【論文レビュー】職場環境が研修の効果に与える影響とは!?:Hughes et al.(2019)
企業における研修の効果について、研修で受ける内容を現場においていかに実践できるかの度合いを表す概念として研修転移というものがあります。研修転移に影響を与える要因には、プログラムや講師といったものも大きいことは想像できるかと思いますが、それとともに職場の環境が大きいものです。
今回は、以下の論文を基に職場環境がいかに研修転移に影響を与えるかについて考えてみます。
(1)研修時点だけを考えるだけでは不充分
OJTを考えれば分かるように、OFF-JTにおいて、そこで学んだ内容が現場に活きるかどうかはトレーニングルームで決まるわけではありません。むしろ、研修の前や後というフェーズが大事であり、したがって職場における関与のあり方が大事です。
本論文でも上に引用しているように、学んでもらう必要があるKSA(Knowledge, Skill, Attitude)はプロセスに埋め込まれるべきであるという主張が為されています。
では、受講者を取り巻く環境にいるステイクホルダーのうち、何が研修転移に影響を与えるのでしょうか。ここでは、職場、上司、同僚の三つの要因に分けて検討が為されます。
(2)研修転移に最も影響を与える要因は同僚である
上述した三つの要因は、全て研修転移に対してポジティヴな影響を与えたことが述べられます。まあ当たり前と言えば当たり前です。その上で興味深いのは、これら三つのうち同僚が最も研修転移にポジティヴな影響を示しているという点でしょう。
上司から言われると業務指示のように思えてしまい、職場におけるシステムとして埋め込まれている無機質に感じる、ということなのでしょうか。このように考えると同僚同士で学びあえるようにすることがより効果的と考えることも自然かもしれません。
(3)環境だけではなく個人の転移意欲も必要
本論文では職場環境を中心に分析が為されていますが、環境だけで個人が研修で学んだ内容が転移に繋がるわけではありません。個人が転移させようとする意欲が、研修転移への影響に媒介するというのです。
環境が整っていても個人の意欲の高低によって研修転移の度合いは異なります。となると、どのように意欲を高めるかも気になるところですが、本論文のスコープではないので他の先行研究で調べます。
(4)学習する組織の醸成が長期的には有効
ここまでの論点を踏まえて、著者たちによる実践的含意もみていきます。
職場環境というところに焦点が当たっていますのでこの辺りの結論になるのでしょう。短中期的には前述したような同僚同士における学び合いが研修転移につながりますが、長期的に捉えればお互いに学び合う風土をいかに醸成するかが鍵です。
研修の投資対効果はどうだ、といった安易な話ではなく、いかにして将来のビジネスにおいて求められる言動変容を促すために研修をデザインし、職場におけるOJTと結節させるかを考えたいものです。
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