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【論文レビュー】組織コミットメント研究史:高橋(1997)

本論文は組織コミットメント研究に関するレビュー論文です。組織コミットメントの定義としては「ある特定の組織に対する個人の同一化(identification)および関与(involvement)の強さ」(Porter et al. 1974)を用いています。

Mowday et al.(1982)によれば、組織コミットメントが高いメンバーは、①当該組織の価値観や目標の強い受容および信念、②自らを組織の代表とみなして行う多大な努力、③当該組織への引き続いての所属を希望する強い意思、の三つを伴います。

高橋弘司. (1997). 組織コミットメント尺度の項目特性とその応用可能性 3 次元組織コミットメント尺度を用いて. 経営行動科学, 11(2), 123-136.

基本的には、先日取り上げたMeyer et al.(1993)を踏襲しています。その上で、組織コミットメントを①情動的コミットメント(affective commitment)、②継続的コミットメント(continuance commitment)、③規範的コミットメント(normative commitment)、という三次元尺度を検証し、日本においても弁別的妥当性が検証されました。

以下からは、組織コミットメントの三次元についてポイントが整理されています。

①情動的コミットメント

組織コミットメントの各次元はそれぞれルーツが異なると著者はしています。情動的コミットメントは、組織行動論・組織心理学の分野において発展してきた概念だそうです。

組織に対する愛着や同一化を表す概念であり、企業組織において組織コミットメントを考えると最もイメージするものに近いものと言えます。先日取り上げた高尾先生の論文にもあるように組織アイデンティフィケーションから影響を受けているものです。

②継続的コミットメント

情動的コミットメントが所属する組織に所属したいという欲求であるのに対して、継続的コミットメントは所属する組織に所属する必要があるために感じるものです。合理的な理由があるために、その組織に所属し続けようと思うということです。

情動的コミットメントが組織行動論・組織心理学の領域であったのに対して、継続的コミットメントは社会学の領域において発展してきた概念とされています。

③規範的コミットメント

規範的コミットメントは、「自分は組織に留まり、適応しなければならない、という義務感・規範意識」(Allen & Meyer, 1990)という定義で紹介されています。では、なぜ人はその組織に留まろうという義務感や規範意識を持つのでしょうか。

本論文では組織規範の内在化と組織内部の権威との同一化という二つが基盤となっていると説明しています。つまり、「規範的コミットメントにおいて内在化・同一化の対象となるのは、情動的コミットメントと異なり、組織そのものではなく組織プロセスの一部」(125頁)になっているのです。

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