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【読書メモ】働く人が組織に感じる一体感とは?:高尾(2013)

レビュー論文って本当にありがたいなぁと思います。本論文は、『組織論レビュー1』に収録されている、高尾先生(東京都立大学)による組織アイデンティフィケーションに関するレビューです。

高尾義明. (2013). 組織成員のアイデンティフィケーション.  組織学会(編). 組織論レビューⅠ 組織とスタッフのダイナミズム. 白桃書房

大学院関連で少し前に組織コミットメントを集中的にレビューしていた時があり、その際にも高尾先生の組織アイデンティフィケーションに関する他の論文で学んでました。もう少し内容を整理しておこうと思い、レビュー論文にまで手を出してみたという感じです。(あと本棚にあればいつでも調べられますし)

高尾先生が本論文で想定されていた問いは二つあり、そのうちの一つが組織コミットメントと組織アイデンティフィケーションの相違についてです。私もこの点を整理したいために紐解いているため、ここに特化してまとめてみます。

組織と個人の関係の捉え方が異なる

組織コミットメントと組織アイデンティフィケーションとでは、組織と個人の関係の捉え方が異なるようです。

組織コミットメント論では、心理的に分離された存在(entity)である組織と個人の結びつき(binding)を問題としている。一方、組織アイデンティフィケーション論では組織は個人の社会的アイデンティティの1つを構成するものとされ、組織との知覚された一体性(perceived oneness)に焦点を当てている。(201頁)

組織コミットメントにおいては、組織と個人とは別の存在として捉えています。その上で、個人は組織に対してコミットメントを感じるかどうかがテーマとなります。

他方、組織アイデンティフィケーションでは、組織に所属する個人が自分自身の多様な社会的アイデンティティの一つとして組織との一体性を知覚するものです。

アイデンティフィケーションとコミットメントの統合プロセス

こうした相違を踏まえて、両者を統合するプロセスについて、先行研究を基にしながら解説されています。203頁にある以下の図をご覧ください。

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この統合プロセスモデルにはポイントが三つあります。第一に、組織アイデンティティを、外部状況によって影響を受ける状況的アイデンティティ(situated identity)と、職場において中長期的に形成される深層構造アイデンティティ(deep structure identity)とに分類し、前者が後者に影響するという関係性です。

第二に、真ん中から右側に矢印が出ているように、アイデンティフィケーションコミットメントの発達に影響するという関係性が提示されています。

第三に、そこからさらに右側にモティベーションが配置されているように、アイデンティフィケーションがコミットメントを媒介してモティベーションに影響するという関係性が描かれています。さらには、モティベーションからアイデンティフィケーションに矢印が向かっていることからわかるように、フィードバック・ループが組み込まれているという点にも着目するべきでしょう。

組織アイデンティフィケーションの先行要因と結果要因については、高尾先生の他の論文をまとめた際に、そちらで書いたので気になる方は以下をご笑覧くださいませ。


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