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【論文レビュー】リアリティ・ショックは職務ではなく組織に対する態度に影響します!:小川 (2005)

本論文では、若手社員が新しい組織に入ってリアリティ・ショックを感じる場合に、それが何に影響を与えるのかについて実証研究を行っています。ネガティヴな影響だけではなく、ポジティヴなものもあるという点を明らかにしているのが興味深い論文です。

小川憲彦. (2005). リアリティ・ショックが若年者の就業意識に及ぼす影響. 経営行動科学, 18(1), 31-44.

リアリティ・ショックの多様性

リアリティ・ショックは新たな組織に参画する際に生じるショックです。多くは新卒入社やキャリア入社といった新しい企業への入社において生じるものとして研究がなされますが、組織社会化の長期的なプロセスにおける節目で生じるものと捉えられており、入社時以外にもあるとしています。

本論文では注記の中で、入社段階のリアリティ・ショックはエントランス・ショック異動により生じるものはクロス・ファンクショナル・ショック昇進によるものはランキング・ショック、というように分類できることを、ご自身の先行研究を引きながら解説してくれています。

組織に対する態度に影響

リアリティ・ショックから組織コミットメントへはマイナスの影響関係があることが実証されました。つまり、リアリティ・ショックが高いと、組織コミットメントが低くなるという関係性があるということが明らかになりました。

他方で、リアリティ・ショックから職務満足への影響関係も本研究では調査したのですが、両者間には影響は見られなかったと報告されています。このことから、リアリティ・ショックは仕事に対する態度ではなく組織に対する態度に影響を与えることが実証された、と結論づけていらっしゃいます。

自己理解を促す側面も!?

また、組織に加えて自分自身を理解するという側面もあることが検証されました。具体的には、リアリティ・ショックは職務を行う上での能力適性への理解と有意な正の相関関係があることが検証されています。つまり、リアリティ・ショックによって自分自身の能力への気づきが促されるということが明らかになりました。

他方で、職業的興味との関係性も見ていたのですが、こちらについては影響関係が見出せませんでした。興味や価値観ではなく、能力に関して影響を与えるようです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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