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【論文レビュー】感情制御の自己管理と他者支援は相互作用する!?:小林ほか(2019)

タイトルがなんのことだかわかりづらいかもですが、ネガティブな感情を低減したりすることを感情制御と言います。感情制御には、自分の感情を制御する個人内感情制御と、他者の感情の制御を支援する対人的感情制御の二つがあります。本研究では、どちらがどちらに影響するかを明らかにするため交差遅延モデルを用いた実証研究を行っています。

小林亮太, 中島健一郎, & 中尾敬. (2019). 個人内感情制御と対人的感情制御の関係性―交差遅延モデルを用いた検討―. 感情心理学研究, 27.

調査モデル

交差遅延モデルを用いた分析をすることで、個人内感情制御と対人的感情制御の関係性について検討しています。具体的には、個人内感情制御の傾向が対人的感情制御傾向に影響するのか、または対人的感情制御傾向が個人内感情制御の傾向に影響するかについてを明らかにしようとしています。

そのため、ワンショットでの横断調査ではなく、T1とT2の間を三か月あけた二時点での縦断調査によって検証しています。尚、縦断を行う際に、どの程度の時間をあけて設定するべきかについてはわからないことも多く、もう少し他の論文を読んで学んでみたいと思っています。

分析結果

具体的な質問項目として測っているのは、①自分自身の感情を調整するために再評価を行う傾向と②気晴らしを行う傾向と、③他者の感情を調整するために再評価を行う傾向と、④気晴らしを行う傾向を測定しています。その結果を交差遅延モデルで示したものが以下の図です。

上の図にあるように、個人内感情制御と対人的感情制御は双方向的に影響を及ぼしあうことが明らかになりました。相互作用するという結果からは、仮に対人関係に困難を抱えている人は、個人内の感情制御 の改善を図ることで対人的感情制御も良好になり、対人関係上の困難も解消される可能性が示唆されると著者たちはしています。

どっちがどっちに影響するのかというリサーチクエスチョンについては、相互作用しますという第三の結論になっていますが(笑)、著者たちが述べる通り実践的な示唆を導き出せているように感じます。

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