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【論文レビュー】パネル調査での調査間の間隔はどのように設定するべきか?:Dormann & Griffin (2015)

本論文で扱っているパネル調査は、ざっくり言えば、同じ調査対象に対して複数時点で複数の変数間の影響関係を明らかにするための調査です。このパネル調査における複数時点をどのように設定するべきかについて明らかにしています。

Dormann, C., & Griffin, M. A. (2015). Optimal time lags in panel studies. Psychological methods, 20(4), 489.

そもそも論

まず、客観的にあるべき間隔というものがあるのではないことを、引用を基に明記されています。

Optimal time lags should be considered within the broader question of “when events occur, when they change, and how quickly they change (Mitchell & James, 2001, p. 533).”

p.1

これ、いつも先生方からご指摘をいただく内容なのです。たとえば、ある概念と概念との影響関係を縦断パラダイムに乗せて見たい場合、何ヶ月空けるのが良いのかな?とか思うのですが、そこに客観的な正解はありません。それぞれの概念がどのような期間で変化するのか、影響関係はどのように考えるのか、などといった点を考慮した上で間隔を考えるべし、というのはこの点でも明らかです。

最適な調査間隔

では最適な調査の間隔をどのように考えれば良いのでしょうか。本論文では以下のように定義しています。

We define an optimal time lag as the lag that is required to yield the maximum effect of X predicting Y at a later time, while statistically controlling for prior values of Y in a 2w2v design.

p.3

細々とした訳になりますが、「2波2変数のデザインにおける変数Yの事前値を統計的に統制しながら、変数Xが後続する時点での変数Yを予測する効果を最大にするのに必要な時間差」が最適な調査間隔の時間差と定義しているようです。

その上で分析としては構造方程式モデリング(SEM)等を用いて行うものとしているので大変参考になります。

自己相関に気をつける

示唆の部分で説明してくれている点のポイントとしては、自己相関に気をつけよう、ということです。自己相関とはautocorrelationの訳で、ある変数の過去時点の値が現在時点の値とどの程度相関しているかを表すものです。

そのため、異なる調査期間を短く設定すると、ダイナミックな影響関係を見ることができる可能性がある一方で、自己相関の問題が生じやすくなるリスクがあります。逆も然りで、複数時点での調査の期間を長く設定すると短期的なダイナミックな影響関係を見られなくなるリスクがある一方で自己相関の問題は統制できる可能性が高くなります。

日常生活でよく見る変数で考えるとわかりやすく、たとえば気温は短期間では非常に自己相関が高いものの一つです。前日の気温と当日の気温は自己相関が高くなってしまいますが、2週間単位とか1ヶ月単位というように期間を長く取れれば自己相関の値を統制して影響関係を見やすくなると言えます。

結論

こうした背景があるので、扱う変数と変数間の想定される影響関係をとらまえた上で調査の間隔を設定しましょう、というのが本論文の結論になっているわけです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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