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【論文レビュー】女性管理職を昇進へと促した上司のアクションとは?:高田(2013)

D&Iを進展する一環で、女性管理職の比率や人数をKPIに置いている企業も多くなってきました。ただ、充分に女性管理職の抜擢や育成が進んでいない企業もまた多いようです。本論文では、管理職に既に就いているか直前のポストに就いている地方銀行勤務の女性社員を対象として、何が昇進を促すのかに焦点を当てて考察を行っています。

高田朝子. (2013). 女性管理職育成についての定性的調査からの一考察―昇進の背中をおした事象とは何か―. 経営行動科学, 26(3), 233-248.

効力感が大事

女性管理職が少ないということは、女性社員にとって同性のロールモデルとしての女性管理職が少ないことを意味します。また、ワーク・ファミリー・コンフリクトの影響を受けて社内での昇進に躊躇する女性も多いようです。こうした、間接的・直接的に昇進を阻害する要因を解消するためのヒントが効力感を得てもらうことにあると本論文では結論づけています。

具体的には、①職務を通じた達成経験を積み重ねることで効力感を醸成することが管理職への昇進にポジティヴな態度に変化すること、②効力感を醸成しやすい環境を創ることが重要であること、の二点が大事であるとしています。

三つの実践的示唆

インタビューデータからの考察で導き出された点をもとにまとめてきましたが、以下からは職場における実践的な示唆として三つのものについて触れていきます。

第一に、女性管理職やその手前層の社員に対して、部下を伸ばし、昇進を促す上司を配置することが指摘されています。社員本人が行えることもありますが、インタビューでも上司による支援的関与がよく出てきており、部下のキャリアや育成に力を注ぐ上司の影響の大きさが明らかになっています。

第二に、幅広い社内ネットワークを構築する機会を提供することが挙げられています。現時点での職場の勤務状況を鑑みれば、女性管理職は十数%に留まる企業が多く、また育休の取得比率は女性の方が高い状況です。こうした点から、社内でのネットワーク構築が相対的に難しいために、社内でのネットワークを構築できるような機会をアレンジすることの重要性はその通りなのでしょう。

第三の点は、様々な職種を経験させることです。第二の点である社内ネットワークとも関連しますが、職種や職場の経験数が増えれば自ずとネットワークが潤沢になります。職務を幅広く経験することで、成功体験と共にネットワークも強化でき、女性管理職の背中を押すきっかけになるのかもしれません。

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