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【論文レビュー】現代のビジネスに求められる経営革新促進行動とは?:高石・古川(2008)

企業がイノベーションを起こすためには、企業としてのアクションだけではなく、社員の行動こそが重要である、という考え方から、経営革新促進行動という概念があります。この経営革新行動とは何かについて、近しい概念との相違から説明しているのが本論文です。

高石光一. & 古川久敬.  (2008). 企業の経営革新を促進する従業員の自発的行動について- 組織市民行動を越えて. 九州大学心理学研究, 9, 83-92.

経営革新促進行動の特徴である五つの行動と、近しい概念である組織市民行動との相違を端的に示したモデル図を提示し、ポイントについてまとめていきます。

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組織市民行動との違いは何か

違いを説明する前に、組織市民行動と経営革新促進行動が共通するところから見ていきます。上図の一番右を見ていただければわかるように、通常の職務における役割外の行動であるという点は両者に共通しています。

では違いは何かというと、組織市民行動は組織の現状維持を目的とした有効な行動であるとしています。たとえば、同僚の手助け、誠実な行動、配慮、整理整頓といった組織市民行動の例を見れば、なんとなくイメージできるのではないでしょうか。

それに対して、経営革新促進行動は組織の現状のビジネスから離れた変革を促す行動です。図の中に記載のある五つの点に絞って見ていきます。

①問題発見・解決行動

働く個人が現状に対する問題意識と改善・改革への挑戦を目指して解決を促す行動を指します。

②社内外環境情報収集行動

現代のビジネスにおける情報の重要性に基づき、経営革新に必要不可欠な社内外の情報を自発的に収集する行動のことです。

③顧客第一主義行動

顧客ニーズを喚起し対応するための行動で、顧客にとって有益となる財・サービスを提供するための社員の自発的な行動と言えます。

④企画・提案行動

企業の付加価値創出を目的とした、社員による自発的・創造的・革新的な提言が該当します。

⑤組織への働きかけ行動

社員自身が業務改善を行うというだけではなく、組織レベルでのオペレーション・規則・方針を変革しようとする行動です。

経営革新促進行動について五つの観点から説明しました。現状のビジネスを前提にした自発的行動である組織市民行動とは異なり、将来において求められるビジネスへの変革を促す行動であることがわかります。

他方で、経営革新促進行動は、組織市民行動と同様に、自発的な行動ではありますが、あくまで組織にとっての効果性を狙った行動です。この辺りが自発的でかつ自分にとっての職務の捉え直しであるジョブ・クラフティングとは異なりそうです。


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