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【論文レビュー】リアリティ・ショックとワーク・エンゲージメントと離転職意思の関係性について:片山・藤 (2023)

本論文ではリアリティ・ショックワーク・エンゲージメントおよび離転職意思の関係性について検証されています。さらには、自己概念明確性による調整効果も検討されるという盛りだくさんの内容です。まずは自己概念明確性について見ていきましょう。

片山まゆみ, & 藤桂. (2023). 転職時のリアリティショックと離転職意思── 自己概念明確性の効果に着目して──. 心理学研究, 93(6), 495-505.

自己概念明確性

自己概念明確性とはSelf-Concept Clarity(SCC)の訳で、「個人の自己概念の内容や自己についての信念が曖昧でなく、確信をもって定義され、通時的に一貫かつ安定している程度を表す(Cambell et al., 1996)」(p.496)概念です。確信性、安定性、極端性、という三つの次元で捉えられる概念であり、本論文でもそれらを調査しています。

調整媒介効果

本研究の結果、まず、リアリティ・ショックがワーク・エンゲージメントを媒介して離転職意思に影響するという関係性が明らかになりました。次に、この媒介効果に対して、SCCのうちの確信性と安定性が調整効果を持つことが検証されたと結論づけておられます。具体的には下図をご覧ください。

p.501

図にある通り、リアリティ・ショックと確信性および安定性との交互作用がワーク・エンゲージメントに影響を与えている(調整効果を持つ)ことがわかります。他方で、リアリティ・ショックと極端性との交互作用はSEMで有意なパスを持つ経路がなかったため、図には描かれていないという補足説明もなされています。

横断調査の限界

本論文での限界と課題に関して、著者は横断調査の限界について指摘しています。つまり、媒介調整効果について、特に調整効果については因果推定を慎重に議論する必要があるということです。横断調査による因果的関係性の推定については要検討が必要な状況になってきているようです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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