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エアコンは<風>次第

現在の家作りに求められる「快適・省エネ」についての技術的ポイントを
工務店側の視点でご紹介。


  毎年『建築技術1月号』は結構な紙数を割いて、住宅の省エネ技術について書かれている。

で、今年の特集の書き出しは、
「HEAT20のG2が日本の断熱スタンダードになろうとする中で(以下略)」だった。

わお、断熱等級6(つまり、私の主戦場である6地域だとUA値0.46w/m2k)が当たり前田のクラッカーになるなんて、藤田まことは言うに及ばず、お天道様ですら思ってなかったに違いない。
そして、これだけ断熱性能が高くなると、住宅を暖める/冷やすためのエアコンの能力はどんどん小さくなる。実際に私がエアコンの能力を選定する上で基準にしているのは以下の通りだ。

40w/m2 
※UA=0.46~0.56 ηAc=1.3より優位(←実はこれが大事だけど)
※m2=冷暖房室の床面積
※w=ワット(冷房能力でみる) 

つまりUA値=0.46、ηAc=1.3、延床面積100m2(冷暖房室100m2とする)の住宅をきっちり暖める/冷やすために必要なエアコン能力は3.6kwだ(ルームエアコンで最大冷房能力を4.0kwとする)。カタログで3.6kwのエアコンは「12畳用」と明記されている(木造戸建ての場合)。
つまり、3.6kwのエアコンでカバーできる面積は
ちょっと前 ⇒ 20m2(12畳)
「スタンダードになろうとする」住宅 ⇒ 100m2(61畳)
となる。
同じエアコン能力に対して高断熱住宅だと約5倍の面積に対応できる。

と、なると住宅の高断熱化に伴って断熱工事費用が増大しているので、その分、空調設備のイニシャルコストを落としたくなるのが人の性。
ダクトを使わず、壁掛けエアコンで簡易的に
「12畳用のエアコン一つで住宅全体が快適空間に!!」
と、謳いたくなるのだ。

「島くん、アレできる?」

そんなこんなで私に電話が入る。
「島くん、床下エアコン、小屋裏エアコンできる?」

高断熱化

小さいエアコン能力でカバーできる

断熱コスト上がってるから、エアコンコストを下げてPRしたい

床下エアコン・小屋裏エアコンしたい

「島くん、アレできる?」

風が吹けば桶屋が儲かる式で、高断熱化で島(オレ)が儲かるかと言うと
実際はそうではない。
この類の問い合わせには「床下エアコン、小屋裏エアコンは難しいです。」とお答えしているから、結局採用に至らないからだ。
なぜ難しいか。それは「熱を搬送する設計が成立しにくいから」だ。

と、言うのも建築側のエアコンの議論では大事な点が抜け落ちている。
それは「エアコンは熱(エネルギー)を風に乗っけて搬送している。」という点だ。

(図1)壁掛けってこうだよ

エアコンはカタログに表記された冷暖房能力をもっている。
しかし、その熱を冷暖房室内に搬送する手段は風(空気)なのだ。
この風が設計上とても大事なのだ。
私はエアコンの計画上、冷暖房能力と同等にトータル風量と、搬送計画を大事にしている。

例えば図1にあるように冷房時に部屋Aにある壁掛けエアコンから15℃の冷風が600m3/h出ているとする。そうすると、約3500wの全熱(冷えて余剰な湿気が取り去られた空気)が取り去られている、と計算できる。よって、このエアコンに最大4.0kw(4000w)の能力があったとしても、NETで3500wの能力がでていると言える。

また、このエアコンの熱を部屋Bに届けたいとする。しかし、何℃の風を何m3/h送風できるか、わからない場合、部屋Bがどんな熱環境になるのかわからず、なりゆきになる。

図2ダクト式はこうだよ

1台のエアコンによって、ちゃんと部屋Bの熱環境も設計する、となると保温(断熱材)を巻いたダクトを使った空調計画となる。保温ダクトを採用することによって、直接部屋Bに何℃の熱を何m3/h送風するか、が設計できるようになる。
実際、私はこの手法で200棟以上の実績があり、小さい温度差(冷暖房室間の温度差最大2℃程度)の熱環境を実現できている。

ただし、この計画を成立させるために要になるのは「ダクトの出口で何m3/hの風が出てくるか」の設計だ。

長くなった。
これについては次回ご説明する。


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