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【論文レビュー】日本企業における帰属意識研究のはじまり:関本・花田(1985)

最初の修士時代に院ゼミか学部ゼミで配布されて「ふむふむ」と読んでいた論文を、まさか12年後に真剣に読み返すことになるとは思いませんでした。三色ボールペンで書き散らしてあるものの、28歳の私の理解はそれほど悪くなかったようで、40歳の私は大変助けられています(笑)。

本論文は、日本における組織コミットメントあるいは帰属意識に関する草分け的な存在と言えます。こういう論文を読んでいると、学部時代はゼミ生間でニックネームで花田先生を呼んでいたのに、もはや裏でも先生としか言えなくなるという、ある意味ではこわい論文です。

関本昌秀, & 花田光世. (1985). 11 社 4539 名の調査分析に基づく企業帰属意識の研究 (上). ダイヤモンドハーバードビジネス, 11, 84-96.

というわけで襟をただして真面目に書きます。

「日本的帰属意識」などというものはない

本論文は、三次元モデルが確立する前の研究です。著者たちは、ポーターらのOCQ(Organizational Commitment Questionnaire)を基にしながら、日本的帰属意識と呼べそうな項目も加味して調査を行いました。

因子分析の結果、「滅私奉公、運命共同体意識といった伝統的な日本的帰属意識」(87頁)は他の因子に分散し見出すことはできず、以下の四つの因子が抽出されました。

目標:組織の目標・規範・価値観の受け入れ
積極的意欲:組織のために働きたいという積極的意欲
残留:組織にとどまりたいとする残留意欲
功利:組織から得るものがある限り組織に帰属する功利的帰属意識

帰属意識に影響を与える要因

では、これらの帰属意識に影響を与える要因には何があるのでしょうか。著者たちによれば、仕事の魅力、会社の魅力、給与・福利厚生の公平感が説明変数として抽出されました。重要なのは、それぞれが影響を与える帰属意識が異なるという点です。

以下にその結果をまとめます。

会社の魅力→①目標
仕事の魅力→②積極的意欲
会社の魅力、給与・福利厚生の公平感→③残留

つまり、社員の帰属意識の項目によって、打ち手は異なるということであり、また④功利には打てる施策の検討が難しいということです。

日本企業で働く社員の帰属意識の5類型

四つの帰属意識の因子の持ち方を基にクラスター分析によって五つの類型(A:伝統型、B:企業従属型、C:自己実現型、D:功利型、E:欠如型)として著者たちは抽出しています。それぞれの類型が、四つの因子のスコアの高低は表2(90頁)を以下に抜粋するのでこちらをご覧ください。

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企業の中に占める五つの類型の社員数は、企業のタイプによって異なるとしています。AとBが多い企業は伝統的な管理機構を持つ企業群で、Cが多いのはイノベーション志向の成長企業です。

本論文に続く「11 社 4539 名の調査分析に基づく企業帰属意識の研究 (下)」では、帰属意識に合わせたHRMのしくみの違いが論じられるようです。それではまた明日。

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