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【論文レビュー】組織を良くしたい意識は行動にどう表れるのか?:尾関(2012)

今回は先日の研究指導にてご紹介いただいた論文を。観察したいプロセスをうまく言語化できない中で示唆をいただき、少し霧が晴れつつある気がします。本論文では、企業組織の中で組織をより良くしたいという意識(革新志向性)が高い社員と低い社員とでは、革新を進める行動(経営革新促進行動)にどのような影響を与えているか、を明らかにしています。

尾関美喜. (2012). 組織風土と革新指向性が経営革新促進行動に及ぼす影響. 経営行動科学, 25(1), 19-28.

経営革新促進行動について、著者は、高石・古川(2009)に基づいて、(1)組織の革新に寄与する行動(2)組織の維持と発展に寄与する行動に分けて述べています。それぞれ以下の行動から成り立つものです。

(1)組織の革新に寄与する行動
・問題発見と解決行動
・重要情報収集行動
・顧客優先行動
・発案と提案行動

(2)組織の維持と発展に寄与する行動
・精勤行動
・組織と周囲支援行動

本論文での考察で興味深いのは、革新志向性の高い人と低い人との差を明らかにしている点と言えます。

第一の発見事実は、革新志向性の高い人が問題発見と解決行動を他のすべての行動よりも多く行なっているという点です。

組織を良くしたいという意識が強い人は、問題発見から解決に至るまでの一連のプロセスに最も傾注しているということなのでしょう。兎にも角にも問題発見と解決行動にエネルギーを割いているのです。

第二の発見事実は、革新志向性の高い人は、重要情報収集行動・組織と周囲支援行動・発案と提案行動とを満遍なく行なっている点です。

何れか一つというわけではなく、それぞれ関連させて行動しているということが着目ポイントでしょう。つまり、組織にとって有用な情報を探し、それを活かそうとするため人周囲に働きかけ、それを形にするために提案まで結びつける、という動きと捉えられます。

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