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【論文レビュー】エンプロイヤビリティとは何か。:Fugate et al.(2004)

エンプロイヤビリティ(employability)という言葉は、日本企業で「成果主義」が一時的に流行した2000年前後から、人事界隈で使われてきたと思います。概念として整理されたのは実務で使われてからしばらく経ってからのようでして、引用数が非常に多い本論文は2004年に出ています。本論文では、エンプロイヤビリティを、①キャリア・アイデンティティ、②個人的適応、③社会関係資本・人的資本、の三つから構成されると概念的に整理しています。

Fugate, M., Kinicki, A. J., & Ashforth, B. E. (2004). Employability- A psycho-social construct, its dimensions, and applications. Journal of Vocational behavior, 65(1), 14-38.

全体像

なぜエンプロイヤビリティという概念が出てきたのかについて著者たちはまず説明しています。伝統的には、キャリアというものは、組織に属すことが前提とされていて組織による束縛を受けるものと想定されていました。boundedでorganizationalなキャリアという表現をしているのが秀逸です。

しかし現代におけるキャリアは、自己管理的で、組織間の境界が弱くて、複数の組織における複数のポジションから構成される、という特徴が出てきています。キャリア論で言えば、バウンダリーレス・キャリアやプロティアン・キャリアといったニューキャリア論に影響しているもので、実際、この二つのキャリア論への言及が本論文では多くされています。

こうした社会や組織の変化およびキャリア論の変化に対応してエンプロイヤビリティという概念が広まったと考えられます。エンプロイヤビリティは三次元で構成されるということを冒頭で述べましたが、以下のようにベン図で示すとイメージしやすいかもしれません。

p.19

①キャリア・アイデンティティ

エンプロイヤビリティの語感からは外的キャリア(報酬、ポジションなど)を想起させる印象がありますが、個人の内的な動機や価値観が重要であるとして著者たちは概念整理をしています。そのため、第一に出てくる次元はキャリア・アイデンティティです。

具体的には、仕事を意味のあるものにする経験、ナラティブとして構築すること、個人のアイデンティティのスタイルから影響を受けるもの、といった特徴が挙げられています。

②個人的適応(Personal Adaptability)

二つ目の次元は個人的適応です。ここでは、楽観性、学習性向(propensity to learn)、開放性、自己効力感、といったものと親和性が高い次元であるとしています。

③社会関係資本・人的資本(Social & Human Capital)

三つ目は社会関係資本・人的資本です。社会関係資本は社会的ネットワークの中における善意であり、他者や組織との相互作用からエンプロイヤビリティが構築されるという考え方をとっています。同様に、経験値などを含めた個人の有する資本もまた重要であるとしています。

本論文の目的は概念を整理すること!

本論文は、エンプロイヤビリティという概念を整理することが目的としたもので実証研究ではありません。エンプロイヤビリティをどのように測定するのかという実証研究については、後続するものがあるので、どこかのタイミングで読む予定です。

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