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【論文レビュー】組織アイデンティフィケーションと組織コミットメント:高尾(2013)

本論文では、組織アイデンティフィケーションを「組織との一体性(oneness)や組織に帰属していること(belongingness)に対する認知」(66頁)と定義されています。では、こうした組織との一体感のようなものと組織コミットメントとは異なるのでしょうか。高尾先生は、先行研究レビューを行い、日本での実証研究を紹介したうえで、両者は異なるものと捉えるべきであると結論づけています。

高尾義明. (2013). 組織アイデンティフィケーションと組織コミットメントの弁別性-日本における組織アイデンティフィケーション研究に向けた予備的分析-. 経営と制度. 11. 65-80.

先行要因と結果要因

組織アイデンティフィケーションに影響を与えるものは何でしょうか。先行研究によれば、集団の威信(prestige)集団の価値・慣習の独自性(distinctiveness)が該当すると言われています。意訳すれば、「自分のいる組織ってすごいんだな」とか「他の組織にはない強みがあるよな」といった認識によって、組織への一体感が促されるということでしょう。

では、一体感を感じていることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。先行研究では、結果要因として、協同行動(cooperative behavior)、組織市民行動(organizational citizenship behavior)、離職意思などが取り上げられているようです。つまり、同僚と積極的に業務内外の役割について協働することが促され、組織に残ろうとする気持ちが喚起されるわけですね。

組織コミットメントとの相違

組織コミットメントについて論じると、それだけで複数のnoteの回数の分量が必要なので、今後改めて述べていきます。ここではざっくりと、いくつかある組織コミットメントの捉え方のうち、情緒的コミットメント(本論文では「愛着的コミットメント」ですが他の回であげたnoteと概念と言葉を合わせました)という「組織への情動的愛着(emotional attachment)、アイデンティフィケーション(identification)と関与(involvement)」(67頁)を表す概念があるとご理解ください。

本論文では、この概念と組織アイデンティフィケーションの相違に焦点が当てられています。両者は、組織に対して何らかの肯定的な感情を抱いているという点では共通していると言えます。では、具体的に、違いはどのようなところにあるのでしょうか。

両者の相違は、組織と個人との関係性が異なるという点にあると本論文ではしています。つまり、組織コミットメント論では、個人と離れた存在である組織に対して個人はどのように結びつきを感じているか、を捉え、個人と組織との社会交換的な側面に焦点を当てています。

それに対して、組織アイデンティフィケーション論では、両者の分離に意識を当てるのではなく組織というものを個人の社会的アイデンティティを構成する一部として捉えています。そのため、組織を自己概念の中に位置づけて構成しているという捉え方です。

あとがき

これからしばらくの間、週末は、組織コミットメント関連の論文レビューをあげる予定です。昨日あげた服部先生の名著『組織行動論の考え方・使い方』の第10章を紐解きながら気になった論文に触れていきます。

同書の第12章のまとめはこちら。


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