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【論文レビュー】調整効果とは何か?:林・内藤(2023)

心理統計について基礎的な内容を理解したい今日この頃なのですが、論文でも探してみると色々あるものですね。今回、見つけたのは以下の論文で、私の興味関心の関係で調整効果に絞ってまとめます。媒介効果もそのうち別日に扱うかもしれません。

林洋一郎, & 内藤知加恵. (2023). 仮説検証型研究における仮説の形式―主効果, 調整, 媒介, 調整媒介についてのチュートリアル―. 産業・組織心理学研究, 36(2), 189-211.

主効果とは何か

調整効果に入る前に主効果から書きます。主効果仮説とは「2変数間の関連を予測するモデル」(p.190)です。回帰式で表すと以下のようになります。

Y=iY+b1X+eY

誤差項であるeYを除けば、中学一年生で習う一次関数なのでXを横軸にしてYを縦軸にした直線で表せることがわかるかと思います。相関関係ってそういうことですよね。

調整効果とは何か

主効果を踏まえた上で本題に移ります。調整仮説モデルとは、「XとYの関連が第3変数の影響を受けて変化すると予測するモデル」(p.190)です。この第3変数が調整変数です。調整変数をWと置くと、以下のような図で表せます。

p.191

中学生でもわかる数式での説明

この調整効果を表す数式について、著者たちは主効果の回帰式をベースにして以下のように解説してくださっています。

 Y=iY+b1X+b2W+b3XW+eY

先述した主効果の回帰式からb2WというWに関する項が加わるとともに、b3XWという説明変数Xと調整変数Wを掛け合わせた交互作用項が加わっています。これをXについてまとめ直す以下のような式が導き出せると著者たちはしています。

 Y=iY+(b1+b3W)X+b2W+eY

このあたりも中学1年生の数学でわかるのでありがたい展開です。Xに掛かる部分を見ていただければお分かりのように、説明変数Xが結果変数Yに対する傾きにWが影響していることが読み取れます。これが調整効果というものなんですね。

こうしてみてみると、なんで調整効果を見るときに交互作用項が論文に出てくるのだろう、という少なくとも私が昔に抱いていた疑問が解消されます。これくらいの数式で説明してくれる心理統計の教科書に、早い段階で巡り会いたかったものです。

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