【論文レビュー】企業における柔軟性は業績にどのような影響を与えるのか?:Bhattacharya et al.(2005)
「変化が激しい時代」という言い回しは、物心がついてから三十年以上、ずっと耳にしているような気がします。とりわけVUCAと呼ばれる時代においては、直感的には、さまざまな意味において企業における柔軟性が業績にポジティヴな影響を与えていると捉えられる傾向があるように思います。本論文ではこの柔軟性について、社員のスキルの柔軟性、行動の柔軟性、人事管理手法の柔軟性、という三つの因子として明らかにしています。その上で、こうした柔軟性が企業業績にポジティヴな影響を与えていることを結論として提示しています。
三つの柔軟性
冒頭で挙げた三つの柔軟性についてざっと見ていきます。まず、スキルの柔軟性は、多様な職務や役割に対して効果的に対応できる能力を意味しています。次に、行動の柔軟性は、変化する環境や困難に対して迅速に適応する能力と関連したものです。最後の人事管理手法(HR Practices)の柔軟性は、環境変化と社員のニーズや期待との双方に対応する手法や方針を指します。
測定尺度
ではこれらの三つの柔軟性を著者たちはどのように測定したのでしょうか?スキル、行動、人事管理手法という3つの柔軟性に関する因子として、仮説の段階で50個の設問を作成し、探索的因子分析の結果として以下の合計22設問に着地したと結論づけています。
試みに、人事管理手法の柔軟性に関する7設門を簡単に訳してみると以下のような感じでしょうか。
自社の人事管理手法の柔軟性は、私たちが環境から受けるニーズの変化に対応することを支援している
自社は、(市場における)変化する競争環境と歩調を合わせるために人事システムを調整している
自社の人事管理手法のパラメーターは、ビジネス状況における変化に素早く対応できるように設計されている
私たちは、変化する仕事の要望と人事システムとを整合させるために人事管理手法をしばしば変更している
自社の人事管理手法の変更は、市場において競争優位を保つために役に立っている
自社の人事管理手法によって、変化するビジネス上のシナリオを意味あるものへと調整している
全体として、自社の人事管理手法は柔軟である
特徴としては、特定の役割を担う層(マネジャーなど)の認識や行動を問う設問ではなくて企業組織としての人事制度の実践についての設問から構成されているという点でしょう。
働いていると直感的にも理解できますが、人事管理手法や人事管理のしくみと企業業績との関連性は複雑です。他の概念との関連性を探ってみると面白そうに思えます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?