間一緒に車の中で過ごすなんて、匂いが気になる。貧血フラフラで登山なんて冗談じゃない。温泉だって入れない。欠席しますなんて言える雰囲気じゃ無い…。男子学生が大勢いる部屋で、この若い男性の助教の先生になんて言って欠席を伝えるか?悩んだすえ「その日は用事があってどうしても行けない…モゴモゴ…」と言うと、「わがままはダメよ」。
同様の問題は後輩の女子学生のいたゼミでも起こった。幸いその学年は女子学生が4名ほど。他のゼミの女子学生も加わり一致団結して「登山はいやだ、宿で女子会する」と主張して拒否したようだ。同性の仲間がいるって羨ましい

うつ病だった

大学3年から修士を修了するまで、ずっと鬱病で通院してた。私はずっと隠してた。大学ではさとられないようにニコニコ笑顔で必要以上に明るく振る舞い、家に帰るとグッタリ。そんな毎日。女子学生が元気そうにしているからって、本当に元気なわけじゃ無いのだよ。

試験勉強

一人で勉強が当たり前、自分が頼り。「仲間がいたから頑張れた!」なんてセリフを言ってみたかった。一人でも結構頑張ったよ。女子枠なんてものがあったら、ぼっちにならず、助け合って勉強できる仲間がいたのかな。講義中ではなく、口コミで伝わる試験情報も多くて、そういうネットワークから完全に外れていたので、何かと大変でしたね。でも私は成績良かったから。

1番じゃ無い

入学した時に、先生から「毎年女子学生が1番なんだよ」と言われましたが、私は1番にも2番にもなることはなく(成績は良い方でしたが)、ずっと劣等感でした。女子学生だからといって1番になる必要は無い。男子学生の平均以上で十分でしょ!と開き直れるには時間がかかった。

女子枠の利点

理工系の女子枠の利点を考えてみる
⚫︎先輩でも後輩でもない、対等の関係でタメ口で話せて、一緒に勉強できる同性の友人が学科内にできる。

⚫︎女性が複数いることで、理系女子学生にもいろんな性格、価値観の女子学生がいることを先生方が知ることができる。

⚫︎女子枠があれば「学科で女子一人になってしまうかも、やっていけるかな?」と不安にならず、ボッチを覚悟せずに男性と同じように普通に理工系が受験できる。

⚫︎卒業後に「仲間がいたから頑張れました!」というセリフが言える

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